表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界なんてクソくらえ  作者: 南都河埜
西の国の動乱
94/194

敬虔な信徒か狂信者か



 町に来てからずっとだった。

 宿から出ても当たり前だった。

 そう、俺達は目立ち過ぎていた。


「……僧衣みたいなの借りてきた方が良かったか?」

「やめた方がいいわよ、こっちがその気だって勝手に解釈していつの間にか入信させられてるから」


 シャルはシェリールになってた方がずけずけと物を言う。

 ぶっちゃけ普段は喋るのが面倒で単語数を削ってるだけっぽいのだが、シェリールの姿だと割り切って普通に振舞う。

 その状態で結構いい事言いまくるので、頭の回転が速い奴だからこそだとは思うのだが、多分シェリールモードで火を付けたらヤバいくらい止まらないと思う。

 だから俺はシェリールの時にはあまり弄らず、シャルに戻った時に弄るのだ。

 三割くらいはシェリールが美人だから緊張するとか何か恥ずかしいって気持ちもあるが、作り物だと分かってるし割り切ってる部分もあるが。


「せめて王国で売られてる普通の服にしておけばよかったわねぇ」


 そう言いながら楓子の格好を見る千絵だが、皆の中ではどちらかと言えば千絵の格好が異端寄りで、つまるところこの世界では露出多めのTシャツに膝上スカートと言う組み合わせは普通、でも色々凝った造りの服装だった。

 結局シェリールを除く全員が元の世界ファッションなのだ。

 シェリールもシェイプチェンジでこっちの服装になっているだけで、さっきの宿屋でのシャルはTシャツに膝下丈のスカートだった。


「まぁでも楓子のシスター姿は見たい」

「智也君エッチだよ」

「うるさいやい」


 本来なら体系とかわかりにくい服のはずなのに、楓子の場合一部分が大きいせいで結局目立つ事だろう。

 本職と同じものを着たとしても、そのせいでどことなくコスプレ感が出ると思うのだ。

 だがそれがいい。

 なので楓子の批難を一身に受ける他無かったのである。

 まぁ完全に日本人の見た目でそう言う物を着る時点で、どうしようもなくコスプレっぽくなってしまうと思うけど。


「やっぱトモヤって楓子贔屓だよねー」


 そう言いながら暗に構えと寄って来るシエルの頭を掴み、流石に掴むのは可愛そうだったなと犬を撫でるがの如く撫でまわした。

 荒っぽいのに『えへへー』とご満悦なので良しとしよう。


「違うよシエルちゃん。私が丁度いいおもちゃなだけだからだよ」

「楓子、自分で言ってて悲しくない?」

「私はそれでも嬉しいよー」

「はいはいドMドM」


 千絵が呆れているが、楓子はそれでも嬉しいと言う。そんな光景を見ながらも、最近シエルを構ってなかったなと自分でも思うので犬みたいな扱いは継続中だ。


「で、あなた達、目立ってる中で更に目立ってどうする気? 先に進むわよ?」

「あ、はい……」


 やっぱりシャルが一番楽しみにしてたんじゃないかなぁ。

 結局宿の前から殆ど動いてなかった俺達だが、やっとの事で神殿に向かって歩き出した。

 今回はパフォーマンスもあるので、目立っているならそれでいいと割り切る事にした。 

 と言うわけで、『シェリールひめー』なんて声があちこちから聞こえるとシェリールは手を振って答えるし、『女神フーコ様がついに聖地へ……!』と感動してる信徒には一部で女神のほほ笑みと呼ばれている楓子のほほ笑みを向けるのである。

 となるとどうなるか。

 後ろに出来る列だ。

 それも大行列だ。

 噂が噂を呼び、俺達が神殿入り口に着く頃には見下ろす一面信徒だらけである。

 その騒ぎを聞きつけた神殿の人間が慌てて出て来て、俺達を見てすぐに状況を察してくれたらしい。

 すぐに中に招いてくれた。

 どうにもこの日に俺達が来る事はハイリッヒ公爵家から通達があったようだ。

 それにしては町での最初の雰囲気が普通過ぎたので、どうやら表沙汰にはなっていなかったらしい。


「あ、どうも、智也ですよろしくお願いします」


 神殿内は、この騒ぎは何事かと情報収集に奔走している職員と、恐らくいつも通りの仕事をこなしている職員の二つしかいない。

 そしていつも通り仕事をこなしている人の一人だろう、上位の職員、装飾の多い僧衣を着た司祭以上の役職持ちだと思うが、ニコニコした顔でこちらに近づいてきた。

 その顔が何と言うか、教皇に通ずる物がある。


「あなたがここの責任者の大司祭様ですか」

「ええ、ようこそおいでくださいました。こちらへどうぞ」


 やっぱりと言うか、教皇の下で働いていたせいか雰囲気が似てる。

 俺達は案内されるがまま神殿の中を歩いた。

 内部は外部と同じ石材で、全て同種の石材でこの神殿は出来ているようだ。

 高さ三十メートル以上の柱丸々一本継ぎ目無し。

 大理石と言うかむしろ象牙のような滑らかな乳白色の柱なのだが、触って叩いてみると石である事がわかる。

 内部構造としては、正面入り口入ってすぐが礼拝堂になっていて、右手に部屋があり人が出たり入ったりしていて、付近の椅子には順番待ちなのか人が何人も座っていた。

 多分あの先には悩める子羊の懺悔の場所でもあるのだろう。

 他にもいくつか部屋があるが、俺達は礼拝堂を正面に見て左の扉から出て、その先にある通路をぐるっと歩いて礼拝堂の真裏に当たる部屋に通された。

 どうやらここが応接室らしい。


「では改めて、私はこの地を任されております、ディーデリックと申します。この度は聖地までご足労頂き光栄の極みでございます」


 と言うのでお礼を言おうと思ったら、ディーデリックの視線は楓子に釘付けだった。

 ですよねー。

 楓子もまさかここで自分が矢面に立つと思っていなかったようで、無言を貫いて俺に相手させる気らしい。

 だがしかし、俺も教会関係の話は苦手だ。


「一応三日間滞在のつもりですが、どちらかと言えばこの地で静養するのをメインに考えています。ですので必要以上に騒がれると少々困るのですが、何とかできませんか?」

「教会から知らせを出しておきましょう。彼らも敬虔な信徒、すぐに静かになるでしょう」

「それはよかった」


 こうして二、三話していても視線は楓子をロックオンだ。

 どんだけ重要人物になってんだよ。

 いや楓子に限らず全員それなりに重要人物ではあるんだけど。


「静養との事ですが、女神フーコ様には聖地で修行を積んでいただきたいのです」


 ニコニコ顔で凄い事を言いだした。


「聖地にしかない特殊な石板もございます。貴女様ならきっと神の御心を理解できると我々は信じているのです」

「いや家族全員で静養に来ているので」

「ですが聖地に居る間だけしか出来ない事でございます。女神フーコ様でしたらこの重要性をご理解して頂いていると――」

「いやだから休みですから」

「さぁ女神フーコ様」


 本人の口から断ってくんないかなと楓子を見たら、わざわざ口チャックのジェスチャーをしやがりましたよ。


「あんまりしつこいと教皇猊下に直接クレーム入れますよ」

「猊下もお望みのはずです」


 愛に生きてる人になってしまったので、最近はそこまで熱心に仕事してないらしいんだが。


「とにかく余計な事をしろって言うなら俺達は王都に帰りますんで」

「そうですか……。神殿は常に開かれております。学びたいと思った時にお越しください……」


 喜んで受けると思っていたのか、大司教ディーデリックは心の底から凹んだ顔で諦めた。

 もしくは狂信者の類なのか。


「ですが、ではこちらに来られただけと言う事ですか?」

「ええ」

「祈りも捧げず?」

「我々ジャポニー教徒では無いので」


 そう言うと絶句していた。


「ま、まさか女神フーコ様も……?」

「そのまさかですけど。噂が勝手に大きくなって教会が女神だって言いだしただけで教徒じゃありません」

「是非洗礼を受けましょう。さぁ、貴女様程のお方なら、洗礼を受けた瞬間にジャポニー神が降臨致します」


 してたまるかさせてたまるか。


「では何故いらっしゃったのですか!」


 ついには怒り出した。


「立場上、一度も聖地に行っていないのは不味いとの事で来ただけですよ? その事に関しては教皇猊下も承知して頂いているのですが」


 何なら来る前に一筆書いておいて貰えばよかった。

 前日に『明日行くけど何か言伝等有りませんか?』と聞きに行くついでに町の事を聞こうと思ったのだが、特に無いと言うし別段何か教えてくれる事も無かった。


「そんな……」

「ただ、我々も教会とは仲良くしておきたいわけです。ただ、教徒になるつもりは無いだけで。ですので今後も何かありましたら協力致します」

「女神フーコの存在だけでどれだけの教徒が救われる事か……」


 この場合の教徒は勿論ジャポニー教に属する人全員だろう。

 普段使う信徒と言うのは熱心な教徒と言う意味で使われているようだが、基本的に王国の王都から最小規模の町にならない限りは前王国民が信徒と言って差し支えないらしい。

 最小規模の町から村、集落規模になるとジャポニー教は元よりエルフに関してもそこまで気にされない。

 ただ、割合的には全国民の殆どが教徒なので、そう言う所に目を瞑って王国民は皆教徒だ、信徒だと言われているようだ。


「まぁそう言う事で納得していただくほか有りません。変に期待を持たせる事でも無いので」

「はぁ……」


 まさに落胆を絵にかいたような落ち込み方だった。

 椅子に腰かけてテーブルの上に溶けるかの如く突っ伏してしまった。

 このままいても意味が無さそうなので、俺達は早々に退出する事にした。

 多分話しても建設的な話は出来なそうだし、そもそも世間話程度しかする事も無かったので、ここで切り上げても何ら問題ない。


「では失礼します」


 そう言って立ち上がると、楓子が我先に部屋から出て行ってしまった。

 教会併設の病院で治癒するのは好きらしいが、教徒になってまで何かする気は全く無いらしい。

 俺達は来た道を戻って礼拝堂まで出てきたが、さっき集まっていた人たちが礼拝堂の椅子を全て埋める勢いで座っており、俯いて何か祈っているようだった。

 見つかったら面倒なので早々に神殿を後にする。

 出た先でもやっぱり教徒がいて集まって来てしまうので、今日はここで散策終了にして宿に引き上げた。

 さっき宿から出てここまで、なんと一時間半も掛かっていないのである。

 一体観光とは何なのだろう。

 観光自体は神社仏閣を参拝ついでにあちこち見たとかだった気がするから間違いでは無いんだけど、もっとゆっくり出来ない物か。

 一応入り口から入り、フロントで『面倒だから飛んでっていいですか?』と聞いて外からバルコニーに着地した。

 窓に付いてる程度の鍵なら俺以外の全員が魔法で解錠出来る。

 これ覚えた理由が、『俺の部屋に侵入する為』で一致しててアホなのかと本気で悩んだりもしたが、こうして使えちゃってるからあまり強くも言えない。


「なんか短時間で疲れたよー」

「おい楓子。コラ楓子。何ださっきの口チャックは」

「だって私が話すだけで喜びそうなんだもん」


 否定が出来なかった。


「だから私はちゃんと智也君に、うちはこういう方針ですって行って欲しかったの。なので満足」

「あの大司教結構曲者だから俺はしんどいだけだったんだけどな」


 そう言いながら楓子が座ったソファーの対面に座ったら、さっきの名残かシエルがずっと隣から離れずゴロゴロとトラ子の真似をしてくる。

 はいはいと頭を撫でたら、人の膝を勝手に枕にして横になり出した。

 こいつはこいつでフリーダムすぎる。


「明日は大丈夫かなぁ」

「ダメなら楓子は留守番ね。代わりに色々見てきてあげるわ」

「ん、フウコには面白いお土産買ってくる。シスター服とか。一応正規品」


 それはちょっと欲しい気もする。

 って言うか土産物屋に正規品あっちゃあかんやろ。

 いや土産物屋と言うわけでは無く、この町の洋服屋なら普通に置いてそうだけど。


「ひーどーいーよー! そうなったら半径十メートルに不可視シールド張るからー!」

「それはそれで問題になる。楓子は程よく見られて信徒に熱狂されるくらいが丁度いい」

「えー……」

「ちなみにそこら辺特に無い千絵とシエルは羨ましかったりするか?」

「すると思う?」

「私はドワーフ王国に戻れば同じ感じだよ?」


 千絵に関しては想像通りの答えだったが、シエルはそう言えばそうだったな、である。

 こいつこれでドワーフ社会でも抜群の美人さんらしいから、あっちの公の場ではアイドル的扱いと言ってもいいくらいなのだ。


「シャルはエルフだから少なからず同じ目に遭ってるしな」

「私はシェリールの姿で外を歩くことが少ないから被害は殆ど無い。ただ妙に可愛がられるだけ」


 幼くてかわいいから仕方ない。

 いや今は中学入りたてくらいの少女の風貌なので、完全に子供を相手するように『かわいいかわいい』とはやりにくく、『あっ、あの子将来すげー期待』と言う視線を送る感じだ。

 それはあくまで男目線だけど、同性目線だとコレットがいい見本で、寝る前には必ずシャルを抱きしめて可愛がってから寝に行っている。

 だがその気持ちもわかる。

 だって男だって犯罪とかにならない世の中なら、したいもん。

 やばいなこの思考、いつかこの見た目のシャルに誘導されてハメられてしまうかもしれない。


「んでシエルはいつまでこうしてる気だ」

「だって最近ずーっとトラ子の相手してて、私が入り込む隙無かったんだよー?」


 その上夜は疲れててバタンキューだったものだから、翌朝『つまんない』と拗ねられたものだ。


「確かにトラ子は強敵よね。私や楓子ですらあのお子様系ワガママには太刀打ちできないわ」

「でも最近、急にトラ子が自立し始めたよね?」

「どうもリリアナ達のおかげっぽいんだよな。子分みたいに見てるのか、リリアナ達がいると甘えてこないんだよ」


 リリアナが居なくてガンガン甘えて来てたとしても、シャルの場合は勝手知ったる何とやらでナチュラルにやり合ってたけど。


「でもシエルずるい」


 そう言って反対側にシャルが来た。

 千絵も楓子の隣に座っているので、千絵と楓子がじーっとこっちを見る形になる。


「幼い子を誑かしてるヤバい男の図」

「ちゃんと毎月お手紙書くからね」

「この旅中はお前らと寝ないからな」

「ほんとうに?」


 楓子がじーっと見て来る。


「ごめんなさい」


 俺はその目に弱いのだ。

 そしてその弱い俺を見て千絵が鼻で笑うのだ。


「そういやシャル、あの自称神のオッサンってしばらく何も言って来ないんだろ?」

「ん。話す必要が無いと思ってるならそれでいい。結局重要な事はあまり教えてくれないから、今はいてもいなくても変わらない」


 元々の神託の巫女は、シャルがやりたい事をやる為の方便みたいなものだった。

 実際会いに行って雑談ついでに色々聞きはするらしいが、本当に重要な事なんて殆ど無いと言う。

 今になって思えば、コボルトの魔王の発生の時だって会いに行かなければ何も言って来なかったと思う。

 奴の位置づけ上、シャルを気に入って話し相手として来て欲しいから旨味を与えていただけであって、本来はそう言った交流は持っちゃいけないと思うのだ。

 今はそれが正常な形になっているだけなので、俺もわざわざあいつが何か言って来ないならそれでいいと思っている。

 まぁ近くの山が大噴火とかなったら、俺の全パワーを持って奴の毛をむしり取ってやるけどな。

 結局俺達にとって神とはその程度の相手なので、ジャポニー教なんて全く興味が無いし信じられもしないのだ。



最近Amazonのプライムビデオで適当に見ながら打ち込んでるんですが、基本的に不器用なんで集中しないと進まないんです。

余計な情報をシャットアウトし、光景を頭に浮かべてると勝手にキャラクターが動いてくれるんですが、映画なんか見てたらそっち気になるから頭働くわけねーよ!

で、インターステラーを何となく見ながら思ってました。

2時間もすれば終わるだろと思ったら3時間弱あって、打ち込む時間を考えると大分無駄にした感がありましたが、映画の内容は結構よろしかったです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ