44、空気と斬撃と
シアとミアが異常なまでにやる気を出し、ダンジョン内をホースロンで駆け抜けた。その甲斐もあり、昼過ぎには20階の安全地帯に到着した。この調子なら、一気に30階まで行けそうだが、さすがにホースロンで駆け抜けるのは今回だけにして欲しい。
「レオ様、到着しましたよっ!」
「そうだね。」
「それでは、よろしくお願いします。」そう言うと、シアが2本の剣を僕に渡してきた。これに付与してくれということなのだろう。
「うん、分かったよ。」
シアに腕を引かれるままについて行くと、僕たちのテントが張ってあった。きっと、シアと話している間に、ミアが急いでパパパッと張ったのであろう。そのせいか、テントが正方形でなく、ひし形になっていた。
「レオ様、頑張ってくださいね。何か用があれば言ってくださいね。」
「でも、無理はなさらないようにお願いします。」
「じゃあ、頑張ってくるね。」
「はい。用があればいつでも、どうぞ。」
2人がこんなにも期待しているとは、露ほどにも知らなかった。ここまでされては、いくらシアとミアでも驚くほどの剣に仕上げなければならない。アイデアは、ホースロンに乗っている間に考えた。
(これなら、世界に2つだけの剣になるぞ。)
(さて、実験から行くか。)
付与をしたり、それを取り消したりして、ずっと剣に負荷を加え続けていると劣化してしまう。付与は適切な回数とタイミングを知ることが肝である。
「『if ボタンに10kg以上の力が加わる
刃の周りの空気に『固体化Lv6』を付与。』」
(もし、これが上手くいくば...。)
まずは、剣に持ち手の上部に切れ込みを入れて、そこをボタンとする。つまり、使いたい時はこの切れ込みに爪を入れれば良い。そして、剣を思いっきり振った。
ヒュゥン......ドォオン
すると、剣からぼんやりとした何かが飛んで行き、テントを突き破って、安全地帯の壁に当たった。実験は成功である。原理は、僕の三式AGと同じで空気の『固体化』だ。
①『固体化』で一時的に固まった空気が剣を覆う。
②空気はスライムのように切れにくいため、剣の刃で切れない。
③剣を振ると、その剣の軌道に沿って飛んで行く。
(まあ、筒の中に電池を入れて飛ばすのと同じだ。)
(それにしても、マズい。)
さっきから、心地よい風がテントの中に吹き込んでいた。理由は簡単。さっきの実験で、空気がテントを破ったからである。大体30cmくらい破れているので、もうバレずに修復するのは無理であろう。
(とりあえず、2人の剣に付与するか。)
(さっきの空気に付与をできるようにしなきゃな。)
「『if ボタンに10kg以上の力が加わる
刃の周りの空気に『固体化Lv5』『雷属性Lv5』『鋭利Lv5』を付与。』」
(あんまりのせすぎると、1発あたりの消費魔力がとんでもないことになりそうだな...。)
「剣全体に『頑強化Lv5』『軽量化Lv2』、剣の刃だけに『鋭利化Lv6』『柔軟化Lv6』を付与。」
「『if ボタンに10kg以上の力が加わっていず、剣に魔力が流れる
剣の右刃に『火属性Lv5』、剣の左刃に『氷鋭利Lv5』を付与。』」
(よしっ!)
これで完成である。付与をし過ぎだと言われるかもしれないが、心配は無用だ。if付与は、条件型の付与なので若干、付与の負荷が少ないらしい。おかげで、とんでも剣ができた。
風通しの良くなってしまったテントを出ると、シアとミアはせっせと料理をしていた。トライアル中は料理する時間がないことも多々あるから、時間のある時に作る必要があるのだろう。
「シア、ミア、できたよ。」
「あ、レオ様、お疲れ様です。」
「私たちのために、ありがとうございました。」
シアは料理を火にかけたまま、ミアはジャガイモに包丁を突き刺したまま、今日倒したダブルボアのように僕の方に走ってきた。
「2人へのお礼だから気にしないで。はい、『α型空斬魔剣』だよ。」
「空...斬...?」
「空斬魔剣だよ。まあ、使ってみれば意味は分かるよ。じゃあ、使い方を教えてあげるね。」
2人はやっぱりスゴい。僕の言ったことをしっかり理解しているようだ。未知の技術にも対応できるのは、さすがとしか言いようが無い。
ドカァーン......ドカァーン
「2人とも、スゴいね。真っ直ぐ飛んでってるよ。」
「レオ様の付与した剣ですから。」
「そうそう、性格が真っ直ぐですから。」
(2人とも、気に入ってくれて良かったよ。)
この日はシアもミアも上機嫌だった。テントを破ったことは笑って許してくれたし。1つ問題点があるとすれば、上機嫌過ぎて、僕の皿に食べ物を山のように盛ることである。おかげで、僕は一歩も動けなくなってしまった。
「レオ様は本当にスゴいですね。ジューサーといい、三式AGといい、さっきのアルファ剣といい。」
「ちょっと想像力が豊かなだけだよ。」
「そうですかね?」
「うん。」
「でも、レオ様も行ってしまわれるんですよね、王都の学校に。」お酒が少し入っているせいか、シアは少し感傷的になっていた。
「まあ、そうだけど、あと3年後だよ。」
「そうですね。あと3年間しか...。」視線を落として、目を細めてながら、何かを考えていた。
「でも、僕は今が一番楽しいよ!だから、絶対に忘れないし、グラント町に戻って来るから。」
「でも、戻られない方が良いのかもしれません。」僕が無理して笑ったのは、バレバレだったのかもしれない...。
「どうして?」
「冒険者の噂だと、マン...モラ...とラク...が...。」
お酒のせいか、そのまま沈むように寝てしまった。マンとモラとラクじゃ、何が何だかよく分からない。まあ、きっと大したことでは無いのだろう。
レオたちは無事に目標の30階まで行けるのでしょうか?
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。




