この世界について
田中とロメは同盟を結んだ。ロメの掲げる宿命は、辺境の地フィヨンを発展させること。それに対して、田中の宿命は…
「田中。君の天命って何?」田中は口角を曲げて、その問いに答えました。
「俺か?世界に名を残すことさ。信じられねぇけどな」
ロメは微笑みを浮かべ、「難儀そうね。だけど、一緒に頑張ろうね」と静かに言いました。
月日は流れ、彼らはついに18階層まで到達。その名は冒険者たちの間に広まり、彼らは戦線の重要な力として数え上げられるようになりました。
だが田中の真の目的は、そこにあるものではありませんでした。「魔王になること」—それが彼に課せられた天命。その達成のためには、必要とあらばロメを裏切ることすらも辞さない覚悟が要されます。そして、未だ田中が知らない一つの事実。自身以外にも《天命:魔王》を持つ者が存在するということも今の田中には知るよしがありません。
「田中、新たな武具がほしいわ」
「いいよ、好きなものを選びな」
金に困ることのない田中は、20階層のボス、レザンエレと呼ばれるドラゴンから得たSSSランクの武具を選びだしました。
レザンエレの赤い両手剣、その刃は絶対零度の氷で作られ、平凡な剣を一瞬で粉砕するほどの強度を持つ。その刃からは、まるでドライアイスのように霧が立ち昇っています。
ロメはレザンエレの短刀を選んだ。その氷の刃は、まさに魔物を討つのに相応しい威力を放っていました。
二人は力をつけ、一層、冒険者としての力を増していった。だがその中で、田中はロメに嘘をついた。
「世界に名を残すために、俺は魔王を倒すつもりだ」
ロメはその言葉に一瞬、動揺を見せたが、すぐに深く頷いた。
「この世界の敵は魔王じゃないわ。本当の敵は、もっと深い闇にいる」
二人の会話は、とてもデリケートなものだった。田中のチート力—最強の仲間補正。だが、そのパートナーが誠実なのかどうかは定かではなかった。
ーーーー
視線は移り、佐伯とエテの二人へと向けられます。
彼らが飼育していたスライムやゴブリンから得られる莫大な収益は、彼らの生活を豊かに塗り替えていました。修繕を施された屋根は頑丈に、プロの手により内部は繊細にリノベートされました。
12000匹という驚異的な数のモンスターを管理し、その規模は前代未聞の大規模飼育場へと変貌していました。そんなある日、エテから新たな提案が出されました。
「新種のスライムを捕獲しに行かない?」
「まだスライムがほしいの?」佐伯は疑問を投げかけます。
「ゴブリン5匹でスライム1匹の世話をするのは、無理があるわ。賢いゴブリンたちはいつ暴動を起こすかわからないし」とエテはその理由を語りました。
エテが目指すのは、出現率0.001%という希少種、ピンクスライム。そのスライムは、ヴァイアレスドラゴンの武具を修復する際に必要なスライムボールを生産でき、1つが10万ミダという値がつくため、その自給自足が目指されていました。
フードとマスクで身を包み、冒険者の街、フィヨン公国に立つ冒険者の塔へと二人は足を運びます。
しかし、冒険者の塔は人間と魔人との間に深刻な対立を生んでいました。人間は自身の力を増すために塔でモンスターを狩り、レベルアップを図っていました。これは魔人の侵攻に備えるための抑止力でした。
だがその一方で、魔人たちは人間に怒りを覚え、その狩猟行為に反発し、人間への攻撃を開始していました。この悪循環は誰もが抜け出せずにいました。
更に、防衛アラームの問題も深刻化していました。魔人の襲撃を知らせるアラームが鳴り始めてから襲撃開始までの短すぎる間隔に、領民たちはより効果的なアラームを求めていました。しかし、それを作るには開発費が必要となり、その結果税金が増え、領民の生活は困窮していました。この無限ループが続いていました。何者かの計画によるものか、それともただの偶然かは、未だに定かではありません。
一方、佐伯とエテは共に狩りを開始します。エテの天使流の攻撃は、その速さと精度から目で追うことすら困難で、彼女の瞬きする剣は光の尾を引きながら敵を一掃しました。
同時に、佐伯もヴァイアレスドラゴンの片手剣を振るいます。剣から放出される爆風は敵を一掃し、その力は爆発的な破壊力を持つ砲弾にも匹敵するものでした。
二人の攻撃が見事に連携し、敵の群れは一掃されました。その圧倒的な強さと速さは、まるで嵐が吹き荒れるかのようで、あっという間に敵の群れは一掃されました。