表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

親切な青年

作者: だるお
掲載日:2026/04/22

都合の悪いことは、聞こえないふりをする男がいた。


人の批判ばかりし、働きもしない。

自分は悪くない。あいつのせいで損をしている。


それが口癖だった。


忠告されれば話を変え、叱られれば怒鳴り、

都合が悪くなると席を立った。


男はそれを、世渡りの知恵だと思っていた。


ある日、人の良さそうな青年が彼の前に現れた。


穏やかで、頼めば何でも手伝ってくれる。

話も黙って聞いてくれる。


男は久しぶりに気分がよかった。

やがて青年を便利に使うようになった。


荷物を持たせ、金を借り、愚痴を聞かせた。

青年はいつも「はい」と微笑んでいた。


ある日、男は酒を飲みながら説教を始めた。


「おまえは最初こそ優しくて、いい奴だと思ったがな。

ただ、はいはい言ってるだけじゃないか。

もっと人の話はちゃんと聞いた方がいいぞ」


言い終えると、男は満足げに笑った。


青年は静かに口を開いた。


「おじさん。大変お世話になったので、正直に申し上げます」


男が口を挟もうとすると、青年は穏やかな声で言った。


「今は、私が話しています。

続きはあとで聞きますので、少しお待ちください」


不思議なほど柔らかな声だった。

だが男は、なぜか何も言えなかった。


「あなたには思いやりが感じられません」


「あなたは、自分に都合のよい相手としか話さない。

都合が悪くなると逃げ、批判する」


「そんな人と、あなた自身は一緒にいたいと思いますか」


男は立ち上がろうとした。

逃げ出したかった。


だが体が動かない。


青年はにこやかに続けた。


「ご安心ください。

私は、聞こえないふりをする人のために作られた最新式の補聴装置です」


男の耳に、いつの間にか小さな機械がつけられていた。


「これより、今まであなたが聞こえないふりをしてきた言葉を、順番に再生します」


部屋いっぱいに声が響いた。


働け。

人のせいにするな。

ちゃんと話を聞け。

誰もおまえといたくない。


男は両耳を塞いだ。


だが、どうやってもその声を消す事は出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ