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広大な空の下で  作者: 掘り炬燵
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第1話 この虚しい風を感じて

 昔のノートに書いてあった小説、もう時間が経過しすぎて同じ文章でかける自信が微塵もない。そんな小説ですが生温かく見守ってくれると嬉しいです。それではどうぞ



「ど、どうもありがとうございます」



 引き攣った笑顔で礼を言って走り去っていく女の子。



「何でなんだ……」



 そうは言ってみるものの原因は分かりきっていた。

 暴漢に絡まれている女の子を通りすがりの男が助ける‐そんなよくあるとてもベタなシチュエーション。

 だが、そんなよくあるベタなシチュエーションの中で女の子を助けた男‐純白 光耀(すみしろ こうよう)だけベタじゃなかった。




 学校が終わり1人で帰っていると女の子に言い寄っている3人の男が目に入った。

 黒髪のロングヘアーでスタイルの良い女の子と、髪の毛を染めていてピアスを付けている如何にもなナンパ男達。



「なぁなぁ、いいじゃん。俺たちと一緒に遊ぼうぜぇ~」


「そうそう」


「きっと楽しいよ」


「い、いや、その」



 女の子は男達に言い寄られて困っているようだった。

(正義は我にあり、ってね)

 光耀は辺りを見まわした。何か武器になりそうなものを探す。

 光耀は自らの身体能力には多少の自信はあったが、3人を相手に喧嘩して勝つ自信は流石に無かった。

 そういうわけで武器を探しているわけなのだが、手頃な物が見当たらない。ギリギリ使えそうなのが軽トラックの荷台に積んである鉄製の脚立。

(ちょっと重そうだけど仕方ない、か)

 軽トラックの荷台から脚立を掴んで肩に担ぐ。

 肩にのしかかる脚立の重さに顔を顰めながら男達の方へ歩いていく光耀。

 脚立は予想していたよりはるかに重たかった。予想していたより長かったのである。

 男達の近くまで辿り着くが、声をかけるのも面倒だった。

 それくらい重かったのである。なんせ脚立は2メートルを超える長さだったから。

(まぁ、後で言えばいいか)

 そう思い、光耀は無言で鉄製の脚立を振り下ろした。


ズガン!!


 激しい音とともに男達が地面に倒れ伏す。

 断末魔の声を上げて3人仲良く脚立の下敷きになった。長かったので3人いっぺんに殴ることが出来たのであった。



「おい、お前ら!ナンパは引き際が大事だぞ。この欲求不満の変態野郎どもが」



 相手を挑発するような台詞を勢いよく口にする光耀。

 何も反応が無い。3人は脚立の下で呻くだけだった。

 脚立が重かったので手加減が出来なかったのである。



「まだ意識はあるな」



 呻いている3人の近くにしゃがみ込む。



「念のために、と」



 動けない3人の頭に思い切り拳を振り下ろし完全に意識を刈り取っていく。



「よし」


「あの~……」



 後ろから声がかかる。



「あっ」



 そこには少し引き気味の女の子が立っていた。

 そして、今に至る。




 女の子が走り去っていく、その後ろ姿を見ながら光耀は立ち尽くす。

 綺麗な長い髪の毛がたなびいていた。

 何かやるせない。

 毎回こうだったのである。

 今まで光耀がこんな風に女の子を助けたことは何度かあった。

 その度に引き攣った笑顔でお礼を言って走り去っていく。

 とてもやるせない。風も無いのに自分の周りだけヒュ~という擬音のする寒い風が吹いているような、そんな感じだった。

(何でこうなるんだ……)

 自問自答する。答えは分かりきっていた。何が悪いのか、そんなことは分かっている。



「よう、またやったんだなモミジ」



 答えの分り切っていることを考えていたら、後ろから声をかけられた。

 蒼海 優(あおみ ゆう)‐質の良い黒髪に中世的な顔立ち、声変わりしていないような高い声、吹けば飛ぶんじゃないかという感じの痩せている体、そんななりなのに運動も出来るし成績もよい優男。元女子校に通う数少ない男であり光耀の親友。ちなみに光耀と違ってモテる。

 名前をコウヨウと読むためモミジと呼んでくる。

 光耀は蒼海の言葉にムッとした。



「別にいいだろ。悪いことやってるんじゃないから」



 少し棘のある言い方をする。



「確かに女の子を助けることはいいことだ……」



 うんうん頷きながら口を開く蒼海。

(いいんなら言うなよ……)

 そう思うが口には出さない。この後に続く言葉がわかっているから。



「後ろから武器でいきなり殴りつけるのは良くないな」



 ほぼ予測通りの言葉だった。



「武器じゃない。今回は脚立だ」



 意味は無いとわかっているが、とりあえず反論しておく。



「どちらにしろ一緒だ。というか、なおさら悪いよ」



 やはり反論は意味を成さなかった。



「とにかく、後ろからいきなり襲いかかって気絶させるのがいけないんだ」



 そう言いきって、まとめる蒼海。



「うるせぇ」



 全部あたっているだけに光耀は悪態をつくことくらいしか出来なかった。

 そして、そのまま単なる友人との会話となり一緒に帰る。

 気絶している3人は風邪を引くまで脚立を掛け布団にして仲良くおねんねしていた。

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