占ってみた。
「酷い……みんな……なんであたしばっかり……いじめるの」
「それはあなたが何も考えないからよ」
「だって、あたし、中卒だし……頭悪いし……」
「学歴は関係ないわ。中卒だろうがあなたが自分で考えて動けばいいだけよ。あなたが風俗でお金を稼いでクズ男を養うってちゃんとした目的があるならそれでいいわよ。カイに迷惑をかけんなっつってんの。あなたはどうしたいの? カイの所へ逃げてくるのはどうにかして欲しいって思ってるの? 男と別れたい?」
「別れたい……でも、一人は嫌」
はぁーっとエミルは大きな大きなため息をついた。
呆れたと、言うのも面倒くさいとう表現だった。
それから床に蹲っている女の手を握った。
「エミル!」
とカイが言ったが、エミルはしばらくその体勢を崩さなかった。
やがて手を離し女から離れた。
どさっとソファに座り込む。
「あなた篠原和美さん、田舎を嫌って家出して、都会に出てきたはいいけど、悪い人間に騙されて今に至るのね。田舎にはご両親とお兄さんがいてもう十年も帰ってない。帰りたい気持ちはあるんでしょう? 帰ればいいわ」
「何で、そんな事を知って……」
和美はエミルを見上げた。
「私、占い師なのね」
とエミルは嘘をつき、カイは手の平で自分の顔を覆った。
「え、本当?」
「そう、だからあなたの過去も少しは分かるの。少し視てあげましょう」
涙でくちゃくちゃになった和美の目は大きく見開かれ、表情が変わっている。
「嘘……本当に?」
「ええ」
エミルは和美を自分の横に座らせた。
手相を視るように、和美の手の平を眺めて、
「田舎へ帰れば良い運を引き寄せる。あなたが生まれて育った場所、あなたを育てた人達の中でまた運が動き出し、それがあなたを導く」
と言った。
それは本当ではなかった。
エミルの魔法で和美の過去のぞき見るくらいは出来るが、その先の事などエミルにも分からない。しかし人間は時として占い師というワードに縋りつくものでもあった。
特に和美のような依存傾向にある女はそうだった。
「田舎に?」
「ええ、ご両親も心配してるわよ」
「本当?」
これが取るに足りない他人の言葉なら信じられないが、占い師と名乗るエミルの言葉で和美の心はすぐに揺れた。
「さあ、今すぐ駅へ行きなさい。そしてご両親の元へ帰るの」
エミルは和美の腕をとり、立たせた。
「で、でも」
和美は自分の身体を見下ろした。
Tシャツにジャージ、サンダル履きなのは着の身着のまま男から逃げてきたからだった。
「お金なら貸してあげるわよ。カイが」
とエミルはカイを見た。
「ま、まあ、出してやるけどよ」
そこへ、どたどたと階段を上る音がしてやがてドアが開いた。
「和美!」
エミルの予想通りの容姿のチンピラだった。
テカテカした安っぽいスーツに、白く尖った靴。
「やっぱりここにいやがったな!」
和美はビクッとなってエミルの背後に隠れようとした。




