吉岡実、笹原弥子
今度は別の方々のお話になります。
「悪いことは言わない。Bコースを選ぶ方が賢明だ」
目の前にいる男のことをどう評価したら良いのだろう?
吉岡実は、じっと男のことを観察した。
どう見ても、他人に忠告できるような登山の歴戦の猛者には見えない。どちらかというとインドアで孤独に趣味に没頭する根暗タイプである。
「あんた、なに?」と恋人の笹原弥子が問う。
「俺か? 俺は、関原玲だ」
「名前を聞いているんじゃないわ」
「そうなのか? あんたなに? って今言ったじゃん。じゃあ、なんて答えたらいいんだ? もう少し範囲を広めたらいいのか? それとも、狭く?」
「そんなことどうでもいいわ」と笹原。「あんたは、なんで私たちに指図をするわけ?」
実は、吉岡実は範囲を狭くした方の答えを知りたかったが、流れに乗れなかった。
「それがお前たちのためになるからだ」と偉そうに男は告げる。
「余計なお世話よ。さぁ、実、行きましょう。時間がもったいないわ。こんなおばけみたいな男放っておいてさ」
そのとき、ズズズと微かに地面が振動した。
「なに?」と女。
「ただの地震だろ」と男。
カップルは、Aコースへと進んでいった。
まだ続きます。
最後まで読んでいただけたら光栄です。




