応対者
ある夜。空から一隻の宇宙船が地球へ降り立った。
すぐに人々が駆け付け、代表者数名が彼らの翻訳機を介し、会話を始めた。それによると、彼ら宇宙人たちの星は大変高度な文明と技術を有しており、愛と平和をこの宇宙中に広めたいという。
全ての星、種族を友人、親のように愛す。友愛の輪。そのために無償で自分たちの発明を配って回っているとのこと。日々の暮らしに余裕があるとそのような発想に行き着くのだろう。
そして、その発明とは完全なるクリーンエネルギー。大気汚染除去機。万病に効く薬。長距離渡航可能な宇宙船、その設計図。他にも地球人にとって喉から手が出るほど欲しいものばかりであった。
……が、これらは悪用しようと思えば可能な代物。特に新エネルギーなどは兵器に転用することもできるだろう。その星の住人同士で争い合うだけに飽き足らず、宇宙に進出し、他の星々に迷惑かけては自分たちの責任問題。それに争いの火種になることが、単純に心が痛い。彼らはそんな心優しい種族なのだ。
ゆえに「あなたたちを試したい」と言った時さえも彼らは申し訳なさそうな顔をした。
自分たちが譲ったものを悪用しないか、みんなに分け与えるか、我々の目を見て誓えるか、この嘘発見器を前にしても同じことが言えるか。
その問いに代表者たちは答えた。「はい。我々は必ず約束を守ります」と。
その笑顔と嘘発見器の結果を見て、宇宙人たちは信用することにした。
こうして、彼ら宇宙人たちは地球から去った。
その宇宙船内。彼らはご機嫌な様子で通信装置をいじり、彼らの星、本部にこう報告した。
【地球人は皆、善良。平和を愛し信用に値する】
何十年か後。その報告に新たにこう付け加えられた。
【地球人、擬態が得意。騙すことに特化。そのように進化を遂げた種族。危険。最悪】
宇宙人に接触した国の代表たちとは政治家。それも世襲議員である。