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勘弁してください。北斎先生…  作者: うみろう
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勘弁してください。アニメーション制作

「お疲れ様です。本日原画のUP日なんですが、今日何時頃に上がりますでしょうか?」


こんな電話を掛け続ける。締め切りを守る原画マンは20人いたら1人か2人

1週間、もしくは2週間、挙げ句の果てには1ヵ月上がりを引っ張られて途中で降りてしまうなんて事も日常茶飯事。


毎日その原画マンに合わせた時間帯に電話し続けて

上りが出たら、車で回収に向かう。


回収に向かったらその原画を会社に持ち帰り、スキャンを取り次のセクションに持って行く。


こんな事を日中夜問わずやり続ける…


墨田区にある、小さなアニメーション会社「両国アニメーション」入って3年目の制作進行。

アニメーターをずっと追いかけてる。


「夜分遅くにすみません、こないだお願いした。

【異世界にハーレムを】2話の原画なんですけど…

もうそろそろあげてもらわないと…」


今電話で起きたという感じが電話越しでも分かるくらいのテンションで気怠そうな返答が帰ってくる


「あーーてっぺんには出します。」


この人いっつも電話したら起きるけど…仕事いつしてんだよ。と思いつつ思いっきり嬉しそうな声で


「ありがとうございます!!

では12時ごろ回収に伺いますね!」


たった1枚の原画でも深夜12時に車を飛ばす。


ここ最近は作品に対する愛情なんて微塵もない。期限どうりあげて、期限どうり納品できればなんでもいい。

SNSで作画崩壊と笑われようが、そんな事知った事ではない。


存分に笑ってくれ。


毎クール何十本も同じようなアニメを、垂れ流し消費され半年後にはそのほとんどが忘れ去られる

こんな事の為に命を削りながら作る意味も気力もない。

そんな事今日も考えながら原画マンの家に向かう。

家に着くとマンションのドアノブに白い紙袋がかかっている。

相変わらずこの業界は無用心だ。

誰か知らない人が持っていこうと思えばいつでも持って行けれる。


その袋の中には、薄っぺらい封筒に汚い字で「両アニ様、異世界ハーレム#2」とだけ書いてある。


その場で中身を確認する

入っていたのは1枚の原画


出してくれるだけまだマシか…


マンション前の自販機でコーヒーを買って車に乗り込む。


この業界は一見TVアニメを作るって事はカッコよく思えるかもしれない。

しかしそれに憧れて入ってくる人の8割が1年以内に辞める。


僕の同期も1年以内にみんな辞めて僕だけになってしまった。


他のアニメ制作会社を転々と渡り歩く者、独立する者、辞めて実家に帰る者。

ここでは寿退社や定年退職なんていうのは聞いた事がない。

いわゆるごくごく一般的な結婚して、家庭を持って65には定年退職してって言う流れの人生を送りたければこの業界には来ない方がいい。


24時間365日作品が動いてる間は働き続ける。

身体の限界が来たらそれまで、僕が居なくなっても代わりを入れればいい。

そしてその代わりを使い潰し、また代わりを入れる。

会社にとっては毎回安いお金で制作進行を入れる事ができる。

この無限ループでアニメはできてる



最後まで読んでいただきありがとうございました。

また次回も読んで頂けたら嬉しいです。


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