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その13 真の黒幕

その13

真の黒幕


 茜崎さんと美智代さんが帰ってからも、僕の興奮は冷めやらず、結局ゆうべは一睡もできなかった。

 せっかく夕食に用意していた期間限定ラーメンものどを通らなかった。

 あれだけのことを聞かされたんだから当然なんだろうけど。。


 昨日は精神的ショックが多すぎて、気がどうかなってしまいそうだった。

 まるでギャグ漫画のように髪の毛全体が逆立った気がした。

 いや、髪だけじゃない。猫が体全体の毛を逆立てるように、僕の体全身にゾクゾクッと悪寒が走る感じさえした。

 これはひょっとして、僕は一気に白髪にでもなったのかと不安になって、鏡を見に行くと、別に何でもなかったので胸を撫で下ろしたところ。

 でもリアルな話、昨日の夜シャンプーしたときは、排水口に僕の髪の毛が大量に抜け落ちていた。


 今も昨日の精神的ダメージがかなり残っているのがわかる。今日は会社を休もう。

 そしてゆっくり体を休めなければ。。普段はドジでも、仕事にミスは許されない。


 そう思って横になってみても、やはり寝つけるものではなかった。

 あの探偵・茜崎さんの昨日の言葉が繰り返し次から次へと頭の中をよぎっていた。



「まずは園崎頼子の証言からの疑問。彼女は倉沢まりもから、森田をおびき出すだけで50万円もの大金を振り込まれたこと。まりもはその金を慎也から受け取っただけ。慎也は必要なときには用立ててくれる人がいると言っていた。これはすごく謎だろう?」

「ええ…確かに。。」

「じゃ次の疑問。三木綾乃はお前との不倫発覚後、すぐに部署を異動させられた。でもお前は異動どころか今は課長に出世している」

「僕の出世は疑問ですか?(⌒-⌒;」

「能力的なことを言ってるんじゃない。普通、スキャンダルは両成敗りょうせいばいだ。なのに、異動したのは三木綾乃と是枝英之だ。この二人は異動して来たのもほぼ一緒。そして異動して行ったのもほぼ一緒。これもおかしいだろ?」

「そう言われるとそうですが・・」

「是枝にとって、こんなに都合の良い異動はない。目的を達成してすぐに異動が決まる。そして自分は本社へ。暗示にかけた三木綾乃は遠くの関連会社へと。まるで絵に描いたような完全犯罪的なストーリー。これを計略でなくてなんと呼ぶ?偶然として片付けられるか?」

「そうね・・・とても偶然なんて言えないわ」

「是枝は当時、自ら異動を決める権限などなかった。もちろん三木綾乃もね。じゃあ一体誰がそれを決めたんだ?」

「それは…人事課の人間が決めることだと思いますが…」

「森田、お前に確認の質問をひとつする。大体はわかってるが、最後はお前の口から聞きたい」

「え?あ、はい…どうぞなんなりと。。」

「お前は結婚していた当時、ゆりかのご両親とはうまくやっていたのか?」

「は??…あ、あの…今そんな突拍子もない質問をして何か関係があるんですか?」

「最終確認だ」

「はぁ…まぁ母親とならなんとか普通に会話もできたんですけど、僕は父親の方にあまり気に入られてないようで。。」

「つまり父親と折り合いが悪かったんだな」

「はい。お恥ずかしながら…」

「よしっ。なら決まりだ」

「えっ?」

「全てが裏付けされたよ。この二つの別々な仕掛けがひとつに繋がったんだ」

「・・・すみません。教えて下さい。僕にはさっぱり。。」


 茜崎さんは軽いため息をした。僕がまるでしょうもない奴だと言わんばかりだったけど、そこはなんとか抑えたようで、ゆっくりとした口調で話し始めた。

「では説明をしよう」

 僕も美智代さんも真剣な眼差しで茜崎さんを食い入るように見つめていた。

「この2組の仕掛け人たちを影で操っていた黒幕がいるってことさ」

「く…黒幕?」

「そう。その黒幕は用心深い人間で、念には念を入れるタイプなんだろう。だから石丸慎也を利用するだけでは心もとない。失敗するとも限らない。そこで是枝の登場だ。黒幕はその二人にそれぞれの罠を仕掛けさせた。そしてどっちか一方さえ成功すれば良いと思っていたんだ」

「す、すごい話だ。。」

「そしてその通りになった。慎也の作戦が失敗したものの、二重に仕掛けたもうひとつの罠、是枝の作戦が見事に成功した」

「その人は大物ね。。自分は動かないで人を動かせるなんて。。」

「そうですね。美智代さんの意見は正しいです」

「(*^ - ^*)ゞえへっ♪」

 なぜか茜崎さんは美智代さんに話すときだけ丁寧語になる。


「結論から言おう。黒幕の正体…それは慎也に金を用立てた人間。是枝と三木を森田卓の部署へ人事異動させ、事が済むと三木をその部署から離し、是枝を本社に戻して昇進させた。そしてなぜか森田卓には情けをかけて左遷せず現状維持にした。つまり黒幕は人事異動にも顔が利く役職だってことになる」

「ひょっとしてそれは…」

「更に言えば、そんな大物は森田卓が大嫌いで、一刻も早く離婚させたいと心から願っていた。…もうわかったかな?森田」

「そんなことって…あの人がそんな…どうしてそこまで僕を…」

「どうやらわかったようだな。美智代さんもわかったね?」

「え、ええ。。なんか…とても悲しくなったわ。。」


「真の黒幕は…須藤源一郎。俺も知ってるゆりかの父親。。皮肉なもんだ」

                  (続く)


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