52、僕と召喚獣と
ダンジョン町は以前と同じく、色々な職業の人がたくさんいた。しかし、周りの音が少し遠のいて聞こえ、何だか僕だけの世界にいるようだった。緊張のためなのだろうか...いや、集中し過ぎているだけに決まってる。
「レオ、必要なものは買えたのだな。」アローの声が頭の中に響いた。
「アロー?」
「レオ1人で行くなら、念話を使う機会があるだろうと思ってな。その調整をしているんだ。」
「便利だね。」
「そうだな、周りの目を気にしなくて済むからな。」何だかアローがすぐ耳元で囁いているようだった。耳がくすぐったくなること以外は問題ないだろう。
「準備はできてる?」
「当たり前であろう。我はいつでも戦えるぞ。」アローが仁王立ちで胸を張っている姿が頭に浮かんできた。
「レオ、何がおかしいんだ?」
「いや、何でもないよ。それより、目標は35階の魔物だからね。」
「我がチャチャッと終わらすさ。」
本当にアローには感謝しかできない。こんなダメな僕を信じて、僕たちのために戦ってくれているのだから。僕はアローをより楽に戦わせてあげることしかできないのに。
「レオ、1つ頼んでも良いか。」
「良いよ。」
ゴホンと咳払いをしてから念話で話し始めた。「その...なんだ、家に着いたらハンバーグをだな...作ってもらえたら嬉しいんだが...。」
「ハンバーグ...ハンバーグねぇ。」さっきまでの僕の感動は何だったのだろうか?念話のせいか、ハンバーグのせいか、だんだん頭が痛くなってきた。
「レオ、どうなのだ?」
「もちろん、作ってあげるよ。特別なやつを。」
(激辛なやつを。)
「それは助かる。」
「そこの坊や、坊や?」何か別の人の声が聞こえる。まったく空耳は嫌いだ。突然、異界からの声が聞こえてきて、変な情報を植え付けられる気がする。
「そこの坊や!」
だんだんと空耳の音が大きくなってきた。空耳にしては、質が悪過ぎないか?ここまでくると、もはや呪いと大して変わらない。
「そこの坊やっ!」
「あっ、はい。」目の前には、いかつい装備を付けた男の人が立っていた。彼は僕をまっすぐに見つめていた。
「やっと聞こえたか。」
「もしかして、さっきから...?」
「ああ、それは俺の声だ。それで坊や、この先がダンジョンだと知っているのか?」
「はい、知っていますよ。」できるだけ、真面目で主体性があって一人でも問題ありませんアピールをしなければ。
「そうか。では、そのダンジョンでユニークモンスターが発生したことは?今回のは、とんでもなく強いらしいぞ。」
(それでも...。)
「そんなに重要な用事があるのか?」
「実は...。」
「別に説明したくないなら、しなくても良いんだ。」
「分かりました。」
「それは命を懸けられるくらい重要なのか?」
「はい。」
「そうか。...じゃあ、気を付けるんだぞ。景気づけで、ダンジョンへの入場料はいらないから頑張って来いよ!」
「はい、分かりました。」
ダンジョンの受付の人が優しいなんて初めてだ。普通の人は、真一文字に口を結び、むすっとした表情で椅子に座っている。今日はラッキーな日に違いない。前まで真っ直ぐに歩いていた道を曲がり、少し歩くとポータルがあった。
30階へと呟くと、急に視界がパッと白くなり、だんだんと明るさが落ちていきダンジョンの景色が見えてきた。
「アロー、ここは?」
「30階の安全地帯だな。以前に見覚えがあるから、間違いないと思うぞ。」
「じゃあ、35階に行こうか。」
安全地帯から出ると、もう雰囲気が妖しかった。理由は分からないが、魔素の濃度が高くなっていた。
ヒューン...タッ
(ドリルボアか。)
「レオ!」
「うん、分かってる。」いくら僕でも何かが頬をかすめたら、警戒くらいはする。そして、討伐も。
シュッ...シュッ...シュッ
僕の三式AGから撃ち出された爪楊枝弾が、吸い込まれるように敵に命中した。ドリルボアがフラッと倒れるのと同時に、魔結晶になっていた。
「レオ、さすがだな。」
「まあ、ドリルボアくらいならね。それに1体だけだったし。」
「何か困ったら、我を召喚してくれ。どんな敵でも氷漬けにしてやるさ。」
「その時は頼むよ。」
本当にソロ攻略の時は、人間の言葉が分かる召喚獣がいると助かる。仲間がそばにいることを実感できて、何だか心強い。激辛ハンバーグを作るのは止めてあげよう。
さすがに32階あたりからは、1人で戦うのが厳しくなってきた。だいたいの敵がDランクで群れを形成している。僕が使えるのは付与術と魔法剣だけ。遠距離かつ広範囲に攻撃できれば、もう少し戦闘に幅を持たせられるのだが。
「レオ、どうしてこのダンジョンに来たんだ?」
「色々あってね。」
「そうか...。」
「まあ、しっかり生きて帰れば問題ないよ。」アローの声のトーンが落ちてくると、僕の気持ちも暗くなりそうである。折角、我慢しているのに。
「我はどこまで手伝えば良いのだ?」
「どういうこと?」
「レオは他人に黙ってダンジョンに来たのだろう?1人で責任を取るために。」
「まあ、そういうことだね。」
「では、我も手を出さない方が良いのではないか?」
「確かに...。」目の前に魔物がいるが、ハッとして体が固まってしまった。まるで、今まで当たり前だと思っていたものが嘘だったと気付いたかのように。アローの言うことは正しい、正しいけど違う気がする。
(いや、でも...。アローは...。)
「アローは僕の召喚獣だから。きっと、僕の家族を超えているんだと思う...。何か、こいつらだったら話しても良いかなって。」
「召喚獣か...。」
「うん、召喚獣だよ。」
「召喚獣...召喚獣...召喚獣...。」アローが繰り返し呟き始めた。何かを味わっているかのように。一方の僕は目の前の戦闘を味わわされているが。
レオは無事に35階で目標の物を入手できるのでしょうか?
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。




