僕からの贈りもの。
どうも、菜々美です。この小説は冬の童話祭2021への応募小説です。
主人公の女の子の名前は「葵」ちゃんです。前に投稿した、「サンタさんをさがしにいかない?」で、出てきた花奈ちゃんのお姉さんです。
ザク…ッ ザクッ…
「ハアッ、ハアッ」
雪を踏む音と、荒い息をする音。
葵は優等生でした。両親の言うことをよく聞き、その通りに動き、成績もいつも上位です。
葵の父、賢斗は村長でした。とても厳しい人ですが、その代わり、とても優しいです。
葵の母、翠は、美人でした。とても優しくて、葵は母を頼りにしていました。
葵の妹、花奈はとても美少女でした。村の男の子みんなの憧れです。
葵の祖母、真子は『語り』でした。抹茶の腕は酷かったですが、一緒に出てくるお茶菓子の腕は最高です。
葵は家族のことを愛していました。
でも、もう愛してなんかいません。
(大っ嫌いだ)
葵は雪を踏みながら思いました。
葵は家族を愛していました。
しかし、
家族はみんな、葵を愛していたのでしょうか?
父は葵を、村長をもっと威厳に見せるための道具に、
母は葵を、自分の優しさを周りに分からせるための道具に、
妹は葵を、自分をもっと可愛く見せるための道具に、
祖母は葵を、村の歴史を守るための道具に、
していたのではないでしょうか?
「もししていたなら、最低ね」
葵は鼻で笑いました。
葵は今現在、家出中でした。
葵を優等生だと思い、信頼してくれた両親が気づいたらどう思うでしょうか?
(そんなの、知ったこっちゃないわね、少なくとも、今の私は)
そもそもその信頼があったかどうかも、怪しいのですから。
だから葵は探していました。
何をとはいいません。でも、葵が昔から欲しかったものです。
(どこにあるか、見当はないけれど)
葵は心の中でため息をつきました。
自分の家の裏の森は、枯れ木ばかりです。
葵は周りをぐるりと見回しました。
(そろそろ戻ろう…)
そう考えかけた“真面目な“自分を、頭を振って振り払います。
「だめよ。今戻ったら、“最悪で不幸な毎日を送る葵“に戻ってしまうわ。早く探して、手紙くらいは送りましょう」
そう決断し、葵はまた走り出しました。
置き手紙くらいは、家の机の上に置いておきました。
探さないでください、と。
「…まあ、あんなのなくても、家族はみんな、私を探さないでしょうけどね」
しかし、
葵は探しました。
雪の下。
土の中。
木の上。
木の幹の中。
凍った池の中。
葵は探しました。
でも、この森には、ないようです。
葵はため息をつきました。
後ろを見ると、聖夜祭の様子なんて、見られません。
それどころか、自分の足跡すらもありませんでした。
(寒いなあ…)
葵は考えました。
(でも探さなきゃ)
葵はまた、雪を踏み始めました。
ザク…ッ ザク…ッ
(どこにあるの…?)
葵の手はもう、かじかんでいました。何度も息をかけて温めます。
(どこにもない、なあ…)
葵は諦めようと後ろを向きました。
しかし、
「…ぁ、ああああぁ…ッ」
もう聖夜祭の様子なんて、見られません。
それどころか、自分の足跡すらありません。
「ど、どうしよう…ッ」
葵はつぶやきました。
「まだ、探しものも、見つけてないのに…___ッ」
「__何を探しているの?」
「え…っ?」
葵は思わず振り向きました。まるで小さな鈴を転がしたような、可愛らしく、綺麗な声です。
「お姉さんだよ。何を探しているの?」
___とても澄んだ声。
その声の持ち主は、とても美しい少女でした。
サラサラな茶髪は、わずかな月灯りにも反射し、とても眩く、輝いています。肌は透き通るように白く、頬はほんのり薔薇色。そして、太陽のような笑顔を浮かべていました。
「もし何か探してるなら__僕も、お手伝いしようか?」
自分のことを「僕」といった少女は、そう首をかしげました。
「え、ええ。…あ、でも」
一度うなずいた葵は、口ごもりました。
「あなたも知らないかも…」
「ううん」 __少女はまた、澄んだ声を響かせ、首を振りました。
「僕は知っているよ。君が探しているものがどこにあるのか」
「本当に…!?」
葵は目を見開きます。
「うん、もちろん。さあこっちに来て。その場所に、連れて行ってあげる」
雪より白い手を葵に差し伸べ、少女は言いました。
「…わかったわ。あなたについていく。本当に、あるのね…?」
「何度言えばわかるのー? あるよ、ちゃんと。かなり歩くけど、いい?」
葵は少し考え、答えました。
「ええ、もちろん…!」
そう意気込んだ、葵でしたが…。
「ちょっと待って、本当にここ…?」
目の前の光景に目を細めます。
「うん、ここだよ。んーでもね、もうちょっと先」
「先って…! い、いやよ! わ、私、ここなんて、来たくなかったのにっ!」
葵がそう叫ぶのも無理はありません。なんて言ったってそこは、葵の生まれ育った村だったからです。
葵は、ここに生まれ、すくすく育ったことを恨んでいました。どうせなら自分を大事にしてくれる家族のところに生まれたかった、といつまでも思っています。
「でも、君の欲しいものはここにあるの。いいから来て」
葵は、茶髪の少女に引っ張られ、進んで行きました。ここは村の南入口門。葵の家は、逆の方面の北にあるので、葵は幾分、気持ちが楽でした。
…でもそれは、途中までのこと。
茶髪の少女は、どこまでも進んで行き、終いには、葵の家まで歩いて行ったからです。
ふと、少女は止まりました。
葵は、家を睨んでいた眼を、少女に移します。
「なんで、止まるのよ…! まさかとは思うけど、あなた…!」
茶髪の少女はゆっくり振り返りました。
「そのまさかを信じるのが人間と思っていたんだけど、君は信じないんだね」
「当たり前よ! こんなとこ、来たって意味がないもの。あなたはお父さま達の使いの人ね? こんなことして、何が楽しいのっ!?」
「…あれ、おかしいなあ。__勘違いだよ、葵ちゃん。ほら、窓を覗いてごらん」
そう言って、茶髪の少女はニコニコ窓を手で指します。
葵は少し考え、(両親の馬鹿らしい慌てっぷりを拝んでやろう)と言う結論に至り、しかたなさそうにまどを覗き込みました。
すると、
「えっ…?」
「おいっ、翠っ、まだ見つからんのかっ!?」
「まだよ、賢斗さん! 全く葵ったら、こんなに私たちを困らせて…!」
「花奈は!?」
「寝かしつけたわよ、ちゃんと! それよりも今は葵よ、賢斗さんっ!」
葵の眼には、思っていたよりも違う方向で慌てていた、両親が写りました。
「あの二人はね、」 茶髪の少女が澄んだ声を響かせます。
「自分や、この村の未来じゃなくて、君のことを心配してるんだよ、葵ちゃん」
「私、の…?」
茶髪の少女はこくんとうなずきます。
「よかったね。君の欲しいもの、ここにあったよ」
「ほんと、だ…。あなたが言ってたこと、間違ってなかった…。ここにあった、ずっと、ずーっと、欲しかったもの…!」
葵の眼から、涙があふれます。そして、もつれる舌で、お礼を言いました。
「そういえば、名前も知らなかったけど、ありがとう…! 私今、最高に幸せ…!」
それを聞いて、茶髪の少女はニッコリ笑います。
「そ。よかった。もう帰りなよ、君の両親が、君の帰りを待ってる」
「うん…!」
やがて葵は、家の中に入りました。両親が怒った顔で出てきます。
でも、それでも…、
葵は笑顔でした。なぜなら、葵はずっと探していたもの…欲しかったものを見つけたからです。
それは「愛」と「幸せ」。
茶髪の少女は、葵の愛に満ちた、幸せそうな顔を窓から嬉しそうに眺め。
やがて、舞い落ちる雪とともに、消えてゆきました。
「メリークリスマス…、葵ちゃん。よかったね。それは僕からの贈りもの。…大事にしてね」
その声は誰にも、葵すらにも届かず、しかし、雪に溶けた彼女の温もりは、葵の心に、ずっと残り続けていました。
《終わり》
「僕からの贈りもの。」、どうでしたか? すごい頑張りました。1話に収めました。すごいです、これは奇跡です。もうこんな奇跡は起こらないと思います。いや、起こって欲しいですけどね(笑) でも本当に頑張りました。サブタイトルを決めなくていいので、とても楽です。嬉しいです。
今現在投稿しているの小説→「願い事が叶う池」「おとぎの国 〜光の巫女編〜」「サンタさんをさがしにいかない?」




