に
全く勘弁して欲しいよ。
ブラコンらしいというのはなんとなく朋子の言動や行動で分かるけど、それが度を越してしまったらどうすればいいのか。兄妹の近親相姦が流石にまずいのはこの世界でだって同じことだろう。
同じだよね?
というのも、女性の性欲処理に近場の男性をもちいるのは昔の名残としていまだに根強いらしい。田舎だと、男は食われる運命だとか……。いや慣れさせるために無理やり……とか。
そういった世界だから自分からのアプローチは危険だ。
僕だって分かってはいるけど、未熟なりに社会人として働いていた年齢だったのも相俟っていまだに前世の夢を見たりする。
童貞でも無かったし、結婚を誓った女性もいた。両親も親友も、同僚の仲間も、忘れてしまうには濃い存在だったから。それらの感情は忘れることなく記憶に根をはって生き続けている。
だから僕はいまだにこの世界が慣れない。
もしかしたら慣れたくないと心の奥で思っているのかもしれない。
僕の容姿だってそうだ。
それなりに見えるであろう普通の外見は、この世界じゃあ絶世の美男子ともてはやされ、僕の気持ちを踏みにじってきた。
多分、僕はこの世界が嫌いなんだ。
普通じゃない世界が嫌いなんだ。
そうやって僕は事なかれ主義のまま、生きてきた。
よりよい兄妹の関係を築くのに、僕の精神を削ってきた。
両親の関係だって。友人の関係だって。僕はいま生きている最大限の交流をしてきた。だって僕はそうやって過ごすしかなかったのだから。
☆
両親と妹の朝食を済ませた。
その後は普段通りに身支度を整え、家族は同じ時間に登校する。
父親に見送られて、ああ今日も学校でなんだか見られるんだろうなあ、と思うと辟易して行くのが嫌になりそうだ。
「お兄ちゃん!」
「んー?」
「胸元、だらしないよ。襲ってくれって言ってるようなものだよ。むしろ私が襲いたい。いつか必ず襲う」
ブラコンな朋子は時々冗談を言う。本気で思ってたらどうしよう。
でもまぁ可愛い妹を拒否できない自分がいるのは前世の記憶が邪魔しているから仕方ないし。嫌いなのは常識で人ではないと思うんだ。
「兄ちゃんは心配だよ。妹がちゃんと学校でやっていけてるのか」
「あっ……大丈夫よ。友達も出来たし勉強だって」
「朋子の友達だったらみんな可愛らしいんだろうなぁ」
実際友達を連れて家に来たときみんな可愛かったし、綺麗だった覚えがある。
「う、うん」
「でも僕のほうが心配されそうだ。友達が数人って少なすぎるし……、僕が近づくと逃げるように腰が引けるんだよね」
「それはおにいちゃんのおーらがげんいんだとおもう」
「ん?」
「お兄ちゃんなら友達なんてすぐできるよ。本気出せば一日で万人くらい」
朋子が声色が真剣だったからちょっとびっくりした。
「兄をなんだと……」
「最高の私のお兄ちゃんだよ!」
恥ずかしげも無く言ってくれる。
妹に精神的に助けられている面、それは違うとも言いづらい。
でもまぁ兄妹間が仲が良いことは、いいことだよね。
なぜか忙しいんです。