六話
黒まめです。遅くなりました。
神核を早く加工したかった俺が向かったのは鍛冶区画。個室に入り中を見る。するとアナウンスが入り
『称号の効果により、工房が【ヘパイストスの工房】に変化します』
こう告げた瞬間あたりが一瞬真っ暗になってまたすぐに明るくなった。神の工房っていうものだからとんでもなく煌びやかなのかと思ってたら武骨で落ち着いた雰囲気の場所だった。だが炉も金槌も今までの物とは比べ物にならないレベルのいいものだ
「やっぱ運営は神だったんだ...」
だとしたらすぐに作業に取り掛かりたいのだが、まず今回使うのはアトゥクヌムではない。なぜならアトゥクヌムは万能型の鉱石であって特化型ではない。金属にはそれぞれ特化した使い方がある。アトゥクヌムは万能でなんにでも使えるが、あれはどちらかというと防具向きの鉱石なのだ。
そして今回使うのが武器の中でも鈍器に特化した金属のヘルアンク鈍鋼だ。作る武器はハンマー。このゲームの表記で言えば槌だ。神核の名称的でもしや、と思ってしまったので思い立ったが吉日、ハンマーにする。まずは適当な石を用意して錬金でヘルアンクに変える。...成功。なぜ前世の鉱石がこんなに創れるのかはわからないが使えるなら使っていこう。
そうしたら次は長方形のヘルアンクを炉に入れ赤熱してきたら取り出し叩く。角をなるべく減らして完成だ。
次は、両端の中心部分に獅子を彫る。一応前世の俺のトレードマークは獅子であるので様式美というかなんというか。至高の武器には銘を刻む。とは言っても、至高と言うよりはモチベーションだったり全身全霊で取り組んだ証みたいな感じで銘を刻むんだ。
次は柄。柄は鋳造でヘルアンクを炉で溶かし、鋳型に流し込む。固まったら表面を研磨して持ちやすいように右側に溝を作っておく。
そこまでできたら後は簡単。叩く方の中心に穴を空けそこに柄を通し凝固。凝固先輩...
そうしたら最後は神核を融合!ちなみに普通に溶かして合金の要領でやれば普通にできるが俺は核そのまま入れたい派の人間なので錬金術スキルの融合でハンマーに核を中に入れる。すると急にハンマーが光を放ち光が収まるとそこにはハンマーの全体が少しバチバチなのかドロドロなのかはわからないが燃えている。武器の名前と性能はこう
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神槌ミョルニル:STR+25000要求ステータス:STR5000
属性:灼雷 スキル:《神の雷》《自動追尾》《主を想う》《変幻自在》
かつて最強神が使っていたとされる槌。その名には「打ち砕くもの」の意味があり、投げても的を外さず、敵を破砕した後再び手に戻る、自在に大きさを変え携行できるといった性質を持つ。しかしミョルニルは常に粘性が高く雷のような焔を纏っているため、触れるとその手が燃えやがて死に至る。
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「最ッ高だ!思った通り!」
雷神の神核と表記されていたからまさかとは思い取ってみたがまさか本当に作れるとは。俺が想像してたのは北欧神話のトールだ。雷神と言ったらこれしか出てこなかった。今の俺には装備できないがいつか装備しておそらく触れたらダメージを受けるであろう特性も克服して使いまくってやる!
もしかしたら短時間ならば破壊王のスキルで使えるかもしれないし、悲観することはない。...ゲームバランスには気を遣おうか。差し当たってはこのエリアに来たばかりの時から気になっていたあの火山に行ってまだ見ぬ鉱石を探そう。楽しみで仕方がないな!今日は寝る。
翌日、俺は目が覚めて大事なことに気が付いた。最近めっきりゲームにはまって忘れていたが、学校が始まる。本音を言うと行きたくない。理由は、義務教育じゃないのに行く意味ある?と思ったからだ。しかし両親にせめて高校にはいけと言われた。どうせ俺が払うわけではないとしぶしぶ了承したのだが、時間の無駄な気がしてならない。偉そうとか言わないでくれよ?趣味の鍛冶さえあれば生きてけるのがこの俺なので、もう中学を卒業したら家を継ぐつもりだったのだ。そこに親がせめて高校に入ってくれと、言ってきたわけだ。大人の世界も面倒なのだろうか。
で、その学校が始まるのが明後日から。そう、明後日からだ。準備をした記憶がなかったのでとんでもなく焦ったがゲームを始める前の俺がしっかりやっていたようだ。優秀。ひとまず今一番直さなければいけないのが、お察しの通り口調。ゲームの方で慣れすぎてリアルにも一人称「俺」がついに出てきた。それを聞いた父親がとんでもない顔をしていたので相当ショックがあったはずだ。
と、いうわけで。今日はゲーム内でもおしとやかな口調でいこうと思う。それで慣れよう。
とりあえずログインしないことには始まらない。鍛冶区画から出る前にレベルの確認とSPの振り分けだな。
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PN:ヴェルク
Lv:42
JOB:鍛冶師
SJOB:錬金術師
HP:920
MP:430
STR(筋力):436+200
VIT(耐久):133
DEX(器用):213
AGI(速度):125+70
LUC(幸運):16
スキル
《錬金術》LV:_
《弓術》LV:1
《槌術》LV:1
《付与魔法》LV:1
《転移魔法》LV:1
《刀術》LV:2
《短剣術》LV:2
《長剣術》Lv:1
《盾術》Lv:1
《大剣術》Lv:2
《槍術》LV:2
《破壊王》Lv:EX
アーツ
【居合】Lv:1
【急所突き】Lv:1
【叩き斬る】Lv:1
【薙ぎ払う】Lv:1
装備
頭:ファービルブ合金の兜(VIT+500)
胴:ファービルブ合金の鎧(VIT+700)
腰:ファービルブ合金の鎧(VIT+500)
足:ファービルブ合金の足鎧(VIT+500)
左手:方天画戟(STR+3000VIT+500)
右手:
装飾品:小鬼の王の指輪(STR+50)
:森長の指輪(AGI+100)
SP:0
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おうふ。かなり倒したとは思ってはいたけどここまでレベルが上がっているとは思わなかったな。多分アリアとかアラタあたりが高レベルだったんだろうな。この時点でミョルニルにかなり近づいたな。
さて、今日は気になっていた火山に行く。…あれ?採掘に淑やかとかあるか?
あらかじめ作っておいたツルハシを担いで動きやすい作業着に着替えて街を出る。もちろん道中抽出を忘れずに。火山に到着しても止めずに。
火山に到着したらすでに坑道があり、採掘ポイントも探しやすくなっていた。出てくるモンスターはお好みのを使って倒す。10分ほど探すと鉱脈を見つけた。あとはただツルハシを振り、鉱石を掘りまくるだけ。
思ったより量があったようで小一時間掘っていたが鉱脈は尽きなかった。まあ装備作成には十分すぎる量が取れたので街に帰ろうか。…と思ったが待てよ?今のレベルだったらボスはらくらく倒せるのでは?物は試しだ。ボス退治、行ってみよぉ!
とはいっても場所がわからん。火山の内部を練り歩いてみたが特に何もなかった。じゃああのアホほど広い外を歩くしかないか...
街から螺旋状にぐるぐる回って見落としがないように探索をする。3時間後、無心で歩いていると洞穴のような場所を見つけた。
「やっとだァ!ほんとに暇すぎた...」
スキップで中に入り進んでいくとそこには石像があった。長い耳に蝙蝠のような羽を生やした悪魔のような石像だ。わかりやすく言えばガーゴイルがあった。その奥にはおそらく次エリアの扉と思しきものがあった。だが、ガーゴイルが全く動く気配がないので怪訝に思いつつ素通りしようとしたら目の前にウィンドウが出てきた。
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EXクエストが受注できます。受注しますか?YESorNO
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詳細は一切書いておらず受けるか否かだけを問うている。もちろん答えはYESだが、このガーゴイルと何か関係があるのか?YESを押すと、またウィンドウが現れ、そこに表示されていたのは至って簡単なものだった。
『EXクエスト:朽ちた鐘、鳴らすは影』が開始されます。
♢
大会終了後、私はα会場の一位の名前を見て不思議とすごいと思わなかった。やっぱりか。なんていう感情が大半だったから。だって裏ボスをソロで倒しちゃうし、私一応攻略組なのにあっさりやられたし。大体α一位ってことはあのアラタを倒したってことだし。もう意味が分からないよ。
「まぁでも、おかげで覚悟が決まったし。いいか」
いつも私が通ってるパーティのもとに行く。集合場所は酒場。中に入ると酒の匂いと喧騒が急に感じられる。その中でも一際うるさいところに行くとパーティリーダーのアグニがこちらに気づき声をかけてくる。
「やっと来たかアリア!この鈍間が、来るのがおせぇんだよ!荷物持ちが一番後でどうする!」
本当に救えない男だ。頭が悪いのだろうか。悪いのだろう。どうせイベントが始まる前からそこにいたんだろう?私一人にヴァハグンの捜索をやらせて。それで遅れてきたらこの扱い。この男は現実でもこんな性格なのだろうか。脳みそがないのでは?不愉快にもほどがある。
いままでは適当にやり過ごしてきたが、それも今日で終わりだ。なぜなら―――
「今日限りでこのパーティ抜けるので。お疲れさまでした」
「は...!?お前、俺がどれだけお前に良くしてやったかわかってんのか!」
「知りません。毎日毎日罵詈雑言を浴びせてきたではありませんか。自分のしたことも覚えてないんですね、かわいそうに」
「おま、お前もか!お前も俺の気に入らないことを言ってくるのか!よぉし分かった!これからはお前が俺様のパーティを抜けたこと後悔させてやる。覚悟しろよぉ?」
アグニは顔を真っ赤にして怒鳴りつけてくる。私が少し煽っただけでこんなになるんだから、いよいよだな。それにしたって一昔前のかませ犬みたいなセリフだなぁ。どこまでも陰湿。気持ち悪い。
「はあ、そうですか。お好きにどうぞ。ではさようなら」
そのまま私は酒場を後にした。なんだか憑き物が落ちた気分だ。結局は人の力で立ち直ったわけだけど、気にしない方向で行こう。弱い私とはサヨナラ。明後日からは学校もあるし心機一転、がんばろう。
♢
「あと......うちのパーティに入らないか」
「ふっ......絶対に断る」
そういって彼は紅い籠手で僕の頭を粉砕した。直後、『会場αの勝者が決まりました。これより転送を開始します。』とアナウンスが入り、六つ目の街『シックスマーケット』に僕は飛ばされた。
イベント開始時にはパーティハウスと呼ばれるここに来てから買える家にいたからハウス内に転送された。PVPで負けたのは久しぶりだ。悔しさもあるが嬉しさもあった。イベントでレベルが上がっているといっても僕のレベルは68。追いつけはしないだろう。そんなレベル差がある中でノーダメージで僕に勝って見せた。そのうえ生産職というので、とんでもない人だ。
―――――あの圧倒的な強さに勝ちたい。もう一度戦いたい。そう、思った。
しばらくするとほかのメンバーもハウスに戻ってきてイベントの感想を言い合っていた。僕もいかにあのプレイヤーがすごいかをかなり語った。バニラには引かれた。
ここシックスマーケットのボスは対策不足で負けたけど、二回目なら確実に勝てる。属性もギミックも一度割れてしまえばなんてことはない。
「そうと決まれば早くボス、倒さないとね」
明後日から学校もあることだし、ささっとやってしまおう。たまたま武器クエストが始まり手に入れたこの剣だが性能は申し分ない。彼には負けたが、剣の根元に刻印がされたなかなか男心をくすぐるデザインの『聖剣クラウ』。これがあればボスには勝てるはずだ。
いかがでしたか?誤字脱字等あればご指摘のほどお願いいたします。
Valhalla・online
何かいい略称はありませんでしょうか?ありましたら活動報告の方によろしくお願いいたします<(_ _)>
追記:ミョルニルの要求ステを増やしました。理由としましてはとてつもなく強力なアイテムがかなりお手軽に使えるようになりそうだったからです。