12、人生と父さんと
毒魚に『無毒化』の付与を始めてから、1週間が経ったある日、僕は突然倒れてしまった。そして、気付くと、僕の部屋で寝ていた。しばらくすると、父さんたちが来たので、朝食を作ってもらうことにした。
「レオ、朝食は食べられたか?」
「うん。もう体調は全快だよ。」
「どうして倒れたのか教えた方が良いか?」
「そうだね。またこうなっても嫌だから、頼むよ。」
「レオを診察した医者によると、魔力の使い過ぎたことと、疲労が溜まったことが原因らしいよ。特に、魔力の使い方については注意を受けたよ。」
「魔力の使い方か...。具体的にはどんななの?」
「まず、魔力がほとんど無くなるまで使わないこと。次に、魔力が溜まっていても、何週間も連続で使わないこと。この2つが主なことかな。」
「ふーん、今度からは気を付けるよ。」
「こういう事が重なると、後遺症が残るらしいから、頼むよ。」
「うん、分かった。ところで、毒魚を持ってきてくれない?今日は気分が良いから、付与をしたくて。」
「ダメだ!」
「えっ、どうして。3日も寝てたんなら━━」
僕が台の上にあったミカンを取って、液化を付与しようと、手のひらをミカンに向けた。その時、僕の右腕が強い力で掴まれた。びっくりして、後ろを振り返ると、いつもとは違う父さんがいた。
「と、父さん...?」
「おい、レオ。今、何をしようとした?」
「ミカンに付与をしようかと思って...。」
「今、何て言った?もう1回言ってみろ!」
いつもとは違う父さんの口調に気後れしたが、辛うじて答えられた。
「ミカンに付与を━━」
その瞬間、バチンッという音と同時に、僕の右頬に鋭い痛みが走った。ジンジンする痛みを堪えつつ、父さんを見ると、色々な感情が籠っているような顔をしていた。
「レオッ!父さんがさっき言った事を覚えているよな!」
「はぃ。」
「だったら、どうして付与をしようとする!レオなら、そんなことすぐに分かるだろ!」
「でも━━」
「倒れるまで気付かなかった俺に言う資格は無いが、すごく心配したんだぞ!俺だけじゃなく、母さんも!俺たちの気持ちが分かるか?」
「付与の練習をしたくて。だって、『無毒化』の付与もしないと...。」
「誰もレオが犠牲になることなんて望んでないんだよ!」
父さんのその言葉を聞いた時、僕の体に稲妻が走ったような気がした。僕は決して忘れてはならない大事な事を思い出した。
今の僕は、ブラック企業で働いていた前世と、同じではないだろうか。目標を目指さず、ただひたすら闘牛のように突っ込んで、ドンドン傷ついていく。このままでは、転生した意味がない。
「父さん、ごめんなさい。僕が間違ってたよ。自分をもっと大事にしないとダメだったね。」
「いや、その...父さんも言い過ぎたよ。強く口調で悪かったな。」
「気にしてないよ。いくら人生ガチ攻略中でも、僕が間違ったことをしたんだから。」
「...ん、何て言ったんだ?」
「あ、いや。皆のために頑張り過ぎたなあって。」
「ああ、そういう事か。じゃあ、父さんは仕事に戻るから、大人しくしておいてよ。付与はあと3日間は禁止な。」
「分かった、約束するよ。」
「シア、ミア。レオの世話を頼んだよ。」
「旦那様、分かりました。お任せください。」
(相変わらず、この2人は同じ言葉を同じタイミングで話せるんだな。ここまで来ると、本当に匠の技だよ。)
僕が人生についての考え方を改めてから1週間が経った頃、大規模討伐が予定より早く終わったヴァイパー侯爵から、追加の救援物資が届いた。これで食料問題は解決しただろう。
その頃、僕の領内では麦踏みが始まった。うちの領内では、二毛作を2年周期で行っている。トウモロコシ(夏)→大麦(冬)→インゲン(夏)→ライ麦(冬)の順で育てている。
1日に付与できる回数が減ってしまったので、他の事をすることにした。僕もそろそろレベリングを始める時期である。よって、武器を作ることにした。
(僕は付与術師だから、遠距離攻撃が主体かな。)
(あっ!クロスボウなら、ちょうど良いんじゃないだろうか。)
クロスボウの構造や使い方を思い出してみた。何回かパソコンで見たことがあったような...。
(矢を撃ったら、弓を引いて......あ!2歳児が弓を引けないよな...。)
(何かないかな。簡単に装填できて、簡単に撃てるもの......うーん......銃みたいなものの方が良いのかな。これなら、弾、いや矢を入れるだけだし。)
前世にあった色々な銃を思い出してみた。
(火薬は貴重だしなぁ。)
(...あ、そういえば、空気銃なんてのがあったな。)
(試しに作ってみるか。)
ここは、異世界で魔法もある。つまり、空気銃の1丁や2丁なら、簡単に作れるはずである。まずは、家の裏に積んである薪を削って、空気銃の外枠を作る。
「軽量化Lv3、鋭利化Lv1を付与。」
(やっぱり、2歳児にとって工具は重いし、力もいるから、仕方ない。)
薪を削り始めた。こう見えても、僕は工作が得意なのである。前世では、たまに使った隠し芸の1つである。得をした記憶は無いが...。
(よし、外枠はできたぞ!)
「軽量化Lv3、頑強化Lv4を付与。」
(ここを固定して、弾は家にある爪楊枝を。)
「肥大化Lv2を付与。」
弾も本体もできたので、あとは空気の詰め方だけだが、これは簡単。この世界で、僕はある1つの発見をした。空気は手で持てるのである。
空気に圧縮化をかけると、一定時間だけ空気が固形になってくれる。これを銃の後ろの所から入れ、前から爪楊枝弾を入れれば、完成。
(試し撃ちだな。なんか、すごく緊張するな...。)
周りに人がいないことを確認する。息を吐ききってから、しっかり目標を狙う。そして、トリガーを引く。この空気銃の仕組みはこうだ。
①圧縮されていた空気が、これの入った部屋に圧力をかける。
②トリガーを引くことで、圧縮した空気が入っている部屋の前にある、円板のロッ
クが外れる。
③空気の圧力に押されて、円板が前に飛ぶ。
④これにぶつかった爪楊枝弾が発射する。
シュッ...タッ
ダーツの矢を的に当てた時のような、心地よい音が響いた。
⑤円板の位置を戻す。この時に、自動で円板がロックされる。
⑥爪楊枝弾を銃の前から入れる。
⑦圧縮した空気を銃の後ろから入れる。
⑧圧縮した空気がすぐに気体に戻り、①の状態になる。
この空気銃の構造から考えると、一度に複数発が出すことも、十分可能である。
レオは武器として、空気銃を作りましたね。これの性能やいかに。
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあればアドバイスしていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。




