その2 こんなとこで?
その2
こんなとこで?
卓くんのアパートは公園から歩いて5分くらいだった。
階段を上ってちょうど2階の真ん中。
卓くんは玄関の前まで来ると、キョロキョロと辺りを見回した。
「何やってんの?」
「ん?だって人に見られたらヤバいだろ?」
「別に」
「僕がヤバいんだよ。近所の人に未成年の女の子を連れ込んでるって思われるんだよ」
「考えすぎじゃないの?」
「いいから早く入って!」
私はせかされながら玄関から部屋の中へ。。
でも一歩入ると気分が悪くなった。
「うっ!!」
手で口をふさぐ私を見て慌てる卓くん。
「いずみどうしたっ!大丈夫っ!?」
「この部屋くさっ!!」
「Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lゲ!しまった!気付かなかった!」
卓くんは急いで窓を開けたあと、消臭スプレーを部屋中にまいた。
と勝手に思っていた私が間違っていた。
「卓くん、なんでキンチョールまくのっ!」
「ごめん。とりあえずこれしかなかったんだよ(^_^;)」
「(ノ__)ノコケッ!」
「ホントごめんな。自分の部屋の臭いってわからないんだよ」
「ファブリーズくらい買っておこうよぉ」
「誰もうちには来ないから必要なかったんだよ(^^ゞ」
「ねぇ、臭くない部屋もうないの?」
「僕の寝室はもっとすごいだろうし(;´▽`A」
「(≧ 3 ≦)ぶーっ!」
「あっ!そういえば…たしか風呂の窓は開けっ放しだったはず…」
「泥棒入るじゃない!」
「いいや、小さな窓なんだ。子供の体もやっと入るくらいの」
「・・・だからなんなの?(⌒-⌒;」
「部屋の匂いが消えるまでの間、そっちの方で話そうよ」
「エー(ノ≧◇≦ヽ)ノ!!ヤダよ。そんなとこ絶対行かない!!」
「ここよりマシだよ。それともここで我慢する?」
「う…」
1分後、私は卓くんとお湯の入ってない乾いたバスタブの中に向き合って座っていた。
卓くんは体育座りで、私はミニスカートだから正座。
「卓くん、これどう見てもありえない画なんだけど(;一_一)」
「ごめんごめん。もうちょっとの辛抱だから。でもなんか恥ずかしいね」
「す、卓くん…(^_^;)」
こんな卓くんだけど、なぜか不思議と安心できて楽しかった。
卓くんは私が小学3年生のときまで暮らしていたときと全然変わってない。
英之パパならこんなとぼけたことなんて絶対しないし、緊張して息が抜けない。
やっぱり話せるのは卓くんかな。。でもその前に。。
「ねぇ卓くん」
「ん?なんだい?」
「ママのこと、今でも好き?」
「えっ?Σ( ̄□ ̄;な、なななんだよいきなり…」
「どうせこんな部屋だから彼女もいないんでしょ?」
「ズバリ正解(⌒-⌒;」
「じゃあママと再婚する可能性もあるよね?」
「な、ないよそんなの。だって是枝君…いずみの新しいパパがいるじゃないか」
「それはそうなんだけどさ…」
私は今の家の事情を言うのをためらった。
本当は卓くんに聞いてもらいに来たのに…
そのためにわざわざ卓くんの会社から住所を調べて、バスで30分の道のりをやって来たのに、いざ言おうとしたら口がつぐんでしまう。
「いずみ、どうしたんだい?家で何かあったのかい?ママに怒られたとか?」
「そんなんじゃないよ…」
「なら良いいけど。。」
卓くんはそれ以上、深くは聞いてこなかった。
ちょっとの間の沈黙のあと、私はとっさに思いついたことを口してしまった。
「ねぇ、私が卓くんの彼女になってあげよっか?(*^ - ^*)」
「な・・・( ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄;)」
このときの卓くんの驚いた顔はまさに傑作w コミックに出てくる変顔そのもの。
「冗談だよ冗談。安心して。私、彼氏は年の差5歳までって決めてるからw」
そう言うと、固まっていた卓くんは本当に安心したようだ。
「あーびっくりした(^□^;A 突然いずみに彼女宣言されてもさぁ」
「元ムスメだしねw」
「あのさ、何か相談があるなら遠慮はいらないよ。わざわざ来てくれたからには何か話すことがあるんだろ?」
ウッ!Σ(・"・;)するどい!さすが大人。
でも私はもう少し別なことで話題をそらせた。
「私、今受験生なの。だからさ、卓くん私に勉強教えて」
「ええっ?(゜〇゜;)僕が?」
「うん」
「いずみは塾に行ってないのかい?」
「うん。ママには頭の良い友達と一緒に勉強するから、塾は行かなくてもいいって言ってあるの」
「それホントの話?」
「ウソに決まってんじゃん」
「((ノ_ω_)ノバタッ」
「ねぇ、だからお願い。成績下がったらママにバレちゃうもん」
「だってここまで来るの遠いだろ?」
「バスで来るから平気だよ」
「(・へ・)うーん。。どうしたものか。。」
そのとき、お風呂の窓の外の前を人が通り過ぎる音がした。
「シッ!静かにっ!となりの人が玄関から出てきたんだ。小声で話そう…てゆうか、もう部屋の匂いも消えた頃だから戻ろうよ」
「うん。そうだね」
そう言って、卓くんはすぐに立ち上がったけど、正座していた私の足はしびれて動かなかった。でもそれに気づいた卓くんがそっとしゃがんで肩を貸してくれた。
「さぁ、ゆっくり立ち上がるよ。無理だったら僕の背中にそのままおんぶして」
さすがにそれはちょっと恥ずかしいので、私は自力で立ち上がりかけた。
けど、卓くんの肩に手をかけたままバランスを崩してしまったため、卓くんまでよろめいて、私のしびれた足の上に卓くんの足が乗ってしまった。
「あああああぁぁぁぁん!」
つい大声を張り上げた私(⌒-⌒;
「ご…ごめんごめん。大丈夫かい?」
「なんとか。。」
「ヤバいなぁ…聞かれちゃったかなぁ…勘違いされなきゃいいけど。。^_^;」
(続く)