36、領主会合と苦悩と
インフルエンザという病魔に蝕まれること3日。
未知の40度という高熱にうなされること2日。
そろりそろりと病魔の立ち去る音が聞こえるのを鑑み、書きたいと思います。
読者の皆さんも、体調管理に気を付けて頂けると、幸いです。
ルーク君の話を聞いたり、質問に答えたりしていた。ふと時計を見ると、もう12時だった。どうりで、お腹が暴れ始めている訳だ。
「ルーク君、お腹減ってない?」
ルーク君は頭をパッと上げて、目の前にある時計を見上げながら言った。「あ、そう言えば。この首飾りを見てたら、完全に忘れてました。」
(サラッと、嬉しいことを言ってくれるねぇ。)
「美味しいお店を知っているんだけど、どう?」
「良いですね、行きましょう!」
いつの間にか、僕とルーク君は手を繋いで、歩き出していた。子供は仲良くなるのが早い、というのは本当なのであろう。
やはり、ここに来たら食べたくなる串焼きを買うことにした。色々な種類があって、食べ比べると中々に面白かった。もちろん、僕はエクセルボアが一番だが。
「父さん、ただいま。」
「おう、お帰り。ルーク君はどうした?」
「しっかり、待ち合わせ場所まで送ったよ。」
「そうか。それで、今日はどうだった?」
「冒険者ショップに行って来たよ。ルーク君も魔法とか魔物とかが好きなんだって。」
「それなら、良い友達になれそうだな。」
「うん。ところで、領主会合はどうだったの?」
「そうだな...。」父さんの笑顔が少し引きつった気がした。きっと、何かあったのだろう。
「難しい事でも言われたの?」
「まあ、そんな感じかな...。」父さんが真面目な顔になった。きっと図星だったのだろう。
父さんは僕の方を一瞥すると、小さく深呼吸した。そして、窓の外の景色を見ながら話し始めた。
「実はな、レオがジューサーで利益を上げていることを、快く思わない人たちがいるんだ。」
「年収8000万円だからね。」
「それで、使用済みのジューサーを回収しろってうるさいんだよ。」外では、雨が降り始めた。雨粒が窓にパラパラとぶつかっていた。
「そんなにゴミが酷いの?」
「いや。燃料になっているから、ゴミは出ないはずなんだが...。」
「そっかぁ。じゃあ、回収するしかないね。」
「そうだな...。」
また一段と、雨が激しくなってきた。体が冷えてきたのか、父さんは窓のそばから離れ、暖炉の前の椅子に座って、続きを話し始めた。
「この際だから、話すけど、モラリス領との橋が大雨で壊れたんだよ。」
「また、壊れたの?」
父さんは小さく溜め息を1つついてから、窓の外で降るザアザア雨を恨めしそうに見てから、僕の方を向いた。
「...ああ。」
「でも、今回はジューサーの利益もあるんだし...。」
「今は開拓に使っているし、それに...。」父さんの肩がますます下がってしまった。父さんの肩の位置は、降水量に比例しているらしい。
「それに、どうしたの?」
「ジューサーの金額が、実質的に5万ウィーズまでに制限されたんだよ。」
「えっ、どうして?」
「領主会合で色々あってな...。」
* * * * *
レオがルーク君と遊びに行った後の、その日の領主会合。
「本日の議題は、事前にお伝えしていた通り、『マングスター領のジューサー』についてです。」
(え、お伝えしてたの?聞いてないんだけどな...。)
「では、私から。かのジューサーは、我が国で大好評となり、あれを買わんとするために、裏市場で入手した者もいる。これは、治安維持上いかがなものか?よって、ここに対策会議を設置するものである!」
(そんなに悪い事をしたのかなぁ...。)
「賛成!それらに加えて、我が国のみならず、我々の属するリンクス公爵領の食文化の中心へと進出しつつある。これは、公爵への反逆に等しく、由々しき事態である。」
(食文化はそんなんじゃ揺るがないよ...。)
「張本人のマングスター子爵の話を聞こうではないか?」
ソーだ、ソーだ、ソーだ!
小学校の学芸会のような囃子が響く。これを大の大人が精一杯やっているのだから、何とも滑稽で虚しい。
「皆さん、もとい公爵に損失を加えようとしたことではありません。」
「裏市場で売買されていたことについては?」
「私どもは合法的な市場にそれらを納入しています。私たちが管理できるのはここまでで、ここからはあなた方の問題だと考えています。」
「では、衛生的にはどうか?街のあちらこちらに、使い終わったジューサーが落ちていると、聞くではないか!」
「...っ。」
「これについては、どうなのだ?」相手が言葉に詰まると、そこを突っつき始める。まるで、子供じゃないか。
「...それは。」
「それが答えなのだな!」鬼の首を取った喜びを抑えているかのように、喉がひくひくと動き、顔もにやにやとしている。
「...はぁ、もう良いですよ。では、ジューサーの製作・販売を中止させて頂きます。今後は何を言われても作りません。」
父さんが負けて、他の領主が勝ったかのように見えた。しかし、他の領主側からは拍手喝采が何1つも起きなかった。ただ、ギョッと目を見開いているだけだった。悪いことをしてしまった子供のように。人によっては、上座をチラリと、機械仕掛けの人形のように見ていた。
「マングスター子爵、その...少し良いだろうか?」
「どうされましたか、侯爵?」
「我々が言いたかったのは、...あなたを非難しようとしたのではない。注意...いや、助言をしたかったのだ。だから━━。」
* * * * *
窓の外を見ると、小雨が降っていた。それを縫うかのように、三等星くらいの輝きが僕たちの部屋に届いてくる。これで、ココアがあればなどと思いつつ。
「...そっか、大変だったね。」
「まぁな。」
「でも、少しは父さんの味方もいたんでしょう?」
「あの会合じゃあ、低位の貴族の仲間だと役に立たんよ。意見を言っても、一蹴されるだけ。」部屋の中に入って来た羽虫をパチンと潰した。
「いつ帰るの?」
「明日、帰るよ。ここにいても、お腹が締め付けられるだけだからな。」
レオにルーク君という友達ができましたね。他領の人とは初めてでは...。
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあればアドバイスしていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。




