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私の魔王様  作者: 龍崎 明
中編 勇者選定
25/33

25.ミズホ

 馬車に揺られながら、我らは一路東を目指していた。


 魔王城を整えてよりおよそ半月。各地に散ったサバトたちの報告により、詳細な世界情勢を把握。

 各国家の保有する魔宮核と精隷石の数と場、早急に解決すべき魔力溜まりの数と場、そして、数少ない現存する魔宮の現状、その他細々とした情報を得た我が真っ先に着手することを考えなければならなかったのは、極東の島国ミズホにて未だ現存する魔宮、爀灼大社の防衛だった。


 他の魔宮は、そもそも人類の到達が困難か、一応の友好種族が治める地に存在する。しかし、爀灼大社があるのは、霊峰フロウの地下洞窟。活火山故に、熔岩溢るる危険地帯ではあるが、魔法を扱えば攻略し得る地にあった。


 その地を治めるミズホは、島国故の孤立性もあって精霊信仰を残し、魔宮に対しても比較的寛容な土地柄。爀灼大社という名も、ミズホの宗教的意味合いの強い霊場としてのものだ。

 しかし、帝国一強のこの時代。ミズホとてその孤立性を保つことはできず、帝国の魔宮攻略軍の駐留を許してしまっているのが現状であった。


 我の今回の目的は、その攻略軍を討つこと、そして、その後、万が一にも攻略されないための防衛戦力の拡充だ。


「陛下、もうすぐ到着でございます」

「そうか」


 馬車の向かう方を見れば、御者を務めるサバトの背とその先に広がる港町の景色があった。


「ようやく、ですか。飛べないというのは不便ですね」


 今回も同行しているリリスが愚痴る。その表情には、人類を警戒しなければならないことへの不満が見えていた。


 ミズガルズでの活動により魔王復活を世界は知った。リリスの隠蔽能力を疑うわけではないが、折角、魔王城に視線を誘導しているにも関わらず、万が一にも発見されれば意味がない。

 そのため、我らは人間に紛れて動くこととなった。隠密行動とあって、メンバーは最小限に、また、魔王城の備えとして、ベルトリンデとスカーレットは留守番だ。まぁ、ベルトリンデはまだ、本調子ではないのもあって結界構築で疲れていたのもある。


「そう言うな、直接に目で確かめることも必要だ」

「!はい、ネモ様。申し訳ありません、これはネモ様の警戒でありましたのに。それを忘れ、油断してしまうとは私の不徳の致すところでございます」

「よい、リリス。我も今回は過大評価が過ぎた。次は、飛ぶとしよう」

「寛大なる御言葉、感謝致します」


 我の言葉に対するリリスの反応は素早かった。本人からすれば、人類への侮りからくる言葉であったろうが、我の侮辱になると思い至ったようだ。気に過ぎではあるが、あまりストレスを溜め込まれても困る。適宜、対処しよう。


 その後、我らは何の問題も無く港町に入った。ミズホ行きの船を確保し、悠々と海原へと漕ぎ出した。




 船旅も快適に終わった我らはミズホの地に降り立った。


 そこに広がる光景は、どこか懐かしくも違和感のあるなんとも言えぬ町並みだった。


 木造家屋が立ち並び、黒髪黒目の人類が着物に似た衣類を纏う、その間を縫うように武装した人類が散見される。しかし、誰も彼もその面貌は彫り深く目鼻立ちはっきりしたもので、どこかのっぺりとしたあの童顔は見当たらなかった。


 細身の刀も数少なく、ほとんどは幅広の両刃剣だ。まぁ、これは魔物を相手にする上では仕方の無いことであろう。鉄程度では、細身の刀は強靭な魔物相手にはすぐに折れる。数少ない品は、魔鉱物を素材としているのであろう。


「どうされましたか、ネモ様」

「いや、どうということはない」


 違和感に眉をひそめる我に、リリスが目敏く気づく。それを軽く躱して、歩き出す。


 さて、どうしたものか。今回は街を襲う必要は無い。だが、その街にこそ目標となる軍がいるわけだ。


 こうなると、魔宮に侵攻してきたところを壊滅させるのが妥当か。しかし、軍である以上、後詰を地上に残すであろう。これを放置して問題にはなりはしないだろうが、帝国の戦力はなるべく削っておきたいところ。


 先に、魔宮に入って待ち構えるのでも良いが、思わぬ戦力がいないとも限らない。内部に潜入することで、万全を期したいところ。


 ふむ、まぁ、リリスの幻術があれば、大した苦労も無く達成可能だが、頼り過ぎれば万が一、彼女と分断された場合などに困ったことになる。


 やはりまずは、情報収集か。

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