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翌日から数回に渡って、事件関係者の事情聴取が行われた。


『怖い思いをしたのに、また思い出さねばならないのか』と、ローランはご立腹。


心配してくれることが嬉しくて、それだけでカレニナの心は救われる気がした。



事件は、ローランと親密になりたくてカレニナを陥れようとしたプリメーラが、人を使って悪事を働いたということで事態は収拾した。




その一件以降、ローランのカレニナに対する過保護ぶりには、執事のピーターや侍女のエミリー他、邸の使用人皆が驚いている。


庭で花の世話をするだけなのに警備係を向けたり、バルコニーにひとりで出てはいけないと言ったり、買い物は必ず一緒に行くと言って引かなかったり…。


どれほど自分のことを大切に思ってくれているかということが伝わってきて、カレニナは嬉しかった。


そんなローランが愛おしくて堪らなかった。




ある日、カレニナの元にお茶会の招待状が届いた。


先日のパーティーの後、何通か招待状が届いている。


実家にいた頃は、噂のせいで社交の場から遠ざかっていたため、お茶会の誘いなどなかった。


ローランといたことで注目された上に、あの事件。


噂好きの貴族のご夫人たちから、事件のことを聞かれるのだろうと思うと、招待を受けていいものやら考えていた。



ローランに聞くのは違う気がして、執事のピーターにそれとなく尋ねると、



「たしかに話題に上がると思います。あまり楽しくない時間にはなるかと思いますが、事実を奥様ご自身から、お伝えしておくことも大事かと思います。」



冷静にそう言った。



「そうね。

ありがとう、ピーター。

このお誘い、お受けしてみるわ」



久しぶりのお茶会のお誘いに、少しだけ不安を抱きながらも、カレニナは勇気を出して行くことにした。



その日の夜、

カレニナが寝室に入ると、ローランはいつものようにベッドの端に座っていた。


ローランは、自分の隣をポンポンと軽く叩くと、カレニナに笑顔を向けた。


夜着に着替えたローランは、髪をタオルで拭いたまま整えておらず、それがまた少年のようでもあり、いつもと違う魅力を漂わせていた。


カレニナはローランの隣に座ると、



「ローラン様の魅力の引き出しは無限ですね」



カレニナが頬を染めながら呟いた。



「ん?

なんのことだ?」



前髪をかきあげながら問い返すその様は、また別の魅力に溢れている。



「ピーターから聞いたのだか、茶会に誘われたって?」



「はい。

お受けしようと思うのですが…。

あの、

ローラン様は反対ですか?」



「カレニナが決めたなら、何も言うことはない。

ただ…」



「ただ…?」



「心配だから迎えに行く」



「えっ…!?

ローラン様が?」



「嫌か?」



「嫌ではありません。

心配していただいて、うれしいです」



「茶会の席で、たぶん…いや、確実にこの間の事件の話が出ると思うが、辛い思いをするのではないかと心配なんだ」



ローランが眉を寄せて、カレニナの手を握った。



「私もそう思ったのですが、憶測だけ独り歩きして、また噂が広まっても嫌なので、私から事実をお伝えしておこうと思ったのです。」



「そうか。

カレニナがそう決めたのなら何も言わない。

だが、犯人を追いつめたのもカレニナ自身だと言えば、剣術のことが知られてしまうぞ」



「あっ!」



カレニナは思わず目を丸くした。



「そこまで考えておりませんでした」



今度はカレニナが眉を寄せて、ローランを見つめた。

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