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ゴブリンの復讐

ある日、突如としてスライム畑はゴブリンの大群に襲撃を受けました。ゴブリンたちは狂ったように鳴き響かせ、その意図は明らかでした。仲間を倒された復讐――それが彼らの目的でした。


佐伯とエテは、迫り来る脅威からスライムたちを守る使命を背負わされました。スライムたちは無邪気に鳴き声を上げており、彼らが即座の危機に瀕しているという自覚は皆無でした。


二人が畑へ駆け出ると、見渡す限りのゴブリン軍団が広がっていました。その数、なんと1万。彼らは円陣を組み、畑を完全に包囲していました。不利な状況はさらに悪化し、地の利においても圧倒的に劣っていました。


畑は谷底に位置しており、その四方をゴブリンたちが占拠。有利な高地からは、弓矢や魔法の攻撃が容易に行え、一方で佐伯とエテは谷底から這い上がるしかないという絶望的な状況でした。


「くそ、こりゃ手強いわね...」


「ああ、だがやるしかないだろ」


二人は重い空気を吹き飛ばすように、前へと歩き出しました。これから始まる戦闘は、彼らの冒険生活においても、一際困難なものとなることでしょう。


ゴブリン軍団は、一斉にスライムたちへ攻撃を仕掛けました。その数多の矢雨、無数の魔法の炎は、谷底に満ちたスライムたちに襲いかかります。空から降り注ぐ攻撃に、佐伯とエテの顔色は一瞬で青ざめました。


「これじゃあ...」


「終わりだ...」


二人の言葉が途切れたその瞬間、奇跡は起こりました。スライムたちが、攻撃を一切受けつけないのです。矢はスライム体内に吸い込まれ、魔法の炎はスライムの表面で消えていきました。そして、何が驚きであるか、スライムたちは逆に反撃に出たのです。


いつもはゆったりとした動きのスライムたちが、一斉にゴブリンたちに向けて突進しました。その速度、その迫力は、まるで水流に押し流されるかのようでした。ゴブリンたちはあまりの反撃の激しさに一瞬で足を止め、混乱が広がりました。


「スライムたち……」


「強くなったな、我々のスライムたちよ」


それもそのはず、佐伯とエテはスライムたちに良質な餌を与え続けてきました。スライムたちはその餌を吸収し、力をつけていたのです。それがこの時、戦いの形となって現れたのです。


スライムたちは、畑を突き破り、ゴブリン軍団を蹴散らしました。スライムたちの体内に吸い込まれたゴブリンたちは、しだいに力を失い、戦意を喪失していきました。ゴブリン軍団の一万は、スライムたちの無尽蔵のパワーによって、あっという間に打ちのめされたのです。


その後、ゴブリンたち1万はスライムの配下になりたいと申し出たため、佐伯とエテは1匹のスライムに対してゴブリン5匹で面倒を見る制度を考案しました。

これにより、佐伯とエテの仕事がなくなり、不労所得が完成したのです。


佐伯とエテは、ゴブリンにも良質な餌を与えました。その対価としてゴブリンの爪をもらうことにより、Win-Winの関係になりました。



ーーーー


物語の舞台は一転、2年前へと戻ります。視点も変わります。田中は、ある人物から厳しい言葉を浴びせられていました。


「またダメだったみたいね」


その人物、エテは少し舌打ちしながらも、田中に対して失望の色を見せていました。これが二度目の失敗。田中は身も心もボロボロになっていました。


「もう、転生したくない」


愚痴がぽつりとこぼれる田中に対し、エテは淡々と言います。


「人間には期待してないの。次は何のチートアイテムを使うのかしら?」


「AIには勝てない……奴らこそチートだよ」


「そうね。人間はAIに支配されたわ。その時点で、勇者が何人居ても変わらないのよ」


田中は地面に膝をつき、絶望の淵に立たされていました。しかし、彼の内にはまだ燻るような闘志があった。


「チートは、お金無限、仲間最強、モテまくる。この3つでいきます」


《田中にお金無限、仲間最強補正、モテ補正を追加しました。》


「あんたね、もっと考えなさいよ」


「俺はもう勇者をおりる。それだけだよ」


そう宣言すると、田中の周囲が光で包まれ、彼の2度目の転生が始まったのです。


転生した田中が真っ先に行ったのは、冒険者ワークで自身の天命を確認すること。目の前に表示された2つのメッセージは、彼の全てを覆すものでした。


《天命:魔王》

《天命:世界に名を残すこと》


「うそだろ……?」


自分の目の前のメッセージを見て、田中は疑い混じりの声を上げました。自分が勇者ではなく、魔王の運命を担うことになるとは、彼には予想もつかなかったことでした。


ーーーー


突如として田中の目の前に現れたのは、金髪のロングヘアに輝く瞳を持つ少女でした。彼女の名前はロメ。その優雅な姿は、まるで絵画から飛び出したような美しさを持っていました。


「私は、ロメって言うんだ。心情は、ゼファーを信仰しているわ。よろしくね」


そう彼女は田中に向かって微笑みながら言ったのです。その瞳は清らかで、優しさに溢れていました。彼女の魅力はその見た目だけではなく、言葉遣いや態度、彼女が放つオーラすべてに溢れていました。


ロメが信仰しているゼファーは、地方都市フィヨンの愛国主義者たちが崇拝する宗教の神です。この世界では、人間社会が政治や宗教によって深く影響を受け、それぞれの価値観が複雑に絡み合っていました。ロメもまた、そんな世界の一部を成す存在なのです。


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