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ローランとの穏やかな日常が過ぎていき、王宮でのパーティー当日になった。


国を挙げてのお祭りの日とあって、朝から市中の賑わいを感じる。


いつものように、ローランの腕の中で目覚めたカレニナは、

いつものように、ローランの美しい寝顔を見つめた。



…毎日見ているお顔なのに、どれだけ見ていても飽きない美しさ。

これはもう、国宝級ね…



「穴が空く」



突然ローランが囁き、



「ひゃっ」



カレニナが声を上げた。



長い睫毛が弧を描くように、ローランがゆっくり瞼を開けた。


緑の瞳が青い瞳を見つめ返す。



「おはよう」



「お、おはようございます」



「あまり見つめるな。その美しい青い瞳で見つめられると、冷静でいられなくなる」



そう言って、カレニナの首筋に顔を埋めた。



「ロ、ローラン様!?」



抱き締めていたはずの腕がほどかれ、ローランの手のひらが、カレニナの腰の稜線を辿る。


ローランは、カレニナの首筋から頬にかけて、音をたてながらキスの雨を降らし、最後に小さなかわいい唇を奪った。



「はぁ…。

手放せなくなりそうだ」



艶を帯びた美しいローランが、名残惜しそうに腕の力を緩めた。



「そのお顔、ダメです」



頬を染めたカレニナが、小さな抗議の声を上げた。



「それは私のセリフだ。

そんな顔をされたら、寝室から出られなくなりそうだ」



仕方なく起き上がると、ローランが名残惜しそうに、続き部屋の自室に姿を消した。





朝食をすませると、ローランは午前中だけ仕事をすると言って、執務室に向かった。


カレニナは、エミリーをはじめ他の侍女たちと、パーティーの身支度の打ち合わせ。


若い女性が数名集まれば、その場はさながら女子会と化す。


話題の中心は、やはりローランの麗しい姿。


毎日、あの美しさを目にしながら仕事ができる自分達は、世界一幸せな使用人だと、頬を染めている。


その隣にカレニナが立つと、完璧な美男美女カップルになって、絵画のようだと褒められて、カレニナは居心地が悪くなった。


時折笑い声を上げながら、賑やかに時間は過ぎていき、パーティーでの装いも決まった。



「そろそろ、昼食でしょうか?

今日は少し早目にご用意すると、デイブさんが言っていました」



「そうなのね。

あまりたくさんいただいて、体が重くて上手くダンスができなかったら、ローラン様の足を踏んだりして大怪我をさせてしまうわね」



「奥様ったら。


ご心配なさらずとも大丈夫です。


旦那様はお強いですから」



ふたたび、ローランの称賛合戦になりそうだったが、



「下心見え見えのご令嬢たちに囲まれてしまったときは、流石の旦那様も揉みくちゃになって、装いが乱れてしまったと聞きました。


あの勢いには、屈強な男でも抗えないと、周りの方たちも同情されていたそうですよ」



「そうだったのね」



…ローラン様自ら、あんな噂を流すほどに、嫌な思いをされたのね…



カレニナは、その様子を想像して表情を歪めた。



「特にしつこく纏わりついていたのが、ドレナー侯爵家のプリメーラ様です。


奥様、このお方…ちょっと…」



「なに?」



「おやさしくない…と言いますか…」



「ちょっと難ありなのね」



「はい。

奥様が不快になられないといいのですが…」



「心配してくれてありがとう。気をつけるわ」



笑顔でそう言ったカレニナの心に、小さな不安が浮かんだ。

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