32、真実と驚きと
枯れかけのアザミを踏みしめながら歩いて近付いて行った。シルバーサウルスの足元には、シロツメクサが生えている。面白いコントラストだと思いつつ、シルバーサウルスに迫っていった。
シルバーサウルスはB+ランクなので、オーラもそれ相応に凄まじかった。こんな濃度の魔素を浴びたのは初めてだ。何だか、頭がクラクラしてきた。そのせいで、僕が生まれてからの記憶がフラッシュバックし始めた。
・生まれた時は、父さんはイケメン、母さんは美人で安心したものだ。
・確か、初めての付与は包丁にしたなぁ。
・父さんと母さんに果実液を作ったら、喜んでくれたっけ。
・領主会合は緊張したなぁ。
・魔物図鑑を買ってもらった時は嬉しかったなぁ。
(...あ、ヤバいヤバい。こんなんじゃ、勝てないよ。)
再び僕たちの敵に注意を向けながら、ゆっくりと慎重に進んでいった。もしかしたら...。僕なら、いや、僕たちでなら乗り越えられるはずだと、自分に言い聞かせながら、進んで行った。
シルバーサウルスはずっとスフィンクスのように堂々と座っていたが、重々しく口を少し開いた。何が来るのかと身構えていると、ゆっくりと威厳のある声で話しかけてきた。
「そこの少年、名前は?」
(え、喋るのかよ。まあ、異世界だからか...。)
「聞いているのか!」何となく、シルバーサウルスの言葉が、断れない雰囲気を醸し出している気がした。
(三大翼竜だと、威厳が違うな。)
「僕はレオです。レオ・マングスターです!」
「我を前にしても、その威勢か。」
「質問があります。...どうして、僕たちを襲うんですか?」
「端的に答えるなら、低ランクや低レベルの魔物どもには自我が無いから、仕方ないであろう。それに、レオ・マングスター、いやレオも魔物を襲っているだろう。」
「それは、レベルを上げるために。」
「なら、魔物も同じだ。この厳しい世界で生き残るには、他者を糧として強くなるしかないんだ。魔物も種の繁栄という考えは持っているんだよ。」
「...。」
「ちなみに言うが、我は他の生物を自らの意思で襲ったことは無い。もちろん、襲われたら倒すがな。」
「じゃあ、今回は?」
「今回と言うと、大量発生だな。これに我は関係していない。むしろ感謝して欲しいくらいだ。」
「...?」
「発生の予定月と大きな差があっただろう。あれは、魔素の濃度を抑えていたからだ。おかげで、対策が立てられたであろう。」
「そうだったんだ...。」
「まあ、信じなくても良いがな。では、我の番だな。お前の職業は何だ?」
「付与術師ですけど...。」
「その3匹の召喚獣から予想は付いていたが、やはりそうだったか。中々、珍しい職業だな。」
「珍しい?」
「そんなことも知らんのか。付与術と付与魔法の違いは分かるよな?」
「違いがあるんですか?」
「ああ、大違いだ。全くの別物だぞ。」
「え...。」僕の自分像が、土台から崩れ去った気がした。今まで考えていたことが、間違っていたなんて。
付与術:古代術の一種。付与の知識、概念、仕組みを暗に理解しているので、オリ
ジナルの術を構築することも可能。
付与魔法:付与術を基として、付与の方法と結果だけを暗に理解している。仕組み
を理解していないので、単調な付与しかできない。
シルバーサウルスに聞くと、違いがよく分かった。似ているのは、外見だけらしい。中身は全くの別物だった。
「付与術は『失われた五古術』の1つで、使い手は数少ない。我も片足に収まるくらいしか見たことが無い。」
「そうだったんだ...。」
(だから、父さんたちは『付与魔法』、僕は『付与術』って言ってたんだなぁ。てっきり、同じものだと思ってたよ...。)
「だから、変な付与もあっただろう。使い物にならないような。」
(あ、確かにある。『粉末化』とか『滑ら化』とかが。)
「色々教えてくれてありがとう。あと、勘違いしちゃってごめんね。」
「お礼の代わりに、我の召喚主にならないか?」
「え、でも...。」
「我は人語を解するし、戦闘力なら基本的に負けないはずだ。それに、この世界のことについては、それなりに詳しいはずだ。」
「僕なんかで良いの?」
「『失われた五古術』が使える時点で合格だ。それに、お前といると面白そうな気がするしな。」
「分かった、良いよ。」
「では、かっこいい名前を頼むぞ、レオ。」
(名前かぁ。えーっと。)
すぐには思いつかず、周りを見渡した。何か良さげな物はないだろうか。こんな森の中には、木しかない。他にあると言えば、シルバーサウルスの足元にあるシロツメクサくらいだろうか。
(シロツメクサって言えば、クローバーか。何か懐かしいな、四葉のクローバーって響き。...あ、クローだ!)
「クローはどうかな?」
「ふむ、クローか...。何とも言えない響きだな、気に入ったぞ。」
(よしっ、これでドラゴンクローが使えるようになるぞ!)
「じゃあ、従魔付与をするね。」
「ああ、頼んだぞ。」
「『従魔化』を付与。...あれ、何か...体が...。」
僕の視界はドンドン暗く狭くなっていった。何だか、この眠気に似た感じは、前にも経験したことがある気がした。そして、シルバーサウルスの、いやクローの声が聞こえたと思った瞬間に、気を失った。
まさか、シルバーサウルスが仲間になりましたね。レオはどうなってしまったのでしょうか?
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。




