23、少女と指輪と
執筆・推敲に手間取り、予定の時間を過ぎてしまいました。
申し訳ございませんでした。
僕たちが物価対策案を講じてから、1週間が経った。反乱が起きたという話も聞かないし、僕たちの家に暴徒が入って来もしなかったので、一応は成功したのであろう。
(いやぁ、本当に良かった、良かった。もし失敗していたら......。)
何となく、寒気がしてきた。ネガティブなことを考えるのは止めておこう。きっと大丈夫に決まってる。
バタンッ
急にドアが開かれ、フィリップさんが勢いのあまり転びかけながらも、僕の部屋に駆け込んできた。
「レオ君ッ!」
「どうしましたか?」
「一大事だよ、一大事!」
(あ、僕の異世界ライフ、終わったかも...。)
「な、何が、あったんですか?まずは、お、落ち着いてください。」
「ああ、レオ君もな。ゴホンッ、何があったかを順序を正して言うとな。」
一呼吸おいてから、話し始めたフィリップさんの話は、僕の想像が及ばなかったものであった。僕もフィリップさんの話を聞きながら、ある程度まとめてみた。字が汚いのは、ご愛敬ということで。
①僕たちは物価の沈静化に成功。
②他領では物価の上昇を抑えた、または高騰しているままである。
③①、②のせいで、グラント町(僕たちが治めている領土)と、他領では物価の違
いが生まれる。
④食糧が十分に買えない人たちが一筋の希望を求めて、グラント町にやってくる。
⑤人口が増え、再び食料不足になる。
「つまり、悪循環になりつつある、ということですか?」
「ああ、そういうことだ。」ほんのりとため息混じりに答えた。
「他領でも物価が高騰しているんですね。」
「うちだけが洪水で畑に魔素が溜まって、植物の成長阻害にあっている訳じゃないからな。」
「主に、どこから来ているんですか?」
「基本的に、北隣りのラクターン子爵領と、川向いのモラリス子爵領からだな。」
「その2人に『対策を取って!』って言えないんですか?」
「そう言われると思って、昨日のうちに手紙を出しておいたよ。」
「父さんは何て言ってるの?」
「できるだけ助けたいそうだよ。他領の人だろうが関係無いってさ。」
(まあ、父さんなら、そう言うだろう。でも...。)
「じゃあ。」と言って、フィリップさんは仕事に戻っていった。このこと以外にも、問題は山積みなのであろう。僕の役目は、その一部を解決する手助けをすることだと思っている。
フィリップさんの手紙の効果は、数日経った後、顕著に現れた。ラクターン子爵領とモラリス子爵領の国境警備隊が動き、僕たちの治めるグラント町に繋がる道路を封鎖したのである。
「父さん、これで良かったのかなぁ?」
「共倒れになる危険性は無くなったけど、もしかしたら...いや、あの2人を信じることしかできないな。」父さんは一度、いや一瞬、逡巡したようだったが、すぐに頭を振って応えた。
「僕たちに助けを求めて来なかったの?」
「まあ、普通の貴族なら、そんなことはしないよ。他の貴族に借りを作るのを嫌うからね。」
「どうして?」
「自分の昇進に関わるかもしれないし、何か起きた時に、自分たちがどんな状況でも借りを返さないといけなくなるしね。」
「貴族って大変そうだね。」
「まあ、レオなら問題ないさ。」
「そうかな?」
「ああ、だって俺の自慢の息子だからな。」
前世では味わえなかった、心地よい期待のされ方だった。ただ僕の能力を信じて期待してくれる、そんな些細なことが本当に嬉しかった。昔なら━━
ウエェーン、ウエェーン、ウエェーン
レミリエ(僕の妹)の泣き声で、現実に引き戻された。昔なら、電車の中で泣く赤ん坊に舌打ちをしていたが、今では赤ん坊の泣き声が微笑ましく思えている。
(何か、年寄りみたいだな。前世からカウントすると、もう30過ぎか...。)
今日はこれから日課の魔物討伐に行くことにした。とは言っても、いつも通りE、Fランクを倒すだけだが。
シュッ...タッ
ガ、ガチャン
シュッ...タッ
今日は中々、豊作である。最近は、以前より魔物の数が増えているような気がした。僕はレベルが上げられるなら、どっちでも良いが。僕がスライムナイトを倒すために、火属性を付与していると、肩をトントンと叩かれた。
「あの、すみません。」と、きれいな女の子の声も聞こえた。
「どうしましたか?」
僕が振り返ると、見覚えのある女の子が立っていた。きれいなブロンドの髪が、原っぱを吹き抜ける風でなびいていた。
「私のこと、覚えていますか?」
「魔物に襲われていた子ですよね?」ここを間違えると、色々と大変なことになる。これは僕の経験談だが。
「覚えていらしたんですね。その、今日はお礼がしたくて。」
「別に気にしなくても良いですよ。僕はやりたかったことをしただけですし。」
「そうは参りません!恩をお返ししなければ、...として面目が立ちませんわ。」ちょっと気持ちが入っているのか、声が強くなっていた。
(あれ、よく聞こえなかったな。まあ、良いか。)
「それでは、これを受け取ってください。」ちょっと恥ずかしそうに、ワンピースのポケットから箱を取り出した。
「これは何ですか?」
「その、指輪です。」と言って、箱を開けた。確かに、箱の中で指輪が輝いている。
「...指輪ッ!」
「...え、いや、別にそういう訳じゃ。」彼女も意味が分かったのか、慌て始めた。
「もちろん、あなたのお礼として受け取りますよ。」
(よしゃっ、人生初の女の子からのプレゼントゲット!)
「別に、あなたが嫌なら、受け取らなくても...。」赤らめた顔のまま、彼女は答える。
「いえ、あなたが拒んでも、受け取らせてもらいますよ。」指輪の箱を彼女の柔らかな手と共に、両手で包み込んだ。
「その、私...実は。」
いつしか、風は止み、日が柔らかに僕たちを照らしている気がする。ふと空を見上げると、太陽の日で、金色に輝いている入道雲がモクモクと大きくなっていた。
「リーフィア様、お時間ですよ!」という声が聞こえてきた。ふと我に返り、目の前を見ると、顔を赤らめた少女が立っていた。
「あ、その...これは...。」彼女も自分がしている事に気付き、顔を赤らめつつも動揺している様子だった。
「私、もう時間なので参ります。ぜひ、大切に使ってください。」
走り出そうとする彼女の腕を掴んだ。驚いて振り返った彼女に向かって、気になっていたことを尋ねた。
「僕はレオ・マングスターです。お名前は?」
「私はリーフィアです。フィアと呼んでくださいね。」最後に精一杯の笑顔を作った彼女に、僕も負けないように手を振った。再開を待ち遠しく思いながら。
さて、魔物が増えている原因とは何なのでしょうか?
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。




