40、トライアルとトラブルと
ジューサーの販売、ダンジョン内での訓練、召喚獣の世話、レミリエの相手などをしていると、庭に散らばっていた栗のイガは姿を消した代わりに、寒い冬空の下に霜柱ができていた。サクサクやっていると、時間が経つのを忘れてしまう。
「レオ様、準備はできましたか?」
「うん、できたよ。」
「しっかり荷物は確認しましたね?」
「うん。」
「では、私たちが確認しておきますので、台所から水筒を持って来てください。」
(水筒か...僕は水稲の方が...。)
シアとミアが何でこんなにも神経質になっているのかというと、これから行くのは訓練でなく、トライアルだからだ。トライアルとは、どこまでダンジョンを深く潜れるかを競うものらしい。もちろん、ウィリアム君とセドリック君はお休みである。
「母さん、僕たち3人分の水筒は?」
「ちょっと待っててね。」僕の母さんは毎週同じ時間に出納帳を付けている。
「分かった。でも、急いでね。」
「ふぅ。ここよ、ここよ。中身はお茶にしておいたわ。」
「ありがと、母さん。」
「気を付けて、行ってくるのよ。」
「うん、分かってるよ。」
シアとミアによる荷物の確認も終わったので、早速ダンジョンに向けて出発することにした。このホースロンのおかげで、あっという間にダンジョンまで到着できる。
気付いたら、もうダンジョン前だったということも時々ある。そういう時は決まって、シアとミアのやる気が強く、ビシビシと訓練をしてくる。今日もそういう日のようだ。
「レオ様、いつも通り落ち着いて行きましょう!」
「私たちなら、目標の30階くらい軽いですよ。」
「うん、頑張るよ。」
シアとミアがやる気がある時のジンクスはもう1つある。それはダンジョンに来る人が少ないのである。おかげで、訓練や探索には持って来いなのだが、理由が少しマズい。その理由はレアモンスターが発生して、死人が出ていることである。
「お客さん、気を付けてくださいね。」
「どうしたんですか?」愚問である。その答えはいつも同じである。
「実は、死人が出ましてね。今、討伐パーティーが入っているのですが、大丈夫かどうかはまだ...。」
「どんな魔物なんですか?」
「それが...他言無用でお願いしますよ。実はシルバーサウルスなんです。それも、アイロンサウルスの護衛付きの。」
僕たち3人は思わず顔を見合わせてしまった。シアは眉をひそめ、ミアは少し笑いながら、2人ともハァと溜め息をついた。僕は、自分の仲間とレアモンスターの集団の編成が同じことに、少し驚きを感じてスッと息を吸った。
「すみません。お嫌でしたら、入場料はお返ししますので。」
「ダンジョンに入りますから、そのままで良いですよ。」
(やっぱり...。)
「えっ...でも、さっき。」
(さっき、戸惑っているような雰囲気を出したからなぁ。)
「はい、分かりました。それでは、お気を付けて。」
「はい。」
ダンジョンの中は相変わらず、暗くてジメッとしていた。もうちょっとだけでも良いから、カラッとして欲しい。そんなことを考えていると、スライムがピョコッと出てきたが、三式AGで仕留めた。撃つ時に魔力を使わないから、三式AGは遠征にぴったりである。
「レオ様はスゴいですね。」
「急にどうしたの?」
「そんなに便利な物をよく作れたな、と思いまして。最低限の疲労で、敵を倒せますからね。」
「本当にそうよね。それに魔力消費がゼロだなんて。」
「正確に言うと、戦いの時にゼロってだけで、作る時には必要だよ。」
「それでも、遠征中の魔力効率は格段に良くなりますよ。」
「2人にも、何か良さげな物を作ってあげようか?」
「良いんですか!」
「ありがとうございます!」
はしゃいでいる2人の真横には、魔物が控えていた。2人の召喚獣だろう。その2匹のおかげで、僕たちが戦闘することはほとんど無かった。1日目は、10階で寝ることにした。このダンジョンには、10階ごとに魔物が発生しない安全地帯がある。
翌朝、いつもと同じくらいの時間に目が覚めた。ダンジョン内は明るさが一定で、昼夜の区別が付かないから、時間には一層気を付ける必要があるらしい。
「ちょっと、あなた!」
「何だよ、お前。」
「ふざけないでくれない?」
「は、ちょっと何言ってるか分かんない。」
何やら、テントの外から小学生の口喧嘩のようなものが聞こえて来た。その声の1つはミアだが。それにしても、ミアが小学校にいたら、中々に怖いと思う。
(ヤバい、ヤバい。ダンジョンが崩れるぅ。)
急いで、テントから出ると、ミアがどこかの冒険者と口喧嘩をしていた。そして、少し離れた所にシアがいた。
「ミア、どうしたの?」
「あ、レオ様、おはようございます。実は、この馬鹿が喧嘩を売って来まして。」
「そうなの?」
「な訳無いだろ!」
「らしいけど...?」
「そいつが悪いんですよ。私たちの使っていた調理場を使おうとするだなんて。」
「何か文句あるのか?」
「ありますよ!」
「そんなに言うんじゃ、決闘だ、決闘。」
理由も小学生だが、すぐ暴力に走ろうとするのも小学生のようだった。まあ、このダンジョンのジメッ、ガタッ、ガオォッが全部悪いのだが。
「分かりました、受けましょう!」
「良い度胸だな。もし泣いて謝るんなら、許してやっても良いが。」
「こっちのセリフですよ。」
(ヤバい、ヤバい。ダンジョンが崩れるぅ。)
「そこのお兄さん。」
「ん、どうした?」
「うちのメイドの不祥事は、僕の監督不行き届きによるものだと言えないだろうか?つまり、決闘をするなら、相手は僕で良いんじゃないか?」
(うーん、ちょっと厳しいか?)
「ハハハ、面白いガキだな。よし、良いだろう、代わりにお前と決闘してやろう。」
「ちょっと、レオ様?」
「大丈夫、大丈夫。2秒で終わるから。」
「な、何ィ!」
あ、火に油、いやプロパンガスを注いでしまった。スッと相手の冒険者を見ると、さっきまで持っていた包丁を地面に叩きつけていた。少し離れた所にいるシアはハァと溜め息をついていた。
さて、僕の決闘はどうなるのでしょうか?
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。




