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「カレニナは、剣術のことを知られるのが恥ずかしいのか?」



ローランに尋ねられて、一瞬考えてから、



「いいえ」



カレニナははっきりそう答えた。



「たしかに、お母様やお姉様からは『貴族の娘が剣術など、はしたない』と言われていましたが、私はそう思ったことはありません」



「カレニナがそう思っているなら大丈夫だな」



ローランが微笑む。



「ですが…」



カレニナがふたたび表情を曇らせる。



「実家にいたときと今では、状況が違います。

私はローラン様の妻で、公爵家の女主人です。そんな私が、淑女らしからぬ振る舞いをしたことが知られたら、ローラン様にご迷惑をおかけしてしまいます」



今にも泣き出しそうな顔で俯いてしまったカレニナを、ローランが抱き寄せた。



「前にも言ったが、剣術ができることは素晴らしいことだ。それが淑女らしくないというなら、それでよい。

迷惑だなんて、そんなことは気にするな」



「でも…」



「カレニナ、私の気に入らないところはどこだ?どんな些細なことでもいいから、改めてほしいところがあったら、言ってみてくれないか」



抱いていた腕をほどき、突然ローランが言うと、



「ローラン様の嫌なところなんてありません!」



カレニナは強く否定した。



「私が一緒でなければ外出できないとか、庭をひとりで散歩もできないとか、私をうるさいと感じることもあるだろう?」



「いいえ。

私はローラン様のお気持ちが嬉しいのです。私を心配してくださっていることがわかりますから」



強く否定したカレニナに、



「きっと世の中のご夫人の中には、そんなことをされたら嫌だと思う人もいるはずだ。

でもカレニナは、私が君を思ってそう言っていることまで考えて、ありがたいと言ってくれる。

私もそれと同じだ。


世の中には、夫の言うことに大人しく従うのが、淑女であり妻の役目だと思っている男もいるだろう。でも私は違う。どんなことをしても、何を言っても、それがカレニナだ。私はそのすべてを愛しいと思えるんだ」



「ローラン様…」



「誰に何を言われても何も気にならない。私にはカレニナだけだ。

君が傍にいてくれることが、私の幸せなんだ」



今度は、カレニナがローランに抱きついた。


突然のことにローランは驚いたが、すぐに笑顔になって強く抱き締めた。



「君から抱き締めてくれるなんて、こんなにも嬉しいものなんだな」



ローランに抱きつきながら、



「ローラン様が大好きです。ずっとお傍においてください」



「あぁ、カレニナ…」



ローランがカレニナの瞳を見つめて、ほんのり赤く染まった柔らかな頬に口づけた。



立ち上がってカレニナを抱き上げたローランは、ベッドの真ん中にカレニナを下ろすと、



「愛している」



そう言ったあと、

カレニナの小さな唇に何度も何度も口づけ、ひとときも放すことなく、情熱の中に誘った。

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