三話
黒まめです。最近コロナが怖いですね
中に入るとすぐに叫び声が聞こえた。
「あぁ!炉の焔があつぅい!でも...でもきもちぃいいい!!!」
「うっさいわいクソガキが!もっと静かにせんか!集中が切れるじゃろう!」
「ふふふ...やはりこの競泳水着鎧が一番の性能だ...だがこんなに素晴らしい装備だというのになぜ誰も装備しないのか不思議でならんなぁ。」
この三人の会話を聞いただけで確信した。そりゃあ、マリも引き留めるわ。これは、うん。凄まじいな。
キチガイ共は無視してばれないように個室に向かおう。忍び足で扉に近づき中に入った。閉める寸前に別の個室から大量の溶けた鉄が流れ出るのが見えたがあれは幻影だ。知覚してはならない。
「一人しかまともそうなのいなかったんだが???」
しばらくして落ち着きを取り戻した俺はまず使わない鉄を取りだし錬金を試してみる。記念すべき第一個目は前世で最高級の鉱石と言われたアトゥクヌム輝煌石にしようと思う。
錬金を発動すると手の上にほんの少しだけ金の光を放つ鉱石が現れた。代償はMPすべてだが、まあ妥当だろう。しかしこれでかなりこれからの鍛冶がパワーアップされる。なんたってもうすでに一度アトゥクヌム輝煌石を手にしているのだから。MP消費0でこれからこのなんにでも使える鉱石を無限に出せるのだ。残念なことにMPが尽きたのでとりあえず錬金と錬成は後にして今は新しく手に入った鉱石のファーブ鉱石とビルブ鉱石の加工をしよう。二つとも硬度がそれなりに高いらしいので合金にしてフルアーマーを作ろうと思う。俺は防具より武器の方が得意なのだが、武器はアトゥクヌム輝煌石で作ろうと思っているからしょうがないだろう。
炉に火を入れ空気を送り込み温度を上げる。十分に温まったら二つの金属を中に入れ溶かしていく。融点の違いはそれほどないようで簡単に合金にできた。溶け出た合金を凝固で板状にした後叩いてプレートを作っていく。叩く場所や強さを変えることによって流線形にすることができる。プレートを作り終わったら次はヘルムだが、これは型がいるので鉄で作っておく。レギンスやガントレットも同じように細かい部分もパーツごとにしっかり作っていく。
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数時間ほどかかり少々武骨ではあるものの防具は完成した。性能の方は
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ファービルブ合金の兜:VIT+500 要求ステータス:STR150
ファーブ鉱石とビルブ鉱石の合金で作られた兜。非常に高い技術で作り上げられている。
ファービルブ合金の鎧:VIT+700 要求ステータス:STR150
ファーブ鉱石とビルブ鉱石の合金で作られた鎧。非常に高い技術で作り上げられている。
ファービルブ合金の腰鎧:VIT+500 要求ステータス:STR150
ファーブ鉱石とビルブ鉱石の合金で作られた腰鎧。非常に高い技術で作り上げられている。
ファービルブ合金の足鎧:VIT+500 要求ステータス:STR150
ファーブ鉱石とビルブ鉱石の合金で作られた足鎧。非常に高い技術で作り上げられている。
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このようになっている。全身鎧なのである程度の筋力がいるようだが俺のSTRは180なので問題ない。さて、つぎはアトゥクヌム輝煌石の加工だが加工はできたんだが、どうにも炉の強度が足りない。溶けるには溶けるが一緒に炉も溶ける。
「やっぱり自分の工房を持つべきだな」
自身の工房があれば炉はいくらでも強化できる。とりあえず今回武器は鉄製の短剣を量産して少しだけできたアトゥクヌム輝煌石で籠手を作っておいた。性能は短剣は今持ってるものと変わらないんだけどアトゥクヌムの籠手が凄まじかった。
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神晶の籠手:STR+4500AGI+1500
神晶で作られた籠手。強力だが設備の不足により耐久力はかなり落ちている。
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今の段階で手に入っていいのかわからないくらいの性能だが耐久性に難ありとのことなので余程のピンチでもない時は移動用として使うに留めようようと思う。...ゲームバランス的にも。
気を取り直して、鎧を装着したあと普通に扉を開けて個室を出た俺はその判断を後悔した。
「んんん?あれあれあれあれ?新入りちゃん?君?どっちでもいいや。いつの間にいたの?声をかけてくれればよかったのに。」
「おぬし、やってしまったな...」
「やあやあ!こんにちは!どうだい?この競泳水着鎧を着てみないかい?VITはすべて200だ。とてもいい性能だろう?...しかも攻撃を受けるごとに破れるんだぜ?」
「アアドウモ。ジャ、シツレイシマス」
「スルー!傷つく!が、それもいい!!」
何か言ってるが無視無視。もはや奴らは人間ではないのだ。特殊な謎生物に成り下がった人間範疇外生命体だ。鍛冶区画を出た俺はマリに愚痴ってから生産場をでた。時間もちょうどいいので宿屋に行ってログアウト。
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翌日。ゲームを開いた俺の目の前に現れたのは三日後に第一回目のイベントをするという告知だ。内容はバトルロワイヤルで得点を稼ぐものらしい。一度死んだら即リタイヤで、観戦状態になるらしい。トップ層のプレイヤーには特典があるとかなんとか。周りのプレイヤーがテンションが高いのはそのせいか。特典というだけでこうもやる気が出るというのだから人間というのはすごいと思う。俺は今工房が欲しいのでどうでもいいのだが、その特典とやらで手に入るならそれは僥倖だろう。差し当たってはレベル上げと新しい素材を見つけねばならない。昨日の鍛冶でレベルが3あがっていたのでSPの振り分けをしておいた。それがこれ。
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PN:ヴェルク
Lv:15
JOB:鍛冶師
SJOB:錬金術師
HP:380
MP:160
STR(筋力):264+10
VIT(耐久):52
DEX(器用):92
AGI(速度):98
LUC(幸運):16
スキル:《錬金術》LV:_《弓術》LV:1《槌術》LV:1《付与魔法》LV:1《転移魔法》LV:1《刀術》LV:1《短剣術》LV:1
装備
頭:ファービルブ合金の兜
胴:ファービルブ合金の鎧
腰:ファービルブ合金の鎧
足:ファービルブ合金の足鎧
左手:神晶の籠手(STR+4500AGI+1500)
右手:神晶の籠手(STR+4500AGI+1500)
装飾品:小鬼の王の指輪(STR+50)
SP:0
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とりあえず今は移動速度を上げるためだけに神晶の籠手を装備しているので戦闘に入ったら長剣に持ち替える。イベントまでには持っている武器すべてのスキルを出しておきたい。スキルのレベルを上げるとアーツという武技が習得できるので早めに覚えておきたいんだが...少なくともスキルだけ生やしておけば各武器の装備時に筋力が少し上がるので気休めにはなるがアーツがあるに越したことはない。街を出るとモンテ大森林が広がっているので迷わないように用心して進む。歩いていると横から物音が聞こえ何やら木をなぎ倒す物体が襲い掛かってきた。
「随分とでけぇ猪だな!?」
襲い掛かってきたのは全長10メートルほどの巨大な猪だった。明らかに俺をロックオンしているそいつは少し息を吐くとものすごい勢いで突進してきた。いやまて、初速でこんなに速いんなら後々どんだけ速くなるんだ?そうなったら神晶の籠手を使うしかなくなるからできればその状況は避けたい。ので
「大型には足攻撃ぃぃぃいい!」
自分から向かって行って足に切り込みを入れる。こうすれば奴も方向転換で減速するしかない!AIがアホであることを祈るぞ?ある程度繰り返すと足を切り続けたのが良かったのか体勢を崩したデカブツを滅多刺しにする。ていうか一撃必殺の技がない今はこうするしか楽に倒す方法はない.....はずだ。
「VAMOOOOOOOOOOOOO!」
「ボーナスタイムも終わりかい。だがすでに貴様はパターンに入っている!観念して死――――うぉわっ!?」
体勢を立て直した猪は立ち上がった。そう、本来四足歩行であるはずのイノシシが二足歩行のように立ち上がりそこらに生えてた木を引っこ抜いてぶん投げてきた。とんでもない巨体の膂力で投げられた木を咄嗟に持ち替えた盾で受け流す。
「GUMOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」
「やりにくい!急に覚醒しやがって!」
周囲一帯の木を投げつくしたデカブツは殴り掛かってきた。
「それだよ!最初からそれをやっといてほしかった!よし、耐久が不安だが威力テストだ!神晶の籠手お披露目会と行こうじゃないの!」
「BUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」
渾身の力で神晶の籠手を奴の拳に向けて放った。俺の拳が当たった瞬間ドチュン!という音とともにデカブツの肩が消し飛んだ。そしてゆっくりとデカブツは地面に倒れこみ、ポリゴンになった
「――――――えっぐ」
あまりの威力に驚愕しているとシステムアナウンスが
『PN:ヴェルクさんによってモンテ大森林裏ボスモンスター【ヴァハグン】が討伐されました』
なんてことを言いやがった。
「プライバシーの侵害だぁぁぁぁぁああああ!!!!」
叫んだ俺の声が届くはずもなし。ちなみに2レベル上がった。《長剣術》となぜか《盾術》も習得した。裏ボスだけあって経験値もドロップした素材もいいものだったが、普通ボスがうろついてるとは思わんだろう。しかし、おそらく俺が初討伐だったのであろうがプレイヤー全体にお知らせするとは思ってもいなかった。仕方ないとはいえ、うーむ。諦めよう。言っちゃったもんはどうしようもない。さっさと正規ルートを攻略しよう。
次に覚えるのは《大剣術》だが大剣は威力が高いのでうまくやれば最強の武器種と言っても過言ではないが、やはりほかの武器と合わせたコンビネーションで言えば弓が優秀なのだ。例えば、剣類の柄頭に少し溝を入れ弓を持ち剣を矢のように扱い通常の矢では出せない威力を出すと同時に、剣なので覚えれば剣のアーツと弓のアーツを同時に発動できる。その点で言えば弓はどの武器にも対応するので全体的に優秀な武器と言える。つまりどれも強いのならどれも使ってしまえばいいというわけだよ。諸君。なんてことを考えていたら、通知が来て、初討伐と初ソロ討伐の報酬をもらえるらしい。
『ヴァハグン初討伐及び初ソロ討伐おめでとうございます!報酬として五万ゴルドと森長の指輪と称号《森長の誇り》を贈呈します!』
おそらくソロの方の報酬が指輪だろうが称号も貰えるのか。性能は?
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森長の指輪:AGI+100
森の長を単独で倒したものに送られる指輪。装備すると敏捷が上がる。
称号《森長の誇り》
森の長を倒したものに送られる称号。体力が三割を切ったとき全ステータスが二倍になる。
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なかなかいいものが手に入った。こういうものが得られるのならボス討伐もまた一興だろうが今は次の街に進むことだけを考えよう。
さあ、正規ルートに戻ろうか。
いかがでしたか?なにか至らない点ありましたらご指摘のほどお願いします
追記:腰鎧のところに手甲と書いてあったのを修正しました






