22、物価高騰とジューサーと
突然だが、僕は猛烈に忙しい。この世界に転生してから、最も忙しい。なぜなら、毎週日曜日にジューサーの受け取りと共に、販売についての書類が送られてくるのである。これの要所を書き写し、財務係のフィリップさんに提出しなければならない。
書き写すだけなら、僕も疲れない。
僕は今、何歳だろうか?━━そう、2歳半である。
果たして、2歳半の子供が字を書けるだろうか?━━いや、無理である。
おかげで、わざわざ「転写」を付与して、書き写す(いや、写し取る)必要がある。
《ジューサー関連内訳・9月第2週》
生産数:40個 販売数:40個
原価:1000ウィーズ(約1000円) 定価:6万ウィーズ(約6万円)
粗利益:240万ウィーズ(約236万円)
輸送:5万ウィーズ(約5万円) 護衛:50万ウィーズ(約50万円)
納金:24万ウィーズ(約24万円)
純利益:157万ウィーズ(約157万円)
*粗利益:売上高から製造費を引いた額。
純利益:売上高から総費用を引いた額。
「フィリップさん、先週分のジューサーの利益です。」
「ありがと。えーと、どれどれ......な、何だとぉ!」フィリップさんは驚きの声をあげると同時に、思わず僕の書類を落としてしまった。
「何かありましたか?」
「純利益が157万ウィーズになっているんだよ。このままだと、年収8000万ウィーズを超えるんだが。」僕の書類を持っている手が、プルプルと震えている。
(え、年収8000万円!どんだけ儲かってんだよ、ジューサーは!)
「数字は間違ってないので、そ、そこに書いている通りだと思います。」
「そ、そうか...。」
「はい。」
「そ...それで、レオ君はこの金をどう使うんだ?」
「まずは、物価を沈静化させるために、商店へ120万ウィーズばら撒きます。残りの37万ウィーズは設備の修復、孤児院への寄付使う予定です。」
「よく知っているなぁ。」
「知り合いの冒険者の人に教えてもらったので。」
「それぞれの店への分配比率はどうするんだ?」
「分配はしません。」
「しない?」フィリップさんは合点がいかないようだった。この世界では、領主は物価が高騰すると、それぞれの店に支援金を出すのが一般的だ。
「はい、しません。代わりに、僕たちが輸入してきた食料を買い占めます。」
「何ッ、買い占めるだとっ!」
「そうです。」
「まさか、物価が更に高騰した時に、その食料を売って、一財産作ろうって訳じゃないよな?そんなことをするつもりなら...。」
「いや、絶対にしませんよ!」
「自分が生活できる食料を確保して、領民の飢えは見て見ぬふりをするのか?そんなことをしたら、大反乱が起きかねないぞ。」
この人はどこまで悪知恵が働くのかと感心しつつ、しっかり僕の計画を説明することにした。僕はこの領地から1人として餓死した人を出すつもりは無い。
《物価高騰対策案》
資金:120万ウィーズ
原因:昨年の洪水によって、畑に魔素が過剰に蓄積されたことによる成長阻害。
食糧不足で、輸入した食料が高額なこと。
対策:①今まで輸入していた全ての食料を、領主が代わりに買い占める。
②資金を使って、輸入した額より低い値段で店に売る。
要するに、僕が卸売市場の代わりをするということだ。こうすることで、一部の店に支援し過ぎるという事態は無くせるはずだ。
フィリップさんは僕の書いた対策案を読むと、腕を組んで、目を瞑ったまま、黙ってしまった。きっと財務係として、この状況は間違えてはならない局面なのであろう。
「そうだな...うん、これで行こう。」
「本当ですか!」
「ああ、本当だ。俺の勘も大丈夫だと言っているしな。準備の方は、私たちに任せてくれないか?」
「はい、もちろんです。資金の120万ウィーズはフィリップさんに預けておきます。」
「じゃあ、結果が出次第、伝えるよ。」フィリップさんはそう言うと、すぐに立ち上がった。きっと善は急げなのだろう。
「分かりました。」
僕は何をするのかと言うと、相も変わらずに、爪楊枝弾とジューサーの製作である。最近は、物理付与にif(発動条件)が1回使えるようになったので、爪楊枝弾のレパートリーが増えた。いくつか例を挙げてみよう。
①付与:if 何かに命中する
自身に「水属性Lv2」と「火属性Lv2」を付与する
結果:水と火が混じり、ちょっとした水蒸気爆発を起こす。
課題:連射すると、あちらこちらに湯煙ができて、相手の位置が全く分からなく
なる。
②付与:if 何かに命中する
自身に「液化Lv4」を付与した後に、「雷属性Lv2」を付与する
結果:電気を帯びた液体になり、相手が感電する。
課題:自分も感電するので、雨の日には撃てない。池や川に入ると、魚が感電死
してしまう。
これは、成功した例だけだ。他にも何種類かあるのだが、全く役に立つ気配が無いものばかりであった。例の①と②については、それなりに強いので、実戦でも使えている。
他にすることは......あ、そう言えば、僕の家が4人家族になったのである。生まれたのは5月初めだったのだが...。名前はレミリエ、女の子である。父さんに似るのか、母さんに似るのか、今から楽しみである。(9話に予告あり)
(まあ、個人的には、ぜひ美人の母さんに似て欲しい。)
僕はレミリエのために、色々とおもちゃを試行錯誤している。成功した数少ない例を挙げてみる。
①「軽量化Lv7」を付与した紙風船
紙風船に、最大限の軽量化を付与してみたところ、フワフワと浮くようになった
のである。ゆっくり上がって、ゆっくり落ちる。中々、僕もはまりそうな一品で
ある。
②「粘化Lv3」を付与したぬいぐるみ
ぬいぐるみの中身に粘化を付与すると、触り心地がスライムのぬいぐるみが完成
する。Lv3がちょうど良いプニプニ感を出している。これも中々に素晴らしい。
さて、ジューサーの反響と、物価対策の成果はどうなったのでしょうか?
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。




