表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの世界 〜シーナの記憶〜  作者: Meeka
第一章 失われた記憶
22/91

8 知らなかった現実 ③

 数日が過ぎた。空模様は悪く、珍しく雨が降る日だった。正門からダランの敷地内に入ってくる生徒たちはローブのフードを被っていた。


 ダラン総合魔法学校の寮は学校の敷地内にあり、屋根のある廊下で校舎と繋がっている。したがって、シーナのように寮に住んでいる生徒たちはフードを被る必要はない。


 授業の教室に入ったシーナの周りには誰もいなかった。いつもそばにいたルアがいなくなったからだ。他の友達ももちろんいたが、別の人たちと並んで座っていたためにシーナは一人となった。


 教室に教師が入ってきた。(いわ)く、これから重要な伝達を行うとのこと。


 生徒たちは普通ではないこの雰囲気を即座に察知し、それぞれ速やかに席に着いた。


「先日の校外実習で問題が発生し、生徒の皆さんに大きな不安を感じさせてしまったこと、学校として深くお詫び申し上げます。さて、今後の授業についてですが、まず、校外実習の再実施は行いません。また、来年以降も行わないこととし、実質的に、校外実習は今年で終了ということになります。それと、もう一点、こちらの方が重要ですが、生徒の皆さんは、常にナイフを携帯するようにしてください。特に、魔法自体で攻撃できる火炎魔法と空間系魔術の方以外は、徹底するようにしてください。医療魔法の方も例外ではありません」


 教師は、それから、ナイフに関するいくつかの選定方法や注意事項などを簡単に述べ、教室を後にした。


 教室の内部は、再び生徒たちの話し声でいっぱいになった。


 シーナたちダラン総合魔法学校の生徒は、初等部の頃からナイフの扱いを多少学ぶこととなっている。中等部になれば、実習は魔法の実技がほとんどであり、ナイフや体術の授業は初等部のうちにほぼ終了する。このような背景から、ナイフを扱うこと自体はそれほど驚くことではない。


 一方で、常に携帯しろというのは、かなり新規的な話だった。というのも、シーナたちは、実習のときしかナイフを扱ったことがない。日常生活において食事以外で使うことはまずないし、そもそも非常事態に巻き込まれるということもなかった。それが、突然携帯することとされたのは、明らかに先日のカクリスの襲撃によるものだと理解できた。


 すなわち、ダランとしては、これまでは平和な世界を保っていたが、今後、いつどこで敵に襲われるかわからないから、自分の身は自分で守れるようになれ、ということだ。


 教師が言うには、数日内に全生徒分のナイフを学校が調達し、どこかのタイミングで配布するという。それ以降は、生徒からの申請があれば学校から支給するが、出先などでやむを得ない場合においてナイフを適切に選定することができるよう、今後の授業において詳しく説明していくとのことだった。先ほど説明されたのは、最初の配布までに急遽必要となった場合の、最低限の選定知識ということだ。


 物騒な時代になったものだ、とシーナは感じた。これまでの学校生活において、歴史の授業で過去の紛争等について勉強したことはあったものの、実際の戦闘という話は全くと言っていいほど出てこなかった。言い換えれば、戦闘に対して全く実感がなかったというわけだ。彼女たちの頭の中では、戦争といえば世界魔法戦争ほどまで遡るし、戦闘といっても、時折発生する小さないざこざ程度のものだと認識していた。


 しかし、数日前からは違う。実際に躊躇いなく魔法を使って攻撃してくるし、負傷する者、命を落とす者が出てくる。戦闘とは、そのように大切な人が突然いなくなるといった一面も持っているものだと、シーナは身をもって実感していた。




 休校日を含んだ四日後だった。実技の授業の冒頭で、例のナイフが支給された。シーナのようなコントロール系魔術専攻生はナイフのような何かしらの物がなければ全く戦うことができない。また、そうでない魔法属性であっても、すべての生徒が確実に携帯するようにと、改めて説明があった。


 支給されたナイフは二本ずつで、一本は腰のベルトに装着し、もう一本は前腕にベルトで固定して隠し持つとのことだった。基本的には腰のナイフを用いることとし、さらに必要であった場合には、袖から滑らせるようにもう一本を取り出すということだった。


 この、袖に隠して持つ方だが、シーナはあまり扱いが上手ではなかった。うまく使える人は「慣れれば簡単だ」などと豪語するが、彼女は未だに扱いに慣れておらず、時々滑らせたナイフを握れずに地面に落としてしまうこともあった。


 リリアなど複数の教師たちは、レッグホルスターを装着し、三本以上ナイフを携帯している者もいたが、生徒たちはまずは二本で十分だろうとのことだった。本来であれば、一本でも携帯していれば物騒な時代だ、と言われるべきなのだろうが、もう誰もそのように言う者はいなかった。


 実技の授業においても、単なる魔法の扱いではなく、実際の戦闘を意識したものが格段に増えた。


 また、この年から、スプラティーラに模擬戦闘も加えられることとなった。もちろん、本当に殺し合うのではなく、各々身に付けている腕輪を先に取り上げた方が勝ちというルールだった。

 いつもありがとうございます!

 ルーカス編(本編)で、ルーカスたちがいつもナイフを携帯している理由は、今回明かされました。

 今後もルーカス編にも繋がる秘密が明かされていきますので、ぜひお楽しみに☆彡


 引き続き、どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ