五話
黒まめです
戦闘描写むつかしい...
アリアを倒した後レベルは高いであろう奴は何人かはいたがアイツみたいにやる気というかなんというか、心の中の芯ようなものがなかった。振りはへなちょこだったし何より相手を見下して自分に酔っていたやつが多かったように感じる。
「あーあ、こんなもんかぁ」
「やい!そこの!」
レベルの低さに嘆息を漏らしているとそう声をかけられた。PNを見るとアグニと表示されていた。アグニは自信満々の様子でこう言い放った
「お前、うちのパーティに来ないか?今は枠が空いてるし俺たちは攻略組だから最前線まで連れてってやれるぜ?どうだ、ありがたいだろ?だからここはひとつ!勝ちを譲ってくんねえか?」
「......おうおう、おめぇさんよぉ。そいつぁもしや、命乞いをしてんのかい?おぉ?」
「い、命乞いだと!?そ、そんなこと俺がするわけないだろ!お前も俺もいい思いができてWINWINだろうが!」
「断る。それに、俺ぁ雑魚に従う気はねぇし、戦うためにここにきてんだよなぁ。なぁ、戦ろうぜ?攻略組サマよ」
「お、おま、お前ぇぇぇぇ!そんなに死にたいならやってやるよ!」
軽ーく挑発ともいえないものをしただけなのに顔を真っ赤にして大振りに長剣を振り下ろしてきたが一歩動いただけで躱せる。
「オイオイ、こんなもんかよ」
「テメェ!食らいやがれ!【爆炎斬】!」
「当てられないから範囲技か!?お里が知れるなぁ!」
「こンの糞野郎がぁぁぁぁ!!」
地面に奴の剣が触れた瞬間俺のいた場所ごと爆ぜたが籠手を装備して即座に跳んだのでダメージは無い。
「ハッハァ!空中で身動きが取れないだろ!死ね!【飛斬】!」
「俺はまだお前に武器すら見せてないんだがなぁ!」
跳ぶ斬撃を盾で受け槍を取りだし空中で構え、アグニに向けて思いっきり投げた。
「槍だと!?大剣じゃな――」
「ジ・エンドだ。くたばれ腰抜け」
投げた槍はアグニの頭に突き刺さり頭部を穿たれたアグニは数秒動いていたが致命的な箇所に穴が開いたためHP関係なしの即死でポリゴンになって消え失せた。
「あっけねーな。あれほんとに攻略組なのか?イメージはもっと強いと思ったんだがなぁ最前線ならレベルもスキルも装備も俺より強いと思うんだがなぁ」
そう、それだ。レベルは上だとスキルでわかったが防具が強いという印象は抱かなかった。アリアの場合は局所部分に装備していたからわかりにくいがほかのやつらは俺と同じくフルプレートのやつもいたのにもかかわらず叩き潰せた。いつぞやの変態が水着鎧とかふざけてたがそれでもVITは200って言ってたしあの時点でそれが作れる。ということはもっといい素材の取れるであろう最前線なら俺の大剣じゃ押し潰せないはずなのだが...いや、もしかしたらアグニ以外のやつは攻略組じゃないのかもしれない。すっげえ偉そうにしてたからてっきりあいつら全員そうだと思ってたぜ。わかった!
「攻略組もどきか!」
「ブフッ」
「お、盗み聞きしてやがったな?この野郎」
「いや、申し訳ない。どこを探しても敵がいなかったから探してなかったここに来たらちょうど呟きが聞こえてね。つい、笑ってしまったよ」
「そうかい。だってそうだろ?あんなエラっそうな態度してたくせにそんなに強くないんだぜ?」
「ふふっ、それはもしやアグニ達のパーティじゃないかい?」
「え、やっぱあいつらパーティなのか」
「そうだね。一応攻略組のうちに入るけど、まあ、弱い部類に入るかな?」
「あ、そう。納得だわ。で、どうする?やるか?」
「ああ。是非とも」
そう答えたのはフルプレートアーマーに身を包み背にマントを羽織ったまさに騎士といった感じのアラタという名前のプレイヤーだ。
まずは小手調べに短剣を投擲するが簡単に弾かれた。少なくともアグニよりは確実に強いプレイヤーだ。さっきの言いぶりからするとアラタも攻略組と考えるのが妥当だろう。と、考えているとアラタがこちらに走ってきた。
「その名前、ヴァハグンを倒したのは君だね?」
「いかにもそうだが、それがどうし、たッ!」
刀に持ち替えアラタと剣戟を交わしているとそんなことを聞いてきた。
「ヴァハグンの存在は知っていた。戦いたかったけど遭遇できなくてね。それでソロで倒したっていうものだからどんな人かと思ったらちょうどよくここにいたってワケだ。どの程度やれるのかは気になるだろう?」
「たかが二面のボスだろうが!何を気にすることがあんだよ!」
「裏ボスっていうのはそのエリアの3つ先のボスと同等の強さなんだ。知ってたかい?」
「え、いや全く知らんかった」
「まあそうだろうね。で、その3つ先のエリアなんだけど、そこが君の言う最前線なんだ。まだボスは倒せていなくてね」
予想外に最前線は近かった模様。普通に話してるがこの間もずっと剣戟を交わしている。相手の攻撃は少しづつ蓄積しているが俺の攻撃は入っているように思えない。おそらく防具の性能が武器の攻撃力よりも圧倒的に上なのだろう。だったら俺の武器の中で性能が秀でている物を使っても文句は言われないだろう
「だったら使わせてもらうぜ!」
「っ!?」
まずは神晶の籠手を装着して殴りつけ距離を取る。そしたら方天画戟を装備して距離を詰める間合いに入ったら思いっ切り薙ぐ。
「ぐっ」
「ッしゃオラァ!次行くぞ!」
そうしたら石突を片手で握って薙いだ遠心力を利用して振り下ろす。これにもアラタは反応して横に跳んで避けた。地面に刺さったら隙になるので刺さらないように燕返しの要領でスレスレで振るのを止め、横なぎに斬りかかってきたアラタの剣を柄で受ける。
「君、一体何種類の武器を使えるんだい?」
「さあな!自分の作った武器なら何でも使えるぜ!?」
「まるで自分が生産職のような言い方をするね」
「生産職だからなぁ!」
「この強さで生産職...尚更負けられないな!」
そう言ったアラタを眩い光が包んだ。それと同時にノックバックが発生し、俺の体は吹き飛ばされる。受け身を取って立ち上がると同時に濃い殺気を感じその場を飛びのく。するとそこに剣を振り切った姿勢のアラタがいた。
「おいおい...早すぎやしねえか?」
「僕としてはこれを避けられたのが驚きだけどね」
「生憎と、殺気には敏感なもんでね!」
「ははっ!そうかい。じゃあ、これはどうかな?」
アラタの姿が消えたかと思うとあたりに靄が現れた。確認できるのは自分の周囲1メートル程だ。どこから現れるのか警戒してあたりを探っているとこめかみにチリっとした感覚が走る。そのまま直感に身を任せ方天画戟を突き出し捩じる。
「ぐおっ...!?」
「ビンゴ!」
「だが君は今隙だらけだ!この勝負、貰った!」
両手で武器を持っている俺を隙と見たアラタは持っていた剣を俺の首めがけて振った。
「負け...か」
「おう。俺の勝ちだ」
「最後に一つだけいいかい?」
「なんだ?」
「フレンドになってくれないか?」
「かまわねーよ」
「あと......うちのパーティに入らないか」
「ふっ......絶対に断る」
俺は装備した神晶の籠手を振りかぶり、アラタの頭を粉砕した。
「いやぁ、本物の攻略組は強かったな!よかったよかった」
そうつぶやくとアナウンスが入る。
『会場αの勝者が決まりましたこれより転送を開始します。』
イベント開始時のような浮遊感とともに自分の元居た場所に転送された。ちなみに、さっきの勝敗を分けたのは言うまでもなく神晶の籠手だ。アラタが振りかぶった瞬間に方天画戟から手を放し、すぐに籠手を装着。その後下から思い切り剣を殴り吹き飛ばすとともに粉砕した。ついでにアラタを殺った時に籠手も粉砕した。
「あぁ~、いい炉が欲しいんじゃ~」
もういっそ自分で作ってしまおうかとも思う。作る場所がないが...考え込んでいるとまたもやアナウンスが入る。
『全会場勝者が決定いたしました。これよりTOP3を発表します。
α:1位:ヴェルク 2位:アラタ 3位:アグニ
β:1位:服部 2位:アバラ 3位:ナマズ大統領
γ:1位:マリーナ 2位:社 3位:アル
δ:1位:シラサギ 2位:蟲壺 3位:知らない天井
ε:1位:アジ・フラーイ 2位:ランスロット 3位:牛肉ハート
ζ:1位:ニューイン 2位:アロマ 3位:†黒の執行者†
η:1位:ホーク 2位:ラムダ 3位:ハティ
になります。尚、成績優秀者には特別なアイテムが送られ1位の方には特殊称号とスキルを贈呈します。
また、只今よりチュートリアル期間を終了とし、魔物が真の強さを取り戻します。これに伴い新モンスターが現れるようになります。では、引き続き≪Valhalla・Online≫をお楽しみください』
アナウンスが終わるとすぐに称号とスキルを確認した。詳細はこう。
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スキル:《破壊王》
これまで全ての敵を部位破壊で倒したものに送られる特別なスキル。使うと一時的にSTRが超大幅に上がるが、使用後しばらくステータスが大幅に減少しスキルが使えなくなる。
称号:《ヘパイストス》
どのプレイヤーも作ることのできない至高の武器を作ったものに送られる特別な称号。
神は言った。「最高のものを創り出すには最高の設備が必要だ」と。使用する設備をヘパイストスの工房に変化することができるようになる。
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控えめに言って最高だろ。特に称号。つまりこれは、好きにアトゥクヌムやほかの最高の鉱石を使えるということだ。
「...愛してるぜ、運営」
あと特別なアイテムってのがあったはずだ。インベントリを見るとイベント報酬とあったので詳細を見てみるといろいろな武器やら素材やらが選べた。おそらく戦闘職には武器、生産職には素材という意味合いがあるのだろう。俺は素材欄の雷神の神核というものを取った。理由は面白い武器を作れそうだから。基本的な属性の付いた武器自体は付与魔法を使えば作れるのだが、核と付く物は特殊な効果を持つことがある。今から加工するのが楽しみだ。
次回は掲示板回となります。
誤字脱字あればご指摘のほどよろしくお願いします。