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6

「今度はどんなひどい人間にして、新しい噂を流そうかと考えていたときに、陛下からの命が届いた」



「クスッ。新しい噂も聞いてみたかったです」



カレニナがおかしそうに微笑んだ。



「『女嫌い』で効果がないなら、『男が好き』とか『変な趣味がある』とか、趣向を変えてみようかと思ったりしたが、ピーターに『それではさらに申込みが来るようになりますよ』と言われて考え直した。」



「クスクスッ。

それはその通りですね。

ローラン様、おもしろすぎます」



そう言われてローランも笑いだし、ふたりは声を出して笑ってしまった。



「きっと、ローラン様のように超越した美しさは、媚薬のように周りの人を惑わせてしまうのかもしれませんね。

もっとも、ローラン様が不愉快になるような行いは、決して許されることではありませんけれど」



カレニナが唇をキュッと引き締めて頷いた。



「クスッ。陛下には感謝だな」



「なんのことでしょう?」



「いや、こっちの話だ」



ティーカップが空になったのも気づかず話していたら、執事のピーターが声をかけた。



「温かいお茶を淹れ直して参りましょうか?」



そう言われて、ずいぶん長く話していたことに気づいた。



「あぁ、いや、もうそろそろ部屋に引き上げるとしよう。カレニナもゆっくり休むといい」



「はい。

では、おやすみなさいませ」



「あぁ、おやすみ」



廊下に出ると、控えているエミリーの笑顔があった。



「長く待たせてしまってごめんね」



「いいえ。旦那様とご一緒にお過ごしになる時間は、長ければ長いほど使用人には嬉しいのです」



「そうなの?」



「はい。仲良しご夫婦のお邸はあたたかいですから」



エミリーの言葉が、ちょっぴりくすぐったかった。




カレニナは部屋に戻り、入浴を終えると、1日の疲れがどっと押し寄せた。


エミリーが髪をとかしている間も、瞼が重くなってくる。



「奥様、どうぞお休みください」



「ありがとう、エミリー」



カレニナはベッドに横たわると、瞬時に眠りについた。



「こちらのベッドでよかったのかしら…」



エミリーの呟きにも、カレニナは気づかなかった。




翌朝



「おはようございます、奥様」



横になったまま微睡んでいたカレニナは、エミリーの声で半身を起こした。



「よくお休みになれましたか?」



「えぇ、ぐっすりねむれ…


…えっ?」



カレニナは、自分の夜着を見て目を丸くする。


薄手の素材で、レースがあしらわれている部分以外は、かすかに肌が透けていた。



「なんか…すごく艶っぽいわね…」



言った瞬間、ハッとした。



…そっか。初夜だったのよね…



「はい。肌触り抜群ですよね?それに、いつもの奥様より艶かしく見えます…ふふふっ」



「エ、エミリー、からかわないで」



慌ててベッドからでると、急ぎの用事もないのにエミリーを急かせて身支度を整えた。



「お食事の時間になりましたら、お声がけいたします」



「待って。私も一緒にいいかしら?キッチンを見てみたいの」



「はい、それは構いませんが、何か気になることでも?」



「ううん、そうじゃないの。お料理しているところが見たいの」



エミリーに案内されて、カレニナはキッチンに向かった。

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