46、食欲と喧嘩と
さて、25階のボス討伐が始まった。アローがやる気になっているので、ひとまずは問題が無さそうだ。あるとすれば、僕が口を滑らしたせいで、やる気になり過ぎているかもしれないが。
「レオ様、来ていただけませんか?」そう言うなり、道端の小石を蹴るように、シアが僕の目の前にいたシングルボア3体をバサッと倒した。
「何かあったの?」
「あのシルバーサウルスですよ。早く来ていただかないと...。」
「うん、分かった。」
(あぁ、あいつは何やってんだか...。)
実際に見てみると、想像したいた数倍マズかった。今までで一番、一触即発という言葉が似合う光景だった。さっきまでは、アローが友達のシルバーサウルスと喧嘩して、お互いに最高位の魔法を詠唱したことだったが。
(こりゃあ、山が1つ吹っ飛ぶだけじゃ済まないな。少なくとも、このダンジョンは無くなりそうだな...。)
「レオ様...。」シアは眉をひそめて、僕を見つめてきた。この事の危険性は分かっているらしい。そして、僕しか解決できないということも。
「まあ、頑張ってみるよ。」
「私の力が及ばず、申し訳ありません。」
「気にしなくて良いよ。僕もシアに助けられてるし。」
「分かりました。」
あの2人の仲裁に入る以上、僕も覚悟を決めなくては。生半可な気持ちじゃ、あの2人に巻き込まれて怪我をするだけだ。大きく深呼吸をすると2人に向かって歩き始めた。2人がガンガンに魔力を放出しているので、前から魔素がビュンビュンと飛んでくるので歩きにくかった。
(はぁ、息が詰まって、頭がグワングワンしてきたな...。)
「あなた、私に喧嘩を売るつもりですか!」真っ直ぐで鋭い声、おそらくミアのものだろう。
「我に向かって、その態度は何だ!」一人称が我の時点で、うちのアローだろう。まったく、威厳が聞いて呆れる...。
「トカゲごときには、私の考えなんて分からないでしょうね!」
「人間の考えなどは分からん。我は人間などはとうに超えているからな。」
「では、試してみますか。」
「女を泣かせるのは趣味で無いんだがな。」
「その軽口ごと叩き切ってあげますよ!」
ミアは数歩間合いを取って、剣を2本抜いた。両方の剣に薄いもやもやがかかっていた。きっと両方とも、僕が付与した剣であろう。1人1本ずつしか付与してないから、水色のもやもやの方はシアのだろう。まったく、ちゃっかりミアに協力しちゃって...。
「2人とも!」
「あ、レオ様。ここは危ないですよ。」
「レオ、我らの戦場に入ると怪我するぞ。」
2人の意見が珍しく一致した。僕は何とも複雑な気持ちだったが。心配してくれるのは嬉しいけど、僕が危なくなる原因を作り出したのは2人なんだよな...。
「レオ様!」
「レオ!」
「レオ、レオって、召喚獣のくせに不敬ですよ。しっかり立場をわきまえて━━」
「我らが仲が良いから、僻んでいるのか。まあ、人間とは往々にして、そういうものだからなぁ。」わざとらしく、ハァと溜め息をつきながら言った。
(よくもこう、ミアの逆鱗に触れそうなことをホイホイと言えるなぁ。ある意味、これも才能だよ。)
「な、何ですって!」
「図星だと、すぐに怒るところも嘆かわしい。ああ、残念だ。」
「...。」ダンジョンの天井からパラパラと砂が降ってきた。ミアが魔力を1段階強めたようである。
(あぁ、もうヤメてよ。早くどうにかしないと...。)
「何も言い返せないのか。」してやったりと言わんばかりに、胸を張って言った。煽るのをいい加減ヤメてもらいたい。ミアが噴火してからじゃ、どうしようもない。
ミアはついに黙ってしまった。よく知らない人から見たら、ミアがしゅんとしてしまったように見える。しかし、それは違う。さっきよりも怒りの度合いが高まり爆発しそうになったから、必死に耐えているのである。
「我の勝ちということで良いな?」
「...。」ミアは少し俯いていた顔を上げて、キッとアローを睨んだ。
「アローは少し黙ってて。ミア、何があったのか教えてくれる?」
フゥと一息ついてから話し始めた。「まず、討伐中に何も考えずに魔法を連射していたため、私たちが危うく死ぬところでした。それに魔物を倒した後、ボアの肉をアイテムボックスにしまおうとした時、こいつが横からそれを掻っ攫っていったんです!」
(アローがハンバーグ欲に負けたな...。)
「それで、アローは?」
「我はレオを手伝いたかっただけだし、肉の方は正当な報酬をもらっただけだ。」待っていましたと言わんばかりに、少し早口で話した。
「アローはハンバーグが逸早く食べたかったってことで良い?」ササッと解決しないと、野宿になってしまう。それだけは避けなくては。
「...まあ、強ち間違っているとも━━」
「あんなことした理由は食欲だったんですか?」目を少し開いて、道端のゴミを見るかのようにアローを見た。僕もミアに同感だ。
「はいはい、ミアも静かに。ミア、僕がボアの肉をもらうのは良いの?」
「当たり前です。レオ様はしっかり頑張りましたから。どこぞのトカゲとは違って。」しっかり最後に煽りを入れられているから、一応峠は越えたのだろう。
「我だって...。」
「アローは頑張り方が違ったんじゃない?ミア、この辺りで料理をできる所ってある?できれば、魔物があんまり来なさそうな所で。」
「ボス部屋を出た辺りは、魔物が出にくいですよ。もし出たとしても、私とお姉様が倒しますから、安心してくださいね。」
「うん、分かった、ありがとう。」
「それで、ハン何とかを作るんですか?」
「そうだよ、できてからのお楽しみね。」
少し不機嫌そうなアローと、アローに対してプイッと横を向いたまま歩くミアと、ミアをなだめているシア。歴史に残るであろう大災害が起きなくて、本当に良かった。
(家に帰ったら、全員にそれぞれ何か言わないとな。)
今は25階。レオたちは無事に目標の30階まで行けるのでしょうか?
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。




