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私の魔王様  作者: 龍崎 明
序編 魔王再臨
10/33

10.小鬼

同日連続更新。4話目

 翌日。我らは他の冒険者たちと同様に都市の外へと向かう。本来なら、G級冒険者という者は雑用依頼を熟し、人脈を築き先輩冒険者から気に入られるなりして活動の基礎を学ぶのだろう。まぁ、大国の都市のようなところであえば、最初から一定の実力を有した者が登録することもあろうから、我らの行動は地方では珍しい程度のこと。リリスの印象操作もあるし、作戦には一定の注目も必要であるから許容できるところだろう。


 都市近辺の森へと踏み入る。すぐに姿を見せるのは、小鬼と称される緑色の肌をした醜悪な小人ども、ゴブリンだ。先代魔王が安易な労働力として設計した魔物。指示を理解するだけの知能、小回りの利く矮躯、肉体労働に必須の見た目に見合わぬ膂力、そして、多数を揃えるための繁殖力。それら労働者として必要な要素のみで構成された怪人で、実際、先代魔王が存命の時には人類を支えるための奴隷だった。だが、彼らは、先代魔王が没し、その支配から逃れると一斉に反旗を翻した。当然と言えば当然で、労働力のためだけに作られた彼らに、人類の対応は酷いものだったのだ。醜悪な見た目もあって、感謝されることは皆無、それどころか汚物のような扱いだった。

 やがて、彼らは森林に隠れ住むようになる。与えられた知能と人類社会で生きた経験は、彼らに狡猾さを齎し、矮躯は、遮蔽物の多い環境で奇襲のために隠れ潜むことに高い適性を示し、高い膂力は、一撃必殺の奇襲の成功率を引き上げた。労働者としての要素が、暗殺者としての素質に代わり、人類に纏わりつく脅威の一つとなったのである。


「グギャ?」


 出会ったゴブリンは間抜けだった。我らは別に何か特別なことはしていたわけではない。その状態では、ゴブリンたちからすれば、我らは人類と変わらない存在のはずだ。まぁ、逆にこの個体が感知能力に優れている可能性もあるが、魔物であるゴブリンたちはいくら高い繁殖力を備えていたとしても、突然変異が全くの偶然で起こることはない。彼らは生物ではないのだ。遺伝子異常は起こり得ない。それでも、突然変異の可能性があるのは、肉体構成に使用した魔力に残留する意思がよほど強かった場合でしかない。意思に影響され、個体差が表れることになるのだ。


 さて、【魔眼(スキャン)】で確認する限り、彼は本当にただの間抜けのようだ。まぁ、別にそれでも問題はない。少し憐れに思う程度だ。


 我は、間抜けゴブリンの頭部に無造作に手を置く。


「ギャァ?」

「【従魔(ファミリア)】」


 ゴブリンを構成する魔力に干渉し、その支配権を我に書き換える。ゴブリンに変わった様子はない。


「里に案内しろ」

「ギャ」


 我の命令に肯定の意思を示し、マヌケは歩き出した。




「まぁ、これは……」


 リリスの感嘆なのか呆れなのか判断に苦しむ呟きを聞きながら、我も予想よりもしっかりと作られたゴブリンの里を睥睨する。

 それは、森の奥深く木造の家々が立ち並ぶ街といってもいい規模のものだった。彼らの矮躯に合わせて屋根の低いそこはどこかコミカルな印象を与えるが、そこに生きる数を知れば人類が抱く想いは恐怖と物欲の類であろう。ゴブリンたちは、人類を数で圧倒する怪物であると同時に、魔石を宿す資源なのだ。一般市民からすれば寝物語に聞かされてきた怪物の代表格、王侯貴族や戦士たちからすれば数が頼りの雑魚でしかない。


 人類どもの認識を改めて確認しながら、里の奥へと入ってゆく。いちいち【従魔】を掛けるのも手間であるので、【魔従波動(ファミリア・オーラ)】に応用する。周囲の魔物に無作為に【従魔】を掛ける魔術であるが、如何せん雑であるため、多くのゴブリンが肉体に不調を感じ跪いたような姿勢をとっていた。


 既に従属しているマヌケだけがピンピンしており、仲間の様子にどこか優越感を持っているように見えた。


 さて、従属させた彼らの役目であるが、そもそも魔物は積極的に生物を殺害して魔力を回収することを目的とした特殊な精霊だ。つまり、本来の役目を果たさせるだけである。


 我らが里の中心部に立つと同時に、地面の一部が徐々に盛り上がる。やがて、地下より穴を開けて現れたのは魔蟻だ。魔蟻の巣の魔宮核と接続して、ゴブリンたちの成果を徴収しようというわけである。問題は、ゴブリンだけでは到底、賄い切れないところであるが、まぁ、これはあくまで、ついででしかない。怪しまれない活動の仕方として森に入って、たまたまゴブリンを発見したに過ぎないのだ。魔力の回収は当初の案をやはり実行することとなる。


 それはともかく、侵略拠点として有用であるので魔蟻の建築能力を応用して要塞化しておくように指示を出しておく。実際に都市を観察して、完全に攻め滅ぼしておく必要性ができたためだ。大国へ渡る情報は、ゴブリンの氾濫としたいところだ。


 その他、細々とした確認をして、我らはまた都市に戻った。魔術で適当に生成した魔石を提出し、F級冒険者に昇格もしておく。木片が鉄板となり、魔石の報酬がそのまま会費として徴収された。なお、魔石はゴブリンと同等の代物だ。今日の活動でサンプルは確認できたため、質が高すぎて騒がれることもない。

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