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お茶会の朝、ローランと一緒に食事を済ませ、身支度のために自室に戻ろうとしたら、ローランに引き止められた。



「カレニナ、ちょっと一緒においで」



笑顔でカレニナの手を繋ぐと、廊下を歩き出した。



「お茶会の手土産は何にしたんだい?」



ローランが隣のカレニナを見つめると、



「クッキーを焼きました。ご自宅にお持ち帰りいただけるように、人数分を包んであります」



「カレニナが焼いたのか?」



「はい」



少し気落ちしたかんじのローランに、



「ローラン様の分もご用意しましたので、お仕事の合間にお召し上がりくださいね」



それを聞いたローランの表情が明るく変わり、



「そうか。私のもあるのだな。楽しみだ」



「ローラン様、かわいいです」



カレニナはローランを見上げてからかった。



「コホン…

かわいいのはカレニナだ」



ローランは照れた様子で視線をそらした。



執務室の前で止まり、ローランが中に入るように促す。



「渡したいものがあるんだ」



「なんでしょう?」



ローランは机から箱を取り出すと、カレニナの前に立った。



「これを…。今日に間に合って良かった」



カレニナが箱を開けると、揃いのネックレスとイヤリングが入っていた。



「まぁ!とても素敵!」



カレニナの青い瞳と同じ色の宝石が、花形の金の枠にはめ込まれ、小さな蝶があしらわれている。


イヤリングは金の蝶に、小さな青い宝石がついていた。



「気に入ってもらえるといいが…」



「ありがとうございます。とてもうれしいです!」



笑顔でローランに伝えると、嬉しそうな微笑みが返ってきた。



「さぁ、行っておいで。

あとで迎えに行くから、楽しんで来るといい」




執務室を出たカレニナは、自室に戻ると、エミリーたち侍女の手によって着飾られていった。 


薄いブルーのドレスに、ローランからもらったネックレスとイヤリングを着ける。



「奥様、お綺麗です!輝くほどに美しいです!」



エミリーが声をあげる。



「大袈裟よ、エミリー」



恥ずかしそうにカレニナが言うと、



「いえ、大袈裟ではありません。

旦那様にも引けをとらない美しさです!」



「エミリーったら…。

私が旦那様に敵うわけがありません。

でももし、エミリーの言うように美しくなれたのなら、それはあなたたちの腕がいい証拠ね。

いつもありがとう」



カレニナが侍女たちに礼を言うと、エミリーが、



「そんな…。私たちは奥様にお仕えできて幸せです」



他の侍女たちも頷いている。



「ありがとう、みんな。


さぁ、出掛けましょうか」



カレニナはエミリーと一緒に、ウエルト公爵夫人として、初めてのお茶会に向かった。




「本日はお招きいただきありがとうございます」



主催のリーボン公爵夫人の出迎えを受け、カレニナは部屋に案内された。



「まぁ、ウエルト公爵夫人。

とてもお美しいですわ」



「ドレスの色と瞳の色、アクセサリーまで綺麗なブルーで揃えて素敵ですわ」



「アクセサリーは公爵様から?」



「はい」



「とても似合ってらっしゃるわ。

さすがに公爵様ですわね」



数人の客から歓迎を受け、お礼を言って席についた。


招待客はカレニナを含めて7人。

皆、若いご夫人ばかりが集まった。


始めは自己紹介がてら、趣味の話に花が咲き、次いでそれぞれのご主人の話になった。



「最近では狩猟に熱が入り、私などいつも留守番ですわ」



「先日、誕生日にプレゼントをいただいたのですが、私の趣味ではなくて…」



等々、ご夫人がたの愚痴大会が始まった。



「それに引き換え、ウエルト公爵様は見ているだけで心が華やぎますわよね?」



カレニナに視線が集まる。



「えぇ、そうですね。

輝くほどにお美しい方ですから」



頬を染めてカレニナが答えた。



「まぁ、羨ましいですわぁ」



全員が声を揃えてカレニナを羨ましがった。



「そういえば、先日、大変な事件に巻き込まれたそうですけれど、大丈夫でしたの?」



…きたっ!ついにその話題ね…



カレニナが心の中で覚悟を決めた。



「はい。お騒がせしましたが、私は大丈夫です」



カレニナは笑顔で答えた。



「たしか、ドレナー侯爵家のご令嬢が、あろうことかパーティーの最中に、控え室でウエルト公爵様を誘惑していたとか…」



「暴力を受けたと聞きましたけど、お怪我は良くなられたのですか?」



「不貞の現場に乗り込んだなんて、勇気がありますわぁ」



どれも真実ではなかった。



…噂ってこわい…



覚悟はしていたけれど、事実ではないことがまるで本当のことのように広まっていることに、カレニナは驚きと怖さを感じた。


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