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その10 5年ぶりの対面

 5年ぶりの対面


●茜崎凉の私的記録より


 俺は車の中からゆりかの帰りを待っていた。

 ちょうど彼女の実家の門前から30メートルほど離れた場所に停車している。

 それも今日で3日目。まだゆりかは現れないが、ある意味仕方がない。

 俺自体、そう毎日長い時間も待機しているわけでもないからだ。

 ここは閑静な住宅街。同じ場所にいつまでも停車していると不審に思われる。

 せいぜい午後6時から7時までの1時間が関の山だ。

 この時間なら、ゆりかの仕事帰りか、あるいは買い物帰りを捕まえられるかもしれないと思ったが、未だ読みが外れている。

 俺は直接玄関のインターホンで話すのは差し控えた。

 ゆりかの母親に悟られるとまさに修羅場。

 なにせ、ゆりかをはらませた上に、結婚もせずに行方をくらませたこの俺が、彼女の親に対面できるはずもない。

 そう思うと、俺が5年前、一度この街に戻って来たとき、よくこの玄関まで尋ねて来たものだと自分に感心してしまう。

 これが若さゆえの“非常識がなせるワザ”だったのかもしれない。


 しかしながら、こうして3日も経つのに会えないとなると、本当にゆりかといずみが実家に住んでいるのも疑わしく思えてくる。

 俺は一旦、窮屈な車から降りて、空を見上げた大きな深呼吸で新鮮な空気を体内に取り入れた。

 と、その時突然、俺の後ろの襟首を捕まえて引っ張る何者かがいた。

 驚いて振り返ると、そこにはゆりかが呆れた顔で立っていた。

「うおっ!ゆりか!」

「うおっ!じゃないわよ。なに怪しいマネしてんのよ!近所迷惑だわ!」

「そんなこと言うなよ。5年ぶりに来たのにきつい一言だなぁ。3日続けて待ってたんだぞ。家に帰って来てなかったのか?」

「失礼ね。毎日帰ってますっ!凉が車の中でうたた寝してたんじゃないのっ?」

「Σ( ̄□ ̄;ギクッ!…そうだったかもしれない。。」

「で、なんか用なの?私はないわよ」

「お前、慎也って男と今どうなってんだ?」

「Σ('◇'*エェッ!?なによ突然!こんな道端でそんなこと言わないでよ」

「じゃ俺の車に乗って話そう」

「それはイヤ!」

「バカだな。何も変なことしないって」

「そんなこと思ってませんっ!とにかく乗らないから小声で30秒以内で話して」

「しょうがねぇな全く。だからさ、慎也って奴はお前の亭主じゃないのか?」

「よしてよ。あんな人とはちょっと付き合っただけで、とっくの昔に別れたわよ」

「そっか。。なら良かった。それを確認したかったんだ」

「それと私のこと『お前』って呼ばないでって前にも言ったっでしょ!」

「あぁ、そうだったな。ごめんよゆりか様」

「様もいらないから」

「はいはい」

「でもなぜ凉が慎也のこと知ってるの?面識ないでしょ?」

「直接会ったことはないけどな。間接的に見たことはあるんだ」

「慎也がどうかしたの?私、彼とはもう何年も会ってないわ」

「それならいいんだ。ちょっと別な場所でその男を見かけたもんだから」

「へぇ、彼女と一緒だったとか?」

「おっ!ゆりかは相変わらず勘がいいな。まさにその通りなんだ」

「私には関係ないけど」

「でも、もしゆりかと慎也が夫婦になってたとしたらだ。今現在、奴は不倫してるってことになるだろ?」

「あーなるほどね。それを私に教えに来てくれたってわけね。ご苦労様」

「まぁ、どうやら心配ないようだな。安心したわ」

「一応心配してくれてありがと。私は大丈夫だから。凉は自分のこと考えて・・」

と、ゆりかがまだ話している最中、

「ママーッ!」


 遠くから女の子の声がした。振り向くと一人の女の子が走ってこちらに向って来る。

「あれがいずみか?大きくなったな」

「凉、あなた5年前に、自分がパパだっていずみに教えたでしょ?」

「あれ?バレてた?アハハ(^□^;A」

「父親らしいこともできない人が子供に名乗らないで欲しいんだけど」

「もう言っちゃったんだし、しょがないじゃん。それにまだいずみが5歳の頃だぞ。もう忘れてるさ」

「もう…」


 いずみが息を切らしながら俺たちの元へ辿り着いた。手にはなぜか子供らしからぬ新聞を持っている。

「ママ、大変!すごい写真見つけ・・・あっ!本当のパパだっ!」

 俺はその一言に超感激した。

「すごいないずみ。パパを覚えてくれてたのか。5歳の時の記憶がしっかり残ってるなんて素晴らしく頭のいい子だ。こりゃ将来は東大だな!」

「凉、ほめすぎ(-_-;)」

「記憶がいいのは誰に似たんだろう。もしかして俺かな( ̄ー ̄)」 

「私です」

「あっさり言うね(^_^;)」

 ゆりかは俺の言葉には耳も貸さずに、いずみに問いかけた。

「いずみ、すごい写真って何なの?」

「これだよママ。この新聞見て!友達に借りて来たの」


 新聞を観るゆりかに混じって、俺も背後からそっと覗き込んだ。

「あっ!」

「あっ!」

 俺とゆりかが同時に叫んだ。

「何で凉が叫ぶの?」

「ゆりかだって何でだよ?」

「それはちょっと…凉こそこの写真の人が誰か知ってるの?」

「いや…知り合いではないんだけど、最近見かけたことがあるんだ」

「最近?へぇ。。」

「ママ、卓くん元気そうだね。写真写り悪いけどw」

「そ、そうね…頑張ってるみたいね(^_^;)」

 

 俺はどうしても事情がつかめない。干渉する気は少ししかないが、ハッキリ聞いてみるのも肝要だ。

「この卓とか言う男とゆりかはどういう知り合いなんだい?」

「だからそれはちょっと…」

 ゆりかがためらっている隙に、いずみがいとも簡単に俺の質問に応えてしまった。

「ママと卓くんは夫婦だったんだよ。3人で2年間暮らしてたの」


「Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lなんだってぇぇぇぇ??!」

                (続く)

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