42、野宿と安心と
僕が決闘に勝った翌日も、前日に引き続いてトライアル(どこまで深く潜れるか競うこと)が始まった。今は10階の魔物が発生しない安全地帯にいる。そして、目標はギリギリAランクが発生しない30階までである。
「レオ様、忘れ物はありませんね?」
「うん、無いよ。」
「では、出発しましょうか。しっかり歩かないと、野宿になりますよ。」
「野宿?」
「はい。魔物が発生するかもしれない所、つまり非安全地帯にテントを張ることですよ。」
「それは大変そうだね。」
「大変でしたよ。」
「それより、あの変な装置は何?」
僕の注意は、皆がテントを張っている場所の一角にあった、謎の装置に向けられていた。そのゲートのような装置に。
「あのゲートみたいな装置のことですか?」
「うん。」
「ああ、あれはポータルですよ。」
「ポータル?」この世界も横文字ばっかで本当にイヤになる。ただでさえ、魔物の名前は横文字だらけなのに。
「このポータルを使うことで、その場所から地上へと戻れるんです。そして、そのポータルを冒険者カードに記憶させておくと、次回もそこからスタートできますよ。」
(これは、前世で聞いたことがある気がする。)
「ただし、記憶できるポータルは3つまでですよ。」きちんと細かいところまで教えてくれるのが、シアの良い所である。
「覚えておくよ。」
「では、行きましょうか。まだまだ、30階までは長いですよ。」
僕たちはダンジョンを進んでいった。ある時は僕が魔物を仕留めたり、それがシアとミアだったり、はたまた僕たちの召喚獣だったり。とりあえず、僕たち3人と数匹は流れるように魔物を倒しながら、スイスイとダンジョンを進んでいった。
ファイヤーバードの群れを倒すと、魔結晶がボトボトと集中豪雨のように降ってきた。僕たちが歩いて来た道には、取り切れなかった魔結晶が『ヘンゼルとグレーテル』のようにポトポトと落ちていた。
「今日は、ここで野宿にしましょう。」
「どうして?」
「この先はボス部屋なので、疲れている今は行かない方が良いと思いまして。」本当にダンジョンに詳しくて、優秀なメイドたちだった。
「じゃあ、そうしよう。」
「では、テントを張りましょう。」
「うん。」
テキパキとテントを組み立て、サッと簡易的なかまどを作った。これで、野宿の準備は完了である。あとは、魔物が現れないことを祈るだけだ。
「それにしても、大人と決闘をして勝つだなんで、さすがレオ様ですよね。この調子で行けばゴールドバッチになりそうですね。」
「ゴールドバッチ?」
「はい。レオ様たち貴族の子供が通うことになる王都の小学校は、その学期中に10歳になる人が第1学年、11歳は第2学年、12歳は第3学年という具合になることはご存じですよね?」
「うん。」
(つまり、小学4、5、6年生だけあるということだろう。)
「各学期末にある技能テストで成績が高い順に、ゴールド、シルバー、ブロンズ、白、黄などの色のバッチをもらえるんです。」
「色で何か違うの?」
「バッチによって、受けられる待遇が少し異なるらしいです。詳しくは、入学されてからでしか分かりませんが。」
「へぇー。」
「低位の貴族が高位の貴族を見返すチャンスなので、技能テストの難易度はスゴい高いらしいですよ。」
「そうなんだ。」
「...どうしましたか?」
「何か、疲れちゃって。あと、野宿も初めてだから...。」
「そうですね、でもそのうち...。」
そう言うと、ミアは立ち上がった。その瞬間、僕の背中に重みが加わり、ホンワリと暖かくなった。ミアの「私たちがいるから、安心してください。」という言葉と共に、僕は眠りに付いた。『保温化』を付与した布団で寝るより、暖かかったような気がした。
翌朝、昨日とは違って、起きた時からスッキリとした朝だった。しっかり、寝ることができたのだろう。
「レオ様、朝食ができましたよ。」
「うん、ありがとう。」
「今日はボス部屋を通るので、しっかりと装備の確認をしてくださいね。」
「分かったよ。」
この2人といると、ボス部屋がただの通り道のように思えてきた。この調子なら、30階にも行けるような気がしてきた。
「レオ様、出発ですよ。」
「用意はできてるよ。」
「さすがです。それでは、今日戦うボスについて説明しますね。敵は、アイロンサウルスとダブルボアの群れです。」
「ちょっと大変そうだね。」
「はい。両方とも装甲とシールドが付いているので、それを先に壊す必要があります。難易度的に、レオ様がアイロンサウルス、私たちがダブルボアの群れの相手をします。それで良いですね?」
「うん。2人が決めたんなら、それで良いよ。」
「では、頑張りましょう!」
「うん!」
スライムをプチプチと倒していると、リスター市(公爵領の中心都市、領主会合が行われる)の城壁に付いている城門よりも、何かこう、うまく説明できないがカッコいい門があった。
「どうやって開けるの?」
「軽く門に触れて、魔力を流してみてください。」
(あ、魔力に反応するタイプのやつか。)
「うん。」
この先にボス部屋があると思うと、少し緊張してきた。準備体操をしそうになるのを堪えながら、門に手をソッと近付けていった。ヒンヤリと真冬に窓ガラスを触った時の感触がすると同時に、門がスゥゥと開いた。
「レオ様、作戦は覚えていますね。」
「うん、覚えているよ。」ボス部屋へ走り込みそうになったので、心を落ち着かせることにした。そして、ゆっくりと2人の後ろをついていった。
「レオ様、前方にいるのがアイロンサウルスですよ。私たちは左右に別れて、ダブルボアの群れを倒します。」
シアとミアはいつの間にか抜いていた剣を右手に持ち、魔法を詠唱しながら、ダブルボアの群れへとそれぞれ走っていった。こう見ると、2人とも戦い方が全く同じである。僕は、あの装甲から壊さなくては。
「皆、行くよ!」
レオたちのダンジョン探索はどうなるのでしょうか?
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。




