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初めての戦い

「すまん、スライムアイテムの価格が下がってんだ。さっさと持って帰ってくれ」


ある日、闇市の魔族・イリサがスライムボールの売買を拒否。この事態により、2人の生計が危うくなりました。新たな収入源を見つけることが切実な課題となったのです。


2人は、ボロ屋の中で次の一手を考えていました。そんなとき…


「グァァアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」


耳をつんざくような轟音。ボロ屋の屋根が壊れ落ちる程の揺れ。エテは即座に、これが緊急事態であることを理解しました。


「佐伯!この鳴き声、新神ドラゴンよ!スライムたちが襲われちゃう!」


「行くぞ、エテ!」


2人は、愛する子供を守るような緊張感で外へ飛び出しました。だが…


「グッ……」


新神ドラゴンは、すでに死亡していました。


2人は、何が起きたのか理解できずに立ち尽くしました。そしてスライムたちが2人のところへやってきます。


「何があったの、みんな?」


エテがスライムたちに問いかけましたが、スライムたちはただ飛び跳ねるだけ。当然、彼らからの反応はないのです。


新神ドラゴンは、15階層のボス。カンストした冒険者たちでも狩りをするフィールドのボスが、なぜ1階のスライム畑で倒れていたのか、その理由は謎に包まれていました。


「これほど大きなドラゴンが本当にいるんだな…」


そんな2人の元へスライムたちがやってきて、何かを運んできました。エテはそれを見てつぶやきました。


「これ、新神ドラゴンが落としたの……?」


エテはスライムたちを撫でながら佐伯に説明しました。


「これ、新神ドラゴンが0.004%の確率で落とす武具の欠片よ」


「これ、闇市で売れるの?」


「もったいないけど、闇市で売れば2億ミダは確実にもらえるわ」


「2億!?」


エテによると、この欠片は3つ揃えばSSS級の武具になるらしい。通称・15階層のSSS級武具。その市場価格は闇市で9億ミダ(日本円で9000万円)は下らないレアアイテム。その欠片を2人は手に入れたのです。


そして2人は、それを闇市で売ることを決意しました。



ーーーー



2人は、2億ミダで防具と武具を購入しました。

4階層ボスーーヴァイアレスドラゴンの武具を2つ購入しました。


ヴァイアレスドラゴンの武具は歩くと刀から出るドラゴンの光が残像になり、その光が煙に変わります。


そして、いつものように闇市に行くと何やら街の様子がおかしいことに気付きます。


「あのー、何かあったんですか?」


エテが通りすがりの冒険者に尋ねました。


「え、知らないのか?23階が解放されたんだよ!23階解放に尽力した冒険者の凱旋が行われるんだ」


その言葉を聞いた瞬間、2人の目の前で凱旋が始まりました。街には強そうな装備をまとった冒険者たちが歩いています。周りの人々からは歓声が上がっていました。


その光景を見ながら2人は屋台でチーズドックを買おうとしていた時でした。空気が一変します。


突如、上空から黒い羽根を付けた魔王の配下ーーヴァラクとその部下たち舞い降りてきました。白銀のセンター分けは、韓流アイドルを連想させるほどの美貌のある男です。ヴァラクは不気味な笑みで冒険者たちを襲います。


「何これ、どういうこと?」


佐伯が驚く中、エテは冷静に分析しました。


「魔王の配下が街を襲撃しているわ。きっと彼らは23階解放を恐れているのよ」


佐伯は顔を引き締め、ヴァイアレスドラゴンの片手剣を引き抜きました。その刀身からは青く輝くドラゴンの光が残像となり、揺らめいていました。


「俺が行く。エテ、君は安全な場所で待っていてくれ。」


その言葉に、エテは眉をひそめました。「でも、あなた、ただの人間なんじゃない?勝てるの?」


彼女の心配に、佐伯はにっこりと笑いました。「やってみないことには、どうにも始まらないだろ。」


この短い会話の中に、二人の覚悟、信頼、そして深い絆が込められていました。これが、彼らの物語の幕開けとなる瞬間でした。


混乱する中、佐伯は固く口を結んでヴァラクの方へ進み出しました。自分の初戦がこれほどの強敵とともに戦うなんて、彼自身が最も驚いていました。


ヴァラクの冷たい目が佐伯を捉えました。


「レベル1の小物がよくもまあ、顔を出したな。面白い、お前を見せしめにしてやるよ」


ヴァラクは邪悪な笑みを浮かべながら、佐伯に向かって突進しました。目まぐるしい速度で、刀の先が佐伯の喉仏に迫ってきました。


「佐伯、下がるのよ!」


その時、エテが飛び出してきました。彼女が持つヴァイアレスドラゴンの片手剣で佐伯を庇い、ヴァラクの一撃を巧みに流してしまいました。


彼女の機転と技巧が佐伯を危機から救いました。


エテの手は、真っ赤に腫れていました。その手が示す痛々しさが、ヴァラクの攻撃の凄まじさを物語っていました。


「あんた、よそ見してる場合か!」


ヴァラクは追撃を仕掛け、その矛先は佐伯の目に向けられました。佐伯は瞬間的に目を閉じました。


「ビビってんのか?ウケるな」


佐伯が目を開けると同時に、彼の手に握られた片手剣が輝きを放ちます。空気が緊張に弾け、戦闘の熱が空間を包み込みました。


剣の軌跡は光の筋となり、ヴァラクに向けて振り下ろされました。しかし、ヴァラクは鋭敏に反応、一瞬で距離を取り、その攻撃をかわします。両者の攻防は瞬く間に展開され、空間には剣と魔力の閃光が散りばめられていきました。


佐伯は剣を横に振るい、ヴァラクの接近を防ぎます。しかし、ヴァラクは鋭い目を細め、次の瞬間、彼の位置が空中へと移動します。佐伯は上を見上げ、ヴァラクが一瞬で消えた後の空間を見つめました。


「上から来るわよ!」


エテの警告が響くや否や、佐伯は直感に従い、自分の位置からすばやく脱出します。その直後、ヴァラクが地面に落下、佐伯のいた場所に爆風を生み出しました。佐伯の一瞬の遅れがあれば、彼は今頃灰燼と化していたことでしょう。


「なかなかやるな!」


佐伯は剣を高く掲げ、ヴァラクに向けて挑みます。その瞬間、剣から鮮やかな光が放たれ、ヴァラクの方向に向けて疾風のごとく突進しました。攻防の緊張感と熱気はさらに増し、その爆発的な戦闘が周囲の空間を揺るがせました。


佐伯の手は限界を超えていました。皮膚はひどい火傷を負っており、剣を握る力さえも失われていました。これは、ヴァラクの呪いの作用によるものでした。


その事態に気づいたエテは、天使時代に習得した剣技――天使流を用いて、助太刀に出ました。


「佐伯、一旦後ろに下がって」


「すまない、エテ」


エテは華麗なステップを踏みながら、戦場に出ていきました。その動きは、まるでダンスのようにも見え、彼女が剣を振るう度に美しい軌跡が空間に描かれていきました。


彼女はヴァラクに対峙し、その巨体に向かって一瞬の迷いもなく突進しました。ヴァラクが振り下ろす魔力の一撃を、エテは天使流の剣技で切り裂いて見せました。その動きは、雷のごとく素早く、剣の閃光が周囲を照らしました。


「うっ、速すぎて目が追いつかない...」


佐伯の息もの言葉が、エテの剣技の凄まじさを物語っていました。エテは再び剣を振るい、ヴァラクの攻撃を次々と防ぎます。その一方で、彼女の反撃も次第に力を増していきました。


そして、エテがヴァラクの攻撃を防いだ瞬間、彼女の剣から強烈な光が放たれました。それは、まるで天使の光のように、その場を照らし、ヴァラクの巨体を翳しました。


「これで終わりよ、ヴァラク!」


エテの剣は、ヴァラクに向けて突き刺さり、強烈な光が彼の体を貫きました。エテの闘志と力が、その剣に集約され、その力強い一撃は、ヴァラクを完全に打ち倒すのでした。その瞬間、周囲の空間は一瞬の静寂に包まれ、次の瞬間、エテの勝利を称えるように歓喜の声があがりました。


《経験値200%ボーナス》

《佐伯は経験値400万を取得しました。》

《エテは経験値1000万を取得しました。》


《レベルアップ!佐伯はレベル51になりました。》

《レベルアップ!エテはレベル60になりました。》


ーーーー


月日は流れ、ヴァラクとの戦闘から既に一ヶ月が経過していました。佐伯とエテの日常は、辺境地でのゴブリン狩りへとシフトしていたのです。


ゴブリンたちは、10匹で1つの組み合わせを作り、前衛と後衛を組み合わせる戦闘スタイルを用います。人間以上に練度の高いその連携は見事なもので、時として損益を見極めた戦略的撤退を選択する知恵も見せます。これらの点から冒険者たちはゴブリン狩りに手を焼くことが多いのです。


今日もエテは、天使時代に習得した天使流の剣術を振るいます。彼女の剣は、闘争の渦中でも美しく、凛々しく舞います。ゴブリンの後衛から放たれる矢が迫り来ると、その矢を剣で華麗に弾き返す。逆に、矢を放つゴブリンに向けて剣から放たれる衝撃波が走り、ゴブリンは地に倒れ込みます。


一方、佐伯は、剣を振りながらも、エテのサポートに回る。ゴブリンたちがエテに集中する隙に、後方から攻撃を仕掛けます。スキル《風切り》を使い、ゴブリンの足元に風の刃を作り出す。ゴブリンたちは躓き、その隙にエテが追撃を加えます。


彼らの連携はまさに一体となって戦う戦士たちのよう。狩りが終わると、エテは疲労感を感じながらも満足そうに微笑む。それを見て、佐伯も心からの安堵感を抱きつつ、ゴブリン狩りの日々が続くのでした。


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