コソ泥と姫1
魔物が城に攻め込んで来るってんで、みんな逃げ出し、城はもぬけの殻。
誰もいない城で鼻唄を歌い、ご機嫌な様子で物色する一人の男。
男「フフン♪フン♪フーン♪タラッタ♪タラッタ♪タラララ~ン♪」
金目の物を探し、踊りながら部屋から部屋へ探し回る。が、出てくるのはガラクタばかり・・・
男「この城、ハズレだな・・」
溜め息を付き座り込むと、隣の部屋から物音が聞こえてきた。
男がドアの隙間から『そーっ』と覗き込むと、女が1人・・綺麗なドレスを着ている女は、急いで何かを探している様だ。
男『この女・・・どうやら、この城の姫だな・・』
男は、そーっとドアを開けると
男「姫!こんな所で何をしてるんです!早くお逃げください。魔物が押し寄せて来ます!」
姫「分かってるわ!でもアレを忘れて戻ってきたの!」
男「アレとは何です?そんな大事なモノですか?」
姫「母の形見の首飾りよ!」
男『母の形見の首飾り・・・なるほど、ダイヤにサファイア、宝石がタップリってヤツだな・・』
男「姫!私も一緒に探しましょう!」
姫「いいの、あなたは逃げて!私1人で探すから!」
男「イヤイヤ、そう言うわけには参りません。姫を1人置いて、ここから逃げ出す事など出来ましょうか!」
男も一緒に探し出す。タンスの引き出しを引っこ抜いてブチまけ、ソファやテーブルをひっくり返す。その様子を見た姫は手を止め、男に目を向ける・・・
姫「あなたは、どなたです?見慣れない顔ですけど・・・」
男「そうですか?私は城の者ですよ。それより、急がないと魔物が来ます!どんな首飾りです?」
姫は男の様子を眺め、しばらく考え込む・・
姫「分かった!あなた泥棒ね!逃げ出して誰も居なくなった所に忍び込む、火事場泥棒でしょ!」
男「何を言ってるんです。早く見つけて逃げましょう!」
姫「城の者なら知ってるはずよ!どんな首飾りなのか!」
男「知ってますとも。でっかい宝石の付いた豪華なヤツでしょ!」
姫「ほら、知らない!宝石なんか付いてないの、紙で作った首飾りだから」
男はピタリと手を止め
男「紙?紙って、鼻かんで捨てるアノ紙の事?」
姫「そう、色の付けた紙だけど・・」
男はガッカリ座り込む・・
男「はぁ・・ったく!とんだ貧乏城に来ちまったぜ!」
姫「ほら、やっぱりコソ泥だ!」
男「コソ泥じゃねぇ!大泥棒よぉー!」
男は腕を組み、大物ぶって姫を睨み付けた!が、姫は相手にせず、また探し始める・・・男は姫の注意を引こうともう一度。
男「俺はコソ泥じゃねぇぞ!大泥棒だぞ!・・・オ・オイ、聞いてるのか?」
姫「聞いてない!」
男はイジケタのか、寂しそうに寝転がった・・・