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付与術師の領地経営記  作者: 八咫烏
第1章 僕と異世界と
20/58

20、誕生日会とジューサーと

 9月になった。中秋の名月まであと少しの今日は、フィリップさん(財務係)の誕生日である。うちの母さんの誕生日も4日後なのだが、これは別の話。


「フィリップ、誕生日おめでとうッ!」


「オリヴァー(父さん)も皆も、ありがとう。」


「俺と同い年だから、フィリップは今年で28か。」


「そうだね。」


「じゃあ、早速誕生日プレゼントを渡そう!」


父さんは魔法杖、母さんは美味しい料理、セオドアさん(軍務係)は上物の酒、セイラさん(セオドアさんの奥さん)は万年筆だった。


「じゃあ、次はレオの番だな。」


「そうだね、父さん。」


「フィリップさん、誕生日おめでとうございます。これからも、この領地のことをよろしくお願いします。」と言って、僕が作ったジューサーを手渡した。


「...?」


(まあ、見た感じが、円柱状の(わら)細工の鍋だから、驚いても仕方ないよな。)


「フィリップさん、この中で好きな果物を選んでください。」と、母さんが切った果物を指差しながら言った。


「急にどうしたんだ?」と、困惑していた。父さんに何かを耳打ちされて、やっち落ち着き始めた。


「いいから、選んでください。」


「分かったよ。じゃあ、桃で。」


「桃を4切れジューサに...あ、ジューサーというのは、僕の渡した(わら)細工のことです。では、それに桃を入れてください。」


「この中に入れるのか...いや、言う通りにしよう。」腫れ物でも触るかのように、フィリップさんはそっと桃を置いていった。




 「これで良いのか?」


「はい。では、(ふた)を閉めてください。」


「やったぞ。」


「蓋を開けてみてください。」


始めは驚いていたが、フィリップさんは首を(かしげ)げながら、恐る恐るといった具合に蓋を上に持ち上げた。


「...!」


「気に入ってもらえましたか?」


「...ああ、これは、レオ君の誕生日の時に言ったやつだろ。」


「はい、その通りです!誰でも簡単に果実液が作れますよ。」


「それで、これを商品化しても良いのかい?」


(よしっ、来た。ここからが本番だよ。)


「1つ条件がありますが、問題ありません。」


「条件?」まさか僕の口からそんな言葉が出てくるとは、思わなかったようだった。でも、さすが父さんの腹心なだけはあって落ち着いている。


「はい、条件です。」


「どんな?」


「ジューサーを売って得たお金の使い道は、僕に決めさせて欲しいんです。」思わず、フィリップさんの方に一歩踏み出してしまった。


「そ、そうか...。オリヴァー、どうすれば良いかな?」


「そうだな...。」


「父さん、フィリップさん。毎月、お金の使い道を明確にした報告書を書くから、お願い。ダメだと思った時は、変えてくれて良いから。」


「レオ...そうか。...そうだな、分かったよ。フィリップ、レオの言った通りにしてやってくれないか?」


「分かりました。レオ君にあそこまで言われたら、認めるしかありませんしね。」


(よっしゃぁーー、これでこの町を自由に変えられる!)


叫び声を我慢しつつ、父さんとフィリップさんにお礼を言った。これからが僕のビッグビシネスの始まりである。




 フィリップさんの誕生日会が終わるとすぐに、ジューサーの商品化を進めることにした。主に、ジューサーの値段、生産量、販売先などである。


「レオ君、何か案はあるのかい?」


「はい、もちろんです。」


僕には妙案、いや神案があった。今までとは比較にならないくらい、スゴいものである。これがラルクさんとの約束をも守ることに繋がる。


「じゃあ、教えてくれるか?」


「分かりました、フィリップさん。」


人前で何かを話すのがワクワクすると思ったのは、何年ぶりであろうか。興奮で声が大きくならないようにしながら、僕の考えた計画を話し始めた。




《ジューサー売買計画》

材料:(わら)細工の鍋、魔力

生産数:10個/日   値段:3万ウィーズ(約3万円)

①ヴァイパー侯爵に配ってもらい、知名度を上げる。

②ヴァイパー侯爵内で販売してもらう。(売上の一部を納めることも考慮。)

③売上で、領内の問題点を解決する。

 ・お店に支援金を出して、物価を沈静化する。

 ・新しい農具の購入して、自給率を上げる。

 ・設備を充実させる。(例:魔物除けの柵)




「レオ、よく考えたなぁ。」さっきまで大人しく座っていた父さんが、いつの間にか僕の目の前にまで来ていた。


「そうですね。本当に驚きました。」


「2人とも、ありがとう。」


「それで、レオ君、材料はどうするんだ?こっちで発注しておこうか?」


「いえ、発注先はもう決めています。そこまでが、僕()()の計画ですから。」


「どこだ?」


「孤児院と無職の人にです。」


「そんなことをして大丈夫なのか?その...何だ、品質とかは...。」


前世にもこの世界にも、全く同じものがある。そう、差別だ。この世界では、身分が貴族、平民、孤児・無職に暗黙の了解で分かれている。その中でも、特に差別を好むのは貴族である。貴族は公爵、侯爵、伯爵、子爵に分かれていて、それぞれが自分より下の人を低く見る傾向がある。


この差別は、簡単に無くすことはできなそうだ。いくら賢く優しいフィリップさんでも、差別を完全にしない訳ではない。もう人々の中に、イデオロギーとして根付いているのである。


「問題ないですよ。最悪、形さえできていれば支障は無いですし。」


「そうだな、分かった。レオ君の言った通りに手配をする。オリヴァーも異論は無いな?」


「ああ、当たり前だ。うちの息子の計画に問題があるはずない。そもそも、レオは━━」


(ああ、また始まった。父さんの親バカが。)


僕とフィリップさんは、耳にたこ、いや耳に腫瘍(しゅよう)できる前に、早々に退散することにした。あとは、母さんがどうにかしてくれるであろう。

ジューサー(ジュースを作る道具)が完成しましたね。これは、いかほどの金脈になるのでしょうか?


まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。

もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。

今後とも八咫烏をよろしくお願いします。

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