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私の魔王様  作者: 龍崎 明
序編 魔王再臨
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7.魔宮

 それから我は様々な魔術を覚えていった。


 魔力を薄く固めることで刃を形成する【魔刃(エッジ)】。

 魔力の弾丸を形成し魔力で射出する【魔弾(バレット)】。

 魔力を固めて手のように操る【魔手(キネシス)】。

 魔力の状態を解析することで対象の情報を得る【魔眼(スキャン)】。

 魔法を構成する魔力を散らすことで無効化する【破魔(ディスペル)】。

 

 その他、様々な魔術を覚え、遂に魔王としての役割に関わる最も重要な魔術を教授されるに至る。それすなわち、魔宮核の生成である。


「素晴らしい!流石はネモ様でございます。その手腕、その思考、まさにまさに救世主にふさわしき才覚!器!運命の申し子でございましょう!」


 リリスが興奮した様子で我を褒めそやす。どうやら本能的に行使できるとはいえ、我の霊力操作の巧さ、そして、異世界の知識に由来した応用する発想力に感歎しているらしい。褒められることに悪い気はしないが、おそらくこれは当然の結果だろう。精霊たちは神が創り出した存在で、さらに自然と純然たる意思という稀薄な意思で思考するようにできている。これでは強く想うことは難しいのだ。対して、我はそのほとんどが欠落しているとはいえ、生命であった頃、混然たる意思で思考していたのだ。これが純然たる意思でもその強度とでも呼ぶべきところを高めているのだろう。およそ偶然の結果。混然たる意思での経験が裏目に出る可能性もあったが、異界の魂を利用するという試みはこの点に関して成功したといえる。


「落ち着け、リリス。まだ、肝心なところを終えていない」

「!?……はっ、申し訳ありません。それでは魔宮核の生成についてご説明いたします」


 我の言葉に若干の羞恥心を覗かせながら、リリスは謝罪を一つすると何事もなかったようにその役割を再開する。


 魔宮核の生成であっても、まずやることは変わらない。霊力を操り、周囲の魔力を掴むことだ。そして、それを純粋な魔力へと変換。最も安定するカタチとされる球形に整える。平らな世界で、物理法則も異なるはずだが、それでも球形に落ち着く理由は不明だ。

 次に、球形に形成した魔力に我の霊力を注ぐ。そのままにしてもやがて、魔力に変質するだけであるが、その霊力を呼び水として、竜脈と接続。最後に、安定化させる。


「【魔宮核生成ダンジョンコア・クリエイション】」


 地に置き、魔術名でイメージを確かにすることで、それはあっさりと成功した。


 ぼんやりと輝く紫色の球体、魔宮核だ。機能は正常に稼働し、早速とばかりに周囲の魔力を吸収し霊力に変換している。


「成功でございます、ネモ様」

「あぁ、そのようだな」


 知らず互いが固唾を呑んでいたらしい。先ほどまでと異なり、静かに成功を告げるリリスの声がふわふわと曖昧に耳に入った。


 何はともあれ、この辺りは魔宮となったわけだ。


「それでは、ネモ様。続いて、環境設定の方に移りましょう」

「あぁ、それなんだがな」

「はい、なんでしょう?」


 リリスの進行に待ったをかければ、彼女は小首を傾げて我の意見を促す。


「環境設定は、大規模な変動を起こすため、大国に我のつまりは魔王の復活を悟らせる事態となるのではないか?」

「なるほど、確かにその通りでございましょう。今いる小国であれば、自然現象との区別はつけられぬでしょうが、大国であれば観測用魔法を開発しておりましょう。時間はかかりますが、この国への干渉も行われることでしょう。しかし、魔宮核の防衛のためにも環境設定は避けては通れないことでもありますが、いかがするのでしょうか?」


 我の懸念を肯定し、しかし、避けられぬことと言ったリリスだが、その瞳には我への信頼と期待の輝きがあった。


「我ももうしばらく時間が欲しいのでな。なに難しいことをするわけではない。大規模に活動できないのならば、小規模にやれば良いのだ。創成する魔物に環境を整備させれば良い。余計な機能を備えれば、戦闘力は落ちるだろうがその分は数で補おう。環境整備にも数は必要だからな」

「なるほど、魔物による環境整備ですか。確かに、知能の高い魔物であれば、魔宮の環境を自ら変化させることもあります。それを初動から目的に設定することで、隠密裏に魔宮を整えるのですね。現状に最適な作戦かと私も判断します」

「あぁ、では早速、魔物を創成してみたい。どのようにやれば良いのだ?」

「はい、ネモ様」


 リリスの賛同を得て、我は魔物の創成方法を尋ねた。リリスはどこか楽し気にそれを説明し始める。


 魔宮核に触れ、その霊力を僅かばかり汲み上げる。そこにある繋がりは維持したまま、魔力でそれを覆う。創成する姿、能力のイメージを明確に詳細に想起する。

 今回、創造するのは、昆虫だ。絶対的な縦社会、従順にして個の意思が薄弱な生態は数を頼りに戦うことに適した在り方だ。そして、鍾乳洞であるここを巣とするならば、地中に暮らすものがよかろう。羽は退化し、強靭な甲殻に覆われ、三対の肢、鋭い顎、敏感な触覚を持ち、頭部、胸部、腹部の三節に分かれた極めて単純な身体構造をしたその生物の名は、蟻。地球において、極めて小型の生物でありながら種類によっては人を食い殺したことのある自然の軍隊だ。


「【魔物創成モンスター・クリエイション】」

私事ではありますが、大賞に僅かな期待(と惰性)を胸に応募していますので、きりのよいところまで本日、駆け足更新いたします。

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