仲間募集
視点が変わります。田中とロメの視点です。
冒険者ワークへの道のりは、2人にとっては繰り返される日常の一部でした。田中が思いを馳せる先は、遠距離攻撃の得意な新たな仲間の存在にありました。
「遠距離系の狙撃手とか来てほしいな」彼の口から漏れる言葉は、切実な希望と期待に満ちていました。
ロメの反応は明るく、期待感を隠そうともしません。「いいね!どんな子が来るのかな〜」彼女の言葉には、新しい仲間への興奮と歓迎の心が伝わってきます。
2人の名声は冒険者の間で波紋を広げており、その募集には驚くほどの541名が名を連ねていました。これは、最強の仲間補正のおかげなのでしょうか。その一人一人の経歴を精査していく作業は困難を伴うものでしたが、それは新たな仲間との出会いに直結する大切な作業でした。
田中の眼にとまった一人の候補者。そのプロフィールには何か特別な思い出が刻まれていたようで、彼は小声で独り言を漏らします。
「アシャル……」
その言葉はロメの耳に届き、「何か言った?」と、彼女は田中に問いかけます。
「いや、別に何でもないよ」
そう言って、田中はアシャルと書かれた候補者をピックアップしました。田中の記憶では、アシャルの天命は、勇者でした。その天命に相応しい強さを持つアシャルは魅力的でした。それをロメは見つめます。
「アシャルじゃん!こんな凄い子が応募してくれるなんて付いてるな〜」ロメの声は明るく、アシャルに対する期待と喜びがみなぎっていました。
田中の返答は、淡々としたものでした。「そうだな」彼の言葉には、ロメとは少し違った感情が込められていました。
ロメはそのままアシャルの推薦を強く訴えました。「アシャルは絶対採ろうね!」その言葉には、アシャルに対する純粋な期待が溢れていました。
それに対し、田中の心中は少し複雑でした。彼の脳裏には、アシャルと過ごした時間の思い出が蘇ってきました。レストランで楽しく過ごした食事の時間、お揃いの服を着て一緒に冒険に出かけた日々、勇者として仲間を連れて共に戦った熱い戦闘、そして――アシャルが彼の目の前で命を落とした瞬間。それぞれの瞬間が彼の脳裏を過ぎり、心を揺さぶります。
「次は必ず守ってみせる」その誓いと共に、田中はアシャルを採用することを決めました。この一言に込められた彼の決意は、ロメにも確かに伝わりました。
そして、ロメは、ミュエルという女性に目をつけます。ミュエルの天命は、人間の味方でいることでした。この天命に田中は、危機感を覚えますが、ロメは信用に値すると評価し、ここでも意見が割れました。
しかし、まさか自分が魔王になるなんて言い出せる訳もなく、最終的にミュエルを採用することになったのです。
これで田中たちは、勇者として最強のパーティーを形成したのでした。
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「よろしくね」赤髪のショートカットをなびかせ、天使のような笑顔を浮かべるアシャルの姿は、まさに彼女の名が示す通りの勇者。その鮮やかな髪色と彼女の輝く眼差しは誰を見ても魅了し、一瞬で心を掴んで離さない可愛らしさを放っていました。
「よろしくお願いします」次に前へ出てきたのは、ミュエル。白髪のショートカットが彼女の肌を一層美しく見せていました。人間の味方でいることを天命とする彼女は、まるで純白の雪のような清らかさを持ち、それが彼女の無邪気な魅力を更に際立たせていました。
「2人ともかわいいね!」ロメの声は、新たな仲間たちの可愛さに満足げでした。フィヨン公国の発展に貢献することを天命とした彼女の言葉は、温かさと期待に満ちていました。
「よろしく」最後に申し出たのは田中。その静かな声には、魔王、世界に名を残すことを天命とする彼自身の決意が響いていました。彼の視線はアシャルに向けられていましたが、アシャルにとって、今の田中との出会いは初めてのものでした。
彼らが選んだレストランは、心地よい灯りが温かさを誘うような場所でした。各々が好きなものを選び、自己紹介を始めました。
アシャルは、口いっぱいにオムライスを詰めながら言いました。「私は勇者として天命を受けたの。私には護衛騎士団が付いてるから、何かあった時に要請できるよ」その言葉は、彼女が持つ権力と責任を示していました。
ミュエルの目が広がりました。「それはすごいですね!」
田中はゆっくりと口を開きました。「俺は……世界に名を残すこと。だから、魔王を倒したいんだ」彼の視線は遠くへと向かっていました。その目には熱い決意が灼きついていました。
ロメは彼の言葉を静かに聞き、自身の思いを述べました。「私は、フィヨン公国の貢献に繋がればいいわ」
田中はアシャルが信じる政治信条、人間の価値を否定する思想を知っていました。それを思い出すと、前世で彼女がよく口にしていた言葉が脳裏に浮かびました。ーー「無理よ。だって、人間だもの」という言葉です。
ミュエルが次に口を開きました。「魔王を倒したいです」
ロメが頷きました。「それには同意だわ」
アシャルの瞳が彼らを見つめました。「みんな、私に着いてきてくれる?」
ミュエルとロメは一斉に口を開きました。「もちろんよ。勇者様」
田中はほほえみました。「もちろん」
それぞれの思惑が交錯する中、彼らの目的は一つ、魔王討伐に絞り込まれました。複雑な関係性が絡み合う中でも、その共通の目指す場所は同じだったのです。