第三十三話 エリカの好判断
店長ですら対策が思いつかなかった状態だったが、卓上に少し異変が起きていた。沢野は、今回は手が良いので鳴かずに手を進めようと木下の切った好牌を鳴かなかった。沢野は魅せるプロレスが信条だったから、この本場は大技を出そうと考えていた。
「チー」
沢野の切った二萬をエリカが鳴いたのだった。エリカは沢野の足を止めようと無意識に仕掛けていた。
「おっと滝川選手が遠い所から鳴いてきましたね」
「確かにこれは無理鳴きかもしれませんが、結果的に沢野選手の足を止められればいい判断ですよ」
エリカは手が遅かったから、少しでも早めようと四シャンテンから両面を鳴いてきた。いつもならはるかに怒られるような鳴きだった。点差が開いているのに安手であがろうとしているからだ。しかしタイミングよく席の位置が良かったから、エリカがいくら鳴いてもはるかの自摸番は飛ばされないし、逆に増えるからで、そして何よりもこの場合は点差よりも沢野の親番を落とすのが重要だった。
はるかは沢野の親番を落とせるならとエリカにあがらせようと牌を切るが、はるかの切る牌はことごとく空振りをした。エリカの手牌は対子が一つしか無くそれは頭だったから鳴くにも鳴けなかった。木下は沢野にあがらせようと牌を切り、沢野は手を進めながらもエリカに鳴かれないように牌を絞った。しかしエリカにとって好都合なことに喰い取った自摸は沢野のだから、自然に好牌が入ってきて時間が掛かったが聴牌を果たした。




