25、領主会議と大量発生と
仕事が忙しく、投稿時間が遅れていますが、2月に入れば落ち着くと思います。
さて、ついに領主会合の日になった。待ち望んでいた訳でも無いし、今日でリスター市(リンクス公爵家領の中心都市)の観光が終わるのは悲しい気がした。そんなことを言っていても始まらないので、張り切って領主会合に臨むことにした。
「マングスター子爵、ご来場っ!」以前と同じく、執事がよく通る声で、僕の家名を言った。気恥ずかしかったが、胸を張らないといけないような気がした。
「ラクターン子爵、お久しぶりです。」
「...失礼、少し用事があるので。」と言って、足早に去っていった。
「どうしたんだろうね?」
「さあな、ふと用事でも思い出したんだろう。物価の高騰が収まっていないらしいし...まあ、正確なことは分からんが。」
「もう少しで始まる時間だね。」
「お、公爵が入って来たぞ。」父さんの声が急に小さくなった。
「リンクス公爵のご入場!」偉そうに周りを見渡しながら、40代くらいの男の人が入ってきた。
「皆の者、今日はよく集まってくれた。健勝そうで安心したぞ。」
「挨拶の儀に移らせて頂きます。私が家名を読み上げるので、その順に公爵様の所までいらして下さい。」
(緊張してきたなぁ。今回も粗相が無いように注意しないとな。)
「では、マングスター子爵からどうぞ。」と、執事が言い終わると、会議室内にザワザワと動揺が広がっていった。
(どうして、うちが一番なんだよ。ああ、心の準備がぁ...。)
「オリヴァーか、久しいな。」
「はい、お久ぶりです、公爵。」
「どうして、お前が一番なのか分かるか?」
「いえ、私などには見当も...。」
「嘘を付け。お前なら、領主会合が招集された時には、分かっていたのだろう?」と、少しニヤリと笑いながら言った。
「さすが、公爵には敵いませんな。」
「それで、私にもジューサーとやらをくれないか?」
「分かりました。後ほど、送っておきます。」もちろん、タダでである。
ジューサーの話が終わると、すぐに次の人の番になった。僕たちのような田舎貴族は、それぐらいの価値しか無いということだ。いつも通り、領主会合が終わると、領主会議が行われる部屋に移動した。
「これよりヴァイパー侯爵領の領主会議を始めます。始めに、ヴァイパー侯爵よろしくお願いします。」
「このメンバーで揃うのは1年ぶりだな。リンクス公爵との領主会合も済んだことだし、例年のように肩の力を抜いて話すことにしよう。」
(相変わらず、気さくな人で良かったよ。)
「まずは、オリヴァー。領内の状況を教えてくれ。」
「物価の高騰を抑えることに成功し、今年は問題なく越せそうです。1つ不安な事もありますが...。」
「何だ?」
「大量発生についてです。」
大量発生は、魔素の濃度が異常に上昇することで、活発化した魔物が大量に出現することだ。大量発生が起きる場所は決まっていて、その1つがグラント町(僕たちが治めている領土)の南隣りに位置する「ゴーストフォレスト」である。
「そう言えば、去年も言っていたな。」
「はい。」
「確か、今年の7月が発生予定月ではなかったのか?」
「そうです。しかし、魔素の濃度が上昇しているのに、大型の魔物が活発化していないんです。」
「つまり、どういうことだ?」
「今回の大量発生は、大規模なものになりかねない、ということです。」父さんが珍しく深刻な顔をして言った。それほど、大量発生は危険なのであろう。
「...そうか。支援部隊を強化しておこう。」
(僕も何かやらないとな。皆を守るのが、領主なんだから。)
「ありがとうございます。」
「いや、気にするな。俺とお前の仲じゃないか。」
大量発生についての話しが終わると、次の議題に移った。一部の領主たちは、物価の高騰に苦しんでいるようだった。まあ、財政計画が杜撰だったのだから、仕方ない。
「では、これで領主会議を終わりとする。オリヴァーは話があるから、残ってくれ。」
(え、また、父さんだけ残る流れなの...。)
他の領主たちが、「また、あいつか。」という目をしながら、会議室を出ていった。残ったのは、ヴァイパー侯爵、父さん、僕の3人だけ。
「なあ、オリヴァー。1つ聞いても良いか?」
「はい。」
「ジューサーとは何なのだ?私はまだ使ったことが無くてな。」
「ジューサーですか。」父さんは隣に座っている僕を見た。多分、ヴァイパー侯爵に僕のことを話して良いか、考えているのだろう。
「...ここだけの話にしてもらえませんか?」
「ああ、良いだろう。」と言いながら、当たり前だと言いたげに頷いた。
「実は、ジューサーを作ったのはレオなんです。私は完成品を見せてもらっただけで、構造はさっぱり分からないのです。」
「何、レオ君がか...。」
「はい。レオ、ジューサーのことを説明できるか?」
「他言無用にしていただけるなら。」ジューサーの原価が大した値段じゃないと知られると、面倒な事になりそうである。
「当たり前だ。それで?」
「まず、容器については藁細工を使っています。」
「しかし、果実液が漏れないらしいではないか。藁細工ならば。」
「『密閉化』の付与をしているので、大丈夫なのだと思います。」
「付与か...。」
「どうりで、誰も真似できない訳だ。それで、どうやって果実を液状にしている?」
「藁細工の中で、『液化』の付与をしているので。」
「また付与か。それでは、原価は藁細工のみの値段か?」
「はい。」
「そうか。教えてくれて、ありがとう。これからも頑張ってくれ。」
「分かりました。」
今日からは、大量発生のために頑張らなくてはと思いながら、僕は会議室を後にした。絶対に、大切な物を守るために。
大量発生を無事に戦い抜くことができるのでしょうか?
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。




