20、誕生日会とジューサーと
9月になった。中秋の名月まであと少しの今日は、フィリップさん(財務係)の誕生日である。うちの母さんの誕生日も4日後なのだが、これは別の話。
「フィリップ、誕生日おめでとうッ!」
「オリヴァー(父さん)も皆も、ありがとう。」
「俺と同い年だから、フィリップは今年で28か。」
「そうだね。」
「じゃあ、早速誕生日プレゼントを渡そう!」
父さんは魔法杖、母さんは美味しい料理、セオドアさん(軍務係)は上物の酒、セイラさん(セオドアさんの奥さん)は万年筆だった。
「じゃあ、次はレオの番だな。」
「そうだね、父さん。」
「フィリップさん、誕生日おめでとうございます。これからも、この領地のことをよろしくお願いします。」と言って、僕が作ったジューサーを手渡した。
「...?」
(まあ、見た感じが、円柱状の藁細工の鍋だから、驚いても仕方ないよな。)
「フィリップさん、この中で好きな果物を選んでください。」と、母さんが切った果物を指差しながら言った。
「急にどうしたんだ?」と、困惑していた。父さんに何かを耳打ちされて、やっち落ち着き始めた。
「いいから、選んでください。」
「分かったよ。じゃあ、桃で。」
「桃を4切れジューサに...あ、ジューサーというのは、僕の渡した藁細工のことです。では、それに桃を入れてください。」
「この中に入れるのか...いや、言う通りにしよう。」腫れ物でも触るかのように、フィリップさんはそっと桃を置いていった。
「これで良いのか?」
「はい。では、蓋を閉めてください。」
「やったぞ。」
「蓋を開けてみてください。」
始めは驚いていたが、フィリップさんは首を傾げながら、恐る恐るといった具合に蓋を上に持ち上げた。
「...!」
「気に入ってもらえましたか?」
「...ああ、これは、レオ君の誕生日の時に言ったやつだろ。」
「はい、その通りです!誰でも簡単に果実液が作れますよ。」
「それで、これを商品化しても良いのかい?」
(よしっ、来た。ここからが本番だよ。)
「1つ条件がありますが、問題ありません。」
「条件?」まさか僕の口からそんな言葉が出てくるとは、思わなかったようだった。でも、さすが父さんの腹心なだけはあって落ち着いている。
「はい、条件です。」
「どんな?」
「ジューサーを売って得たお金の使い道は、僕に決めさせて欲しいんです。」思わず、フィリップさんの方に一歩踏み出してしまった。
「そ、そうか...。オリヴァー、どうすれば良いかな?」
「そうだな...。」
「父さん、フィリップさん。毎月、お金の使い道を明確にした報告書を書くから、お願い。ダメだと思った時は、変えてくれて良いから。」
「レオ...そうか。...そうだな、分かったよ。フィリップ、レオの言った通りにしてやってくれないか?」
「分かりました。レオ君にあそこまで言われたら、認めるしかありませんしね。」
(よっしゃぁーー、これでこの町を自由に変えられる!)
叫び声を我慢しつつ、父さんとフィリップさんにお礼を言った。これからが僕のビッグビシネスの始まりである。
フィリップさんの誕生日会が終わるとすぐに、ジューサーの商品化を進めることにした。主に、ジューサーの値段、生産量、販売先などである。
「レオ君、何か案はあるのかい?」
「はい、もちろんです。」
僕には妙案、いや神案があった。今までとは比較にならないくらい、スゴいものである。これがラルクさんとの約束をも守ることに繋がる。
「じゃあ、教えてくれるか?」
「分かりました、フィリップさん。」
人前で何かを話すのがワクワクすると思ったのは、何年ぶりであろうか。興奮で声が大きくならないようにしながら、僕の考えた計画を話し始めた。
《ジューサー売買計画》
材料:藁細工の鍋、魔力
生産数:10個/日 値段:3万ウィーズ(約3万円)
①ヴァイパー侯爵に配ってもらい、知名度を上げる。
②ヴァイパー侯爵内で販売してもらう。(売上の一部を納めることも考慮。)
③売上で、領内の問題点を解決する。
・お店に支援金を出して、物価を沈静化する。
・新しい農具の購入して、自給率を上げる。
・設備を充実させる。(例:魔物除けの柵)
「レオ、よく考えたなぁ。」さっきまで大人しく座っていた父さんが、いつの間にか僕の目の前にまで来ていた。
「そうですね。本当に驚きました。」
「2人とも、ありがとう。」
「それで、レオ君、材料はどうするんだ?こっちで発注しておこうか?」
「いえ、発注先はもう決めています。そこまでが、僕たちの計画ですから。」
「どこだ?」
「孤児院と無職の人にです。」
「そんなことをして大丈夫なのか?その...何だ、品質とかは...。」
前世にもこの世界にも、全く同じものがある。そう、差別だ。この世界では、身分が貴族、平民、孤児・無職に暗黙の了解で分かれている。その中でも、特に差別を好むのは貴族である。貴族は公爵、侯爵、伯爵、子爵に分かれていて、それぞれが自分より下の人を低く見る傾向がある。
この差別は、簡単に無くすことはできなそうだ。いくら賢く優しいフィリップさんでも、差別を完全にしない訳ではない。もう人々の中に、イデオロギーとして根付いているのである。
「問題ないですよ。最悪、形さえできていれば支障は無いですし。」
「そうだな、分かった。レオ君の言った通りに手配をする。オリヴァーも異論は無いな?」
「ああ、当たり前だ。うちの息子の計画に問題があるはずない。そもそも、レオは━━」
(ああ、また始まった。父さんの親バカが。)
僕とフィリップさんは、耳にたこ、いや耳に腫瘍できる前に、早々に退散することにした。あとは、母さんがどうにかしてくれるであろう。
ジューサー(ジュースを作る道具)が完成しましたね。これは、いかほどの金脈になるのでしょうか?
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。




