33、仲間と温かみと
うっすらと意識が戻ってきた。まだ目を開けられないが、自分がどこにいるかは分かった。この感触、なにより『保温化』を付与してあるベッドは1つしか無い。
五感のうち、始めは触覚、その次は聴覚、嗅覚の順に感じるようになった。少し経つと、やっと気力が湧いてきたので、少しずつ目を開けていった。
(やっぱり、僕の部屋だ。)
何気なく置かれている花瓶、毎年柄が変わるカーテン、誕生日にもらった図鑑が懐かしい。あの森に入ったこともあり、自分の家が一番落ち着く。
(皆はどうしてるかな...?)
窓から外を見ると、小鳥が縦横無尽に空を駆け回っていた。子どもたちは元気に遊び、大人たちは楽しそうにお喋りをしていた。そして、全てを照らす太陽が眩しかった。
僕は、別の問題に苛まれていた。もしかしたら、こっちの方が解決しにくいかもしれない。
(そろそろ、残る1つの五感を使いたいんだけどなぁ。)
いかんせん、空腹はどうしようも無い。食べ物が出てくるのを待つしか、できることは無いのである。こういう時に限って、誰も来なかった。いつもなら、引っ切り無しに入ってくるのに。
(『食料化』があればなぁ...。でも、木とか紙とかを食べるのもなぁ...。)
紙を食べていた小学校の友達を思い出したが、気が紛れるということは無かった。相変わらず、お腹は減ったままである。
(ちょっと、僕のお腹。我慢してよね、僕も辛いんだから!)
その時、廊下を通る人の声が聞こえた。真面目な声と、元気な声の組み合わせ。思い付くのは、あの2人だけだった。
(やっと、会えるのか。思い返すと、本当に久しぶりだな...。)
「レオ様が早く元気になられると良いですね。」
「そうね。せめて、目が覚めると良いんですけど。」
「今日はどうでしょうね?」
「さあ...。」
ドアが少し開いた。はじめに入って来たのは、ミア(妹の方)だった。僕と目があった瞬間に、ドアを完全に開けようとしていた手も、部屋に入ろうとしていた足も止まってしまった。
「ミア、どうしたの?」
(僕に喋る体力があればなぁ。)
「...。」
「まさか...。」
(お、やっと分かったか。さすがシア、勘が良い。)
「ミア、レオ様は生きているんでしょうね?」
「え...ああ、当たり前じゃない。」
「じゃあ、どうしたのよ?」
「シアが...さっき言った事の逆よ...。」
「そりゃあ、生きているに決まってるじゃない!もし、亡くなられていたら...。」
「そういう事じゃなくて...。」
聞いていて何とも焦れったい会話が数回続いた後、シアは我慢の限界を迎えたようだった。
「ミア、ちょっとどきなさい!」
「...あ、うん。」
「本当に、どうしちゃったのよ!」
バッと、ドアが一気に開いた。ミアが入れ違いに、入って来たシアと目があった。その瞬間、シアも目を見開いたまま固まってしまった。
(いや、何で2人とも黙ってるの?おかげで、空気が重いよ...。)
「その...失礼します。」
「そうね...呼んでこなくては。」
やっと、僕が一番会いたかった人に会えるのであろう。どれだけ怒られるのか分からないが、それでも嬉しかった。もちろん、シルバーサウルスのことは黙っておく。
ドタドタドタドタ...バタンッ
「レ、レオはどこだ!」ゼーゼーと息を切らしながら、父さんが僕の部屋に駆け込んできた。
(前にも、こんな感じのことがあったなぁ。)
「こちらです。」と、シアが指差した瞬間に、父さんはおもちゃを見つけた子供のように駆け寄ってきた。
「レオ、大丈夫か?」
「う...うん。」
(声が出て良かったぁ。もし出なかったら、父さんが心配し過ぎて、暴走するところだったよ...。)
「そうかぁ。それなら良かったよ。」
ドタドタドタドタ...バタンッ
「レ、レオ!」ゼーゼーと息を切らしながら、母さんも僕の部屋に駆け込んできた。
「レオ、怪我はない?」
「母さん、大丈夫だよ。」
「それなら良かった。レオ、おかえり!」
母さんに抱きしめられた瞬間、自分の家に戻ってきたという実感が、やっと湧いてきた。不意に、視界が揺らついた。そして、何かが頬をスーと伝わっていった。
(良かった、この人たちを悲しませずに済んで。)
「レオ、もう大丈夫だからね。」
「うん、ありがと。」
いつもなら、気恥ずかしくて見られたくない涙だが、今日は自然に流すことができた。よっぽど、極限状態だったのだろう。落ち着いて考えると、何かスゴい事をした気がした。特に、シルバーサウルスの事とか。
気持ちの整理がついて、母さんから顔を上げると、いつもの日常に戻っていた。親バカの父さんと母さん、真面目なシア、活発なミアなどに囲まれていた。そして、家具の配置、キリっとしながらも優しさがある冬空、家の外から聞こえる活気のどれをとっても、いつも通りだった。
「レオ、しっかり召喚獣に感謝するんだよ。」
「えっ、どうして知ってるの?」
「そりゃあ、レオがアイロンサウルスに乗って帰って来たからな。」
「そうだったんだ...。」
「今回は大目に見るけど、次からは怒るからな。」
「うん、分かった。ごめんなさい。」
(僕にはボルト、ファイ、ウィン、そしてクロー、きっとこれからも助けてくれる仲間が側にいるんだった。)
僕は一人じゃない。僕を優しく見守ってくれる人、間違えた時に叱ってくれる人、一緒に手伝ってくれる人、秘密を共有できる人、皆が僕の大切な仲間たちだ。これからも、彼らと一緒に楽しく過ごして行きたい。
レオが無事で良かったですね。次回からは激動の3章が始まります!
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。




