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付与術師の領地経営記  作者: 八咫烏
第3章 僕と激動と
36/58

36、領主会合と苦悩と

インフルエンザという病魔に蝕まれること3日。

未知の40度という高熱にうなされること2日。

そろりそろりと病魔の立ち去る音が聞こえるのを鑑み、書きたいと思います。


読者の皆さんも、体調管理に気を付けて頂けると、幸いです。

 ルーク君の話を聞いたり、質問に答えたりしていた。ふと時計を見ると、もう12時だった。どうりで、お腹が暴れ始めている訳だ。


「ルーク君、お腹減ってない?」


ルーク君は頭をパッと上げて、目の前にある時計を見上げながら言った。「あ、そう言えば。この首飾りを見てたら、完全に忘れてました。」


(サラッと、嬉しいことを言ってくれるねぇ。)


「美味しいお店を知っているんだけど、どう?」


「良いですね、行きましょう!」




 いつの間にか、僕とルーク君は手を繋いで、歩き出していた。子供は仲良くなるのが早い、というのは本当なのであろう。


やはり、ここに来たら食べたくなる串焼きを買うことにした。色々な種類があって、食べ比べると中々に面白かった。もちろん、僕はエクセルボアが一番だが。


「父さん、ただいま。」


「おう、お帰り。ルーク君はどうした?」


「しっかり、待ち合わせ場所まで送ったよ。」


「そうか。それで、今日はどうだった?」


「冒険者ショップに行って来たよ。ルーク君も魔法とか魔物とかが好きなんだって。」


「それなら、良い友達になれそうだな。」


「うん。ところで、領主会合はどうだったの?」


「そうだな...。」父さんの笑顔が少し引きつった気がした。きっと、何かあったのだろう。


「難しい事でも言われたの?」


「まあ、そんな感じかな...。」父さんが真面目な顔になった。きっと図星だったのだろう。




 父さんは僕の方を一瞥(いちべつ)すると、小さく深呼吸した。そして、窓の外の景色を見ながら話し始めた。


「実はな、レオがジューサーで利益を上げていることを、快く思わない人たちがいるんだ。」


「年収8000万円だからね。」


「それで、使用済みのジューサーを回収しろってうるさいんだよ。」外では、雨が降り始めた。雨粒が窓にパラパラとぶつかっていた。


「そんなにゴミが酷いの?」


「いや。燃料になっているから、ゴミは出ないはずなんだが...。」


「そっかぁ。じゃあ、回収するしかないね。」


「そうだな...。」




 また一段と、雨が激しくなってきた。体が冷えてきたのか、父さんは窓のそばから離れ、暖炉の前の椅子に座って、続きを話し始めた。


「この際だから、話すけど、モラリス領との橋が大雨で壊れたんだよ。」


「また、壊れたの?」


父さんは小さく溜め息を1つついてから、窓の外で降るザアザア雨を恨めしそうに見てから、僕の方を向いた。


「...ああ。」


「でも、今回はジューサーの利益もあるんだし...。」


「今は開拓に使っているし、それに...。」父さんの肩がますます下がってしまった。父さんの肩の位置は、降水量に比例しているらしい。


「それに、どうしたの?」


「ジューサーの金額が、実質的に5万ウィーズまでに制限されたんだよ。」


「えっ、どうして?」


「領主会合で色々あってな...。」




* * * * *




 レオがルーク君と遊びに行った後の、その日の領主会合。


「本日の議題は、事前にお伝えしていた通り、『マングスター領のジューサー』についてです。」


(え、お伝えしてたの?聞いてないんだけどな...。)


「では、私から。かのジューサーは、我が国で大好評となり、あれを買わんとするために、裏市場で入手した者もいる。これは、治安維持上いかがなものか?よって、ここに対策会議を設置するものである!」


(そんなに悪い事をしたのかなぁ...。)


「賛成!それらに加えて、我が国のみならず、我々の属するリンクス公爵領の食文化の中心へと進出しつつある。これは、公爵への反逆に等しく、由々しき事態である。」


(食文化はそんなんじゃ揺るがないよ...。)


「張本人のマングスター子爵の話を聞こうではないか?」




ソーだ、ソーだ、ソーだ!

小学校の学芸会のような囃子(はやし)が響く。これを大の大人が精一杯やっているのだから、何とも滑稽(こっけい)(むな)しい。


「皆さん、もとい公爵に損失を加えようとしたことではありません。」


「裏市場で売買されていたことについては?」


「私どもは合法的な市場にそれらを納入しています。私たちが管理できるのはここまでで、ここからはあなた方の問題だと考えています。」


「では、衛生的にはどうか?街のあちらこちらに、使い終わったジューサーが落ちていると、聞くではないか!」


「...っ。」


「これについては、どうなのだ?」相手が言葉に詰まると、そこを突っつき始める。まるで、子供じゃないか。


「...それは。」


「それが答えなのだな!」鬼の首を取った喜びを抑えているかのように、喉がひくひくと動き、顔もにやにやとしている。


「...はぁ、もう良いですよ。では、ジューサーの製作・販売を中止させて頂きます。今後は何を言われても作りません。」




 父さんが負けて、他の領主が勝ったかのように見えた。しかし、他の領主側からは拍手喝采が何1つも起きなかった。ただ、ギョッと目を見開いているだけだった。悪いことをしてしまった子供のように。人によっては、上座をチラリと、機械仕掛けの人形のように見ていた。


「マングスター子爵、その...少し良いだろうか?」


「どうされましたか、侯爵?」


「我々が言いたかったのは、...あなたを非難しようとしたのではない。注意...いや、助言をしたかったのだ。だから━━。」




* * * * *




 窓の外を見ると、小雨が降っていた。それを縫うかのように、三等星くらいの輝きが僕たちの部屋に届いてくる。これで、ココアがあればなどと思いつつ。


「...そっか、大変だったね。」


「まぁな。」


「でも、少しは父さんの味方もいたんでしょう?」


「あの会合じゃあ、低位の貴族の仲間だと役に立たんよ。意見を言っても、一蹴されるだけ。」部屋の中に入って来た羽虫をパチンと潰した。


「いつ帰るの?」


「明日、帰るよ。ここにいても、お腹が()め付けられるだけだからな。」

レオにルーク君という友達ができましたね。他領の人とは初めてでは...。


まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあればアドバイスしていただけると助かります。

もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。

今後とも八咫烏をよろしくお願いします。

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