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広大な空の下で  作者: 掘り炬燵
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第4話 月明かりが照らす夜闇を感じて

 辺りは真っ暗で月が見えている。

 そんな時間に光耀は1人で道を歩いていた。

 手にはコーラとお菓子の入った袋。

 コンビニ帰りだった。

 何故こんな時間にコンビニへ行っていたかというと。



『ジュースとお菓子を買ってきて。兄貴』


『やだよ。めんどくさい』


『買ってこいよ~、クソ兄貴。今、ジュース飲みたいんだよ。炭酸飲みたいんだよ』


『自分で行ってこいよ』


『やだ~、めんど~い。自分で行きたくないんだもん。買ってこい、買ってこ~い』


『……』


『買ってこい、買ってこ~い!』


『ああぁ、もううるせぇな!買ってくりゃいいんだろ!』



 というやりとりがあったから。光耀は何やらいいように使われている気がしないでもなかったが気のせいだと思うことにした。

(……?)

 後ろから視線を感じる。

(何だろう?)

 光耀は振り返って辺りを見回した。

 誰も居ない。

 少し気になるが、光耀はそのまま歩きだすことにした。

 だが、見られているような感じは変わらない。

 それどころか段々と近くなっているような気がした。

(一体何だろう?ただの偶然か?それともストーカー)

 光耀は背中に視線を感じながらウンウン唸って歩く。やはり、段々と近づいてきている・

 その視線の正体を考えながら歩き続ける光耀。

 不意に1つの言葉が頭をよぎる。


『夜の誰も居ない時間帯に襲ってきて、後ろから一撃で意識を刈りとるから誰も正体を見た人が居ないんだって』


 朝に蒼海が言っていた通り魔の情報。

 現在の状況を整理してみる。

 真っ暗で月が出ている遅い時間帯。

 周りに誰も居なく1人で道を歩いている。

 後方から視線を送ってくる謎の人物が存在する。 

(これって、まさしくじゃないのか?)

 自分の状況を確認して危機感が募ってきた。

(いや、きっと後ろの人は通り魔が出ないように見張ってくれてるんだ。感謝、感謝)

 意味のわからないことを考えて心の平穏を保つ。


 ダッ


 現実逃避をしていたら、後ろの人が走って近づいてきた。

 もうかなり近い。

(っ!やっぱり通り魔!)

 後ろを振り向こうとする光耀。

 遅かった。

 腰のあたりに抱きつかれる。二つの柔らかい丸いものが押し付けられているのを感じる。

(こ、これはまさか……)

 が、考えている時間は無かった。



「ハアァァーーーーー!!」



 気合一閃。

 後ろへと投げられる。

 ジャーマン・スープレックスだ。

 昼に自分がかけた技を、光耀は今かけられようとしている。

 このままではコンクリートの道路に脳天が一直線だった。

(くっ、なめるなよぉ)

 光耀は頭を地面に打ち付ける前に手をつき、バク転の要領で着地する。

(カウンターくれてやる!)

 そう思い、光耀は技をかけた余韻に浸って立ち尽くしている通り魔の腰に手を回しガッチリと掴む。

 少し甘くていい匂いと、柔らかい感触がした。

 いつまでも抱きついて居たい気分になるが、そうもいかない。



「せいっ!!」



 掛け声とともに大きくのけぞり、通り魔を後ろへと投げる。



「けぺっ」



 ゴバンッ!

 バタン



 背後で地面に倒れ伏す音が聞こえてくる。完璧に決まった。



「フッ、勝ったな」



 光耀はそのまま勝利に良いんに浸る。

 後ろから一撃で意識を刈りとるというのはジャーマン・スープレックスで頭を道路に打ち付けて気絶させるということのようだった。



「う、うぅっ」



 呻き声が聞こえる。

(回復が早いな)

 そんなことを思いながら、光耀は後ろを振り向いて通り魔の姿を確認した。

 背中の中ほどまである黒髪のセミロング、細められて鋭い眼光を放つ切れ長の瞳、雪のような白い肌で、大きく盛り上がった前胸部とくびれた腰のスタイル抜群の女だった。

 今、ヨロヨロしながら立ちあがろうとしている。



「く……君の名前を教えてくれ」



 ふらつきながら抑揚のない平坦な口調でそう言ってくる通り魔女。

 光耀には意味がわからなかった。



「何で教えなきゃいけないんだよ」



 光耀は頭に浮かんだことをそのまま口にした。



「教えてくれ」



 拒否の言葉を聞いても、諦めずにこちらを真っ直ぐ見据えて懇願してくる通り魔女。

 断れそうにない雰囲気だった。

 仕方が無いので光耀は名前を教えることにした。



「……純白 光耀」


「そうか、純白 光耀か」



 そう言った後に、何度も名前を口ずさみ始める通り魔女。

 そして



「よし、コウヨウ。次は私が一撃入れて勝つからな!」



 そう言い放って通り魔女は走り去っていった。

(名前名乗れよ、というかいきなり名前で呼び捨てかよ。って次なんてあんのかよ)

 突っ込みどころが満載であった。光耀は思わず憮然とした表情をしてしまう。



「はぁ、一体何なんだ?」



 1つ溜息をついてから、光耀は家へと帰るために歩き出すことにした。

(コーラ開けたら吹き出てきそうだな……)

 そんなことを考えながら。

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