31、仲間と覚悟と
森の中は薄暗かった。これが早朝とか夜とかだったらと思うと、背筋がゾッとする。今から怖がってどうするんだと自分を叱りつつも、やはり一歩一歩、地面を擦るようにしか歩けなかった。
「ボルト、大丈夫だよね?」
ガルルッ
「ファイ、大丈夫だよね?」
ガァルルッ
「ウィン、大丈夫だよね?」
ガルゥルッ
「それなら、良かった。きっと...いや、絶対に大丈夫だな、うん。」
僕の周りを歩いている3匹を見てから、再び歩き出す。魔物が出てきても、この3匹がいるなら大丈夫だろう。
ガサッ...ガサガサッ
この音にハッとして振り返るのは何回目だろうか。毎回毎回、スライムかラビットが出て来て、安心と落胆の狭間のような感情を感じていた。それでも、咄嗟に身構えてしまう。
(今回は......スライムかぁ。)
スライムがピョンピョンと草の中から飛び出して来た。スライムなんぞに使える魔力は無いので、無視して通過である。
ガルッ
さっきまでテンポ良く歩いていたのに、3匹とも急に止まってしまった。1つの方向を見ながら。敵を警戒し過ぎていて気付かなかったが、魔素の濃度が高くなっていた。木を見て森を見ずを実践していたのだろう。
(やっと、ご対面か...。)
「ボルト、ファイ、ウィンはここで待ってて。」
僕がそろりそろりと、3匹が睨んでいる草むらに近付いて行った。草むらに顔を近付けると、草むらの奥には少し開けた土地が見えた。そして、そこにいる魔物の群れも。
思わず、飛び出して行きそうになったので、ゆっくり深呼吸をした。そして、敵の種類と数を把握することにした。魔物図鑑と見比べての作業だったが、案外早く終わった。敵の編成はこうだった。
シルバーザウルス1、キングボア2、ドリルボア4
別に数は大したことないが、1体1体が強力な魔物だった。それが7匹も群れていると尚更だ。
シルバーサウルス(B+ランク)
・物理、魔法攻撃(特に氷属性が強力)
・攻撃力がサウルス種の中で最大値
・ダメージ低減
・銀色で、大岩のような見た目である。
・全身の表面が金属で覆われているので、ダメージが通りにくい。
・三大翼竜の1種で、非常に危険。
・他の三大翼竜と一緒にいると、Aランク級になる。 など
キングボア(Bランク)
・物理攻撃のみ
・2属性のダメージ低減シールドを持つ。
・森の中に生息している。
・全身を覆う2属性のシールドを破壊しないと、ダメージが通らない。
・シールドの属性を見極める必要がある。
・超高速で突進してくるので要注意。 など
ドリルボア(Cランク)
・物理攻撃のみ
・1属性のダメージ低減シールドを持つ。
・森の中に生息している。
・全身を覆う1属性のシールドを破壊しないと、ダメージが通らない。
・シールドの属性を見極める必要がある。
・高速で牙を飛ばしてくるので要注意。
・他の魔物と一緒にいると、Bランク級になる。 など
今日だけで、新しい魔物が3種も見れるなんて驚きである。まあ、そんな悠長な事を言っている場合ではなかった。敵の平均ランクはBである。油断すると、即刻全滅するであろう。家の冷蔵庫から持って来たサンドイッチを片手に、作戦を練ることにした。
①キングボアとドリルボアを足止めする。
②その間に、シルバーサウルスを僕たちで倒す。
③最後に、キングボアとドリルボアを倒す。
鉛筆を持つ手がプルプルと震えていたが、どうにかなるであろう。まずは、キングボアとドリルボアを足止めするための、罠を作ることにした。
(とりあえず動けなくすれば良いから...。)
(まあ、地面に粘化でも付与するか。)
「『粘化Lv9』を付与。」
(これが最大限の付与だから、成功してもらわないと...。)
武者震いか、恐怖か、興奮かで震える足を1歩ずつ持ち上げながら、さっきの草むらの近くまで進んできた。さあ、これからが本番である。この1戦で、グラント町の将来が決まる!
僕の横に座っている3匹を見た。こいつらと一緒なら、どんな敵とでも戦える気がした。これが慢心なのは分かっている。でも、そう感じてしまうのだ。
「ボルト、ファイ、ウィン、行くよ!」
(今日をこの世界での最後の日にするつもりは無い!)
ガサ、ガサガサッ、ガサガササッ
草むらから出てきた僕たちを見つけて、キングボアとドリルボアが突っ込んで来た。想像以上の速さである。前から自動車が突っ込んできたような感じだ。
(大丈夫、大丈夫だ。粘化は付与している。)
キングボアとドリルボアが僕の罠にはまるまで、小1時間くらい経った気がした。少なくとも、それくらいの密度はあった。
ガルルゥ、ガルガルゥ...ガルッ...ドッシーン、ドッタァーン
(やっと罠にはまった。)
粘化した地面に足を取られたボアに、別のボアが止まり切れずにぶつかっていった。そこからは、流れるように、当たっては倒れるを繰り返していた。それが5回起きると、僕の足元にボアが6匹転がっていた。
ヒュンッ
僕の耳元を何かが掠めた。飛んで行った方向を見ると、池が見えた。正確に言うと、木に丸い穴が空いていた。そして、その奥の木にも丸い穴があった。この調子で穴が1直線に空いているので、少し遠くの景色が見えたのだった。
(うわっ、忘れてたよ。確かドリルボアには...。)
ヒュンッ、ヒュンヒュンッ
(えっと、どうしよう。あぁ、どうすれば。まずは落ち着いて...えーっと。)
カン、カンカンッ
エッと思って目を上げると、ドリルボアと僕の間にボルトがいた。『頑強化Lv4』が付いているから、跳ね返せるのであろう。
「ボルト、ありがとう。」
ガルルゥッ
(牙を止める、いや飛ばさない......そうか、『固定化』か。)
「ドリルボアの牙に『固定化Lv7』を付与。」
さっきまで、ビュンビュン飛んでいた牙が来なくなった。ドリルボアは懸命に牙を飛ばそうとしているが、無理であろう。Lv7の付与が生まれたばかりの魔物に負ける訳が無い。
攻撃する機会はいつでもあったはずだが、ドッシリと構えているシルバーサウルスの表面が、妖しく光っていた。そして、その足元には、季節外れのシロツメクサに蕾が付いていた。
レオはシルバーサウルスを無事に倒せるのでしょうか?
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。




