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異世界なんてクソくらえ  作者: 南都河埜
西の国の動乱
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聖地巡礼

とりあえず西の国の動乱と言う形で分けてスタートする事にしました。

ぶっちゃけそっちの話を書くぞ、と決めただけで何も決まっていません。

ああ怖いどうなる事やら。



 サウスルタン関係が簡単に一区切り付くわけ無く、今回の件は俺達だけで抱えるのは非常に面倒な案件だったのでルーベルトの爺様に相談し、公爵家の長男から五男辺りまでの政治に興味ありそうなのを使って対応させようと言う事になった。

 サウスルタン復興担当部署として切り分け、そこでの対応は実行する前に全てこちらに話を通すと言う事になっている。

 こうなると家の意向なんかが絡んでくるのだが、向こうがどんな事を企てるかが準備段階である程度見えて来る位置ではあるし、各公爵家で下手な事をしないように見張り合えるので決して悪い環境では無いだろう。

 と言うのも主にルーベルトの爺様の案だった。

 孫世代にもっと政治関係を学んで欲しいが、自分達が居る以上中々難しい部分もあると。

 だから公爵家の当主と俺がやっているような会議を若手にもやらせ、色々決めて実行をする前にチェックをし、大丈夫なようならやらせたいと。

 どうやら今は爺様方四人と俺の五人制な所を、もっと大所帯にして議会みたいにして取り決めを行いたいようだ。

 それはいいと思うのだが、ちょっとばかしリスキーだとも思うのだ。

 一体どんな無茶な案件が上がってくる事やら。

 とは言え基本的には向こうの自治に任せればいいだけだから、よっぽどいい話でも無ければ突っぱねるだけなんだけどな。


 さて、そんなわけで軌道に乗りつつあるサウスルタン問題だが、全てはトンネル開通があってこそだ。

 千絵とシャルに下調べしておいて貰った所は山脈の谷間で、直線でギリギリ二十キロを切る程度の長さだった。

 谷間と言う事は川になっている場合があるのだが、逆に川じゃない場所は上部に穴を空けて空気穴を作れるので、そこに風系の魔法陣を刻んでおけば風の流れを作れるなと考えた物の、雨水の浸水もあるので結局風の流れを作る魔法陣を組んでトンネル上部に付けることにした。

 現代で言う排ガス換気用のジェットファンみたいな物だ。

 この世界では排ガスは無いが、馬車で二十キロも行くとなると空気が淀んでいては健康被害が出る可能性がある。

 後は掘った後の補強の問題だが、鉄を使うと費用がどえらい事になるし、結局状態固定の魔法をかけておかないと錆びて朽ちてしまう。

 それなら校舎建造に使った質の悪いコンクリを多少でも改良し、施工した後に状態固定の魔法をかけてしまえばいい。

 何にしても鉄筋入りにしなければならないから鉄は必要だが、ベスターの所の鉄は錆びないが建材には勿体ないし高い。

 となるとドワーフのお義父さんにお願いするわけだが、こっちは値切ってオッケーなので安く済む。いやオッケーと言っていい物か良心の呵責はあるけど。

 と言うわけで、その辺りの問題は二週間もすれば都合が付き、その間千絵と楓子には穿孔魔法をしっかり覚えてもらった。

 で、フルパワーである。


「おー……」


 暗いから見えないけど一瞬で高さ五メートル程が物凄い奥まで掘削された。

 通常は丸く掘削される所を、試行錯誤してもらって二人には少し離れて横に並んで、それぞれ高さ五メートルで掘削してもらった。

 この形で掘削すれば一度に馬車二台分は通れるトンネルが出来るので、片側一車線道路が出来ると言うわけだ。

 掘削で出た土は随時楓子が洞窟入り口に転移門で放り出しているのだが、ベスターみたいに同時進行で繊細な魔力操作は難しいようで、最初の一発目は良かったが二回目以降は土の排出に時間を取られるようになり、結局途中から千絵も土を四角くく圧縮してフライで浮かせて運ぶようになった。

 掘削された壁面を触ってみると硬いと言えば硬いのだが、コンクリのような硬質さでは無い。

 そこにシャルが持ってる世界樹製の袋に、それはもう生産能力の限界に挑戦した大量のコンクリと細い鉄鋼を入れてきているので、それを魔法を駆使してコンクリを吹き付けて鉄鋼を貼り付けてコンクリを吹き付けて施工する。

 コンクリ自体は乾燥で固まるわけでも無いので、固まるのをしばらく待たなければならない。

 とは言え一応穿孔魔法で固められてはいるので、一気に掘って一気に施工だ。

 初日に一キロ程やってわかったのは、施工に時間が掛かり過ぎる事だ。

 なので二日目から貧民街から労働力を募って三百人程連れて来て、近くでキャンプできるようにして泊まり込みで働いてもらうことにした。

 給料は破格の一日銀貨五枚である。

 そこまで人を一気に増やしたのには壁面の施工だけでは無く、地面に耐久性の高いレンガを敷き詰める仕事もあったからだ。

 水源の真下だから地下水の浸水はそれなりにあるはずなので、両脇に馬車が脱輪しない程度の溝を掘って一応の排水性を確保した。

 掘り進める方向は水平器を作って千絵達に渡してあるのでほぼ水平だから、後は両端を上り坂にして多少の細工をすれば大量の浸水は滅多な事ではしないはずだ。

 通常のトンネル掘削に比べれば馬鹿げた速度で進んでいると思うのだが、ベスターがやった場合を本人に聞いたら、一週間以内に全て終わるとか言い出したので頭おかしいか魔力が自在すぎだと思う。

 結局トンネル自体は一週間ほどかけて開通させ、その後で壁面に状態固定の魔法を掛けつつ、ライトの魔法は影が消えるからと嫌がる人もいるので各所にランタンの魔法陣を刻んでいく。

 レンガを敷き詰める作業はレンガの焼き上がりに左右されるかなと思ったが、これはドワーフ製も王国製も品質に大きな差が無かったので、二国で作りまくって二週間で敷き詰め終わった。

 今回の為に簡単な魔法陣を勉強したのだが、魔法の発現を記号によって行うものらしい。

 必ず起動と停止のスイッチがあり、発現する魔法を構成する記号が丸の中に詰め込まれる。

 人はそれの起動と停止の命令が出来る魔力さえあれば、後は大地に満ちる魔力が尽きるまで魔法を維持してくれるらしい。

 俺には刻む事が出来ても使う事は出来ない。

 で、面白いのが言語体系が地方によって違うように、魔法陣も変わると言う。

 つまり、誰かがそう定義しているから意味を為していると言う事で、魔力はそれを感知して発動させていると言う事だ。

 この原理は解明されていないようだが、どうやら地脈にデータが蓄積されているのではと言う話もあるらしい。


「まさかあれから一ヶ月でトンネルが出来るとは思ってもみませんでしたわ」


 リリアナの母親を始めとした、サウスルタン『地方』の有力貴族のご婦人達が作る『婦人会』の賛同は個人的に得られた。

 やはり亜人関係では批難を受けてしまったが、それ以外では概ねサウスルタン側が得と思っていただけたらしい。

 トンネルの開通式もそう言った婦人会の皆々様と、王国の一部のお偉いさんを連れてさっさと終わらせた。

 これで南北の交通網は改善された。





 あんまりにもドタバタし過ぎていたので、一週間休みますと公示した。

 そう、公に俺は一週間休んでやると言ってやったのだ。

 それはもう各所に、『最近の激務で疲れたので一週間の休養を申請した』と。

 勿論公爵家には話を通してあるし、サウスルタン復興担当部署の方も稼働をようやく始めた所なので一週間くらいならまともな案も纏まらず停滞する事だろう。

 今の内しかない、と思ったのだ。


「と言うわけで来ました聖地、ジャポニーゼ」


 今回は『次期国王のトモヤが聖地を巡礼した』と言うパフォーマンスもあるので、シャルは表にいる間シェリールとして振舞って貰わなければならない。

 なので城からシェリールの姿で転移門を使って貰い、聖地の周りを町として作ったジャポニーゼに到着した。

 これでジャポネーゼだったら日本人と関係あるのかよと突っ込む所だったが、あくまでジャポニー教の聖地としてそう言う名前らしい。

 まぁあの自称神様はどう見たって日本人だから関係はあるんだろうけどさ。

 今回はトラ子もリリアナ達三人の護衛で残っているので、子守りも無くて気楽な物だ。

 駄々をこねるかと思ったのだが、どうもリリアナ達を子分的な位置づけにしているのか、魔王猫ならぬボス猫として目覚めたのか、案外あっさりと受け入れてくれた。

 と言うわけで純粋に夫婦での聖地巡礼になったのだ。


「で、シェリール。一応宿の手配は済んでいるけど場所がわからない」

「私も店の位置までは知らないわ」


 メモをシェリールに見せてたが知らないと言われてしまった。

 五人で町の入り口に居るのも邪魔なので、周りの店を見ながらぶらぶらする事にした。

 こうなると女性陣は強い。

 ちょっとした土産物ですら話のネタにすれば一時間は喋れるんじゃないだろうか。


「トモヤってこういう帽子似合わないよねー」

「失礼な」


 シエルにどんな帽子か知らないが売り物を被らされ、それをみんなが見る。

 めっちゃ笑いを堪えていた。

 なんてこった。


「トモヤ、あそこが宿みたいよ」


 一般的に大きな街だったりすると門の傍に宿を作るらしい。

 それは外から来る人が宿を使うからで、大抵行商人で馬車を持っているので中心地に一々入れるのも面倒なのと、わざわざ中心部に作るのも住民にとっては邪魔だからだ。

 だがこの町の場合は観光用、もしくはハネムーン用の宿なので、神殿が一望できる位置に公爵家の王都別邸と大差無い屋敷があり、そこが宿だと入り口に看板が出ているのだ。

 これは聖地巡礼に来るのは敬虔な教徒か金持ちかのほぼ二択で、この宿は金持ち用と言う事らしい。

 何も知らずにルーベルトの爺様に宿の手配をお願いしちゃったからなぁ。


「落ち着かない」

「王城で暮らしてて何言ってんのかしら」


 シェリールに呆れながら俺達は外門をくぐると、それに反応してか中から執事風の四十代を越したくらいのおじさんが扉を開けて迎え入れてくれた。


「お待ちしておりましたトモヤ様、シェリール王女」


 一応本妻言う事に世間的にはなっているので、こうして声を掛けられるのはシェリールまでの事が多い。


「あちらで係の者が承ります」

「ありがとう」


 シェリールがにこやかに返し、俺達は受付のカウンターへ向かう。


「お待ちしておりましたトモヤ様。宿泊のご予定は三日と言う事になっておりますが、お変わりありませんか?」

「はい」

「何か大きなお荷物がございましたら、お申しつけ頂ければこちらでお預かりいたします」

「特にありませんので」

「ツアー等のご用命も承っております。何かありましたらお部屋にありますベルを鳴らして頂ければ、係の者がすぐにお伺いいたします」

「ありがとうございます」

「それでは、お部屋は最上階のロイヤルスイートとなっております。あの者がご案内いたします。ではごゆっくりお寛ぎください」


 そう言って手で指し示した先にはボーイ風の男が恭しく頭を下げて待っていた。

 立場的に仕方ないのだろうけど、どうにも肩が凝る。

 にしても最上階か。

 この世界にはエレベーターやエスカレーターと言う物が無い。

 恐らく作ろうと思えば作れるのだろうけど、それなりに魔力の潤沢で、滅茶苦茶緻密に魔法陣を組める人でないと設置式は難しいだろう。

 少なくとも魔力消費的に常用使い出来る代物では無い。

 と言うわけで階段を上がるのだが、最上階は五階らしい。

 フライで飛んだ方が早いのだが、案内係が居る以上付いて行かなくては。

 ただ、幸いな事にそれなりに動き回ってる事と、最近の多忙の前までは一応しっかりトレーニングしていた事も有って、思いのほか息も切れず五階まで上がれた。


「こちら、ワンフロアがロイヤルスイートとなっております。ご用意しておりますお飲み物等はご自由にお飲みいただいて構いません。その他設備等でわからない事がありましたら、各部屋にありますベルを鳴らして頂ければ私が駆け付けます」

「はい」

「ではごゆっくりお寛ぎください」


 さて。

 なんか知らんが物凄い部屋を予約されていた。

 五階ワンフロア丸々独り占め――じゃない俺達が使うとか金持ちか。


「ちょっと凄いわよ智也。このソファー埋まるくらい柔らかいの」

「智也君智也君、景色凄いよー」

「こらチエ、フウコ、落ち着く。一休みしたら観光するんだから」


 シャルは人目が無くなった瞬間縮んだ。

 最近ようやく少女シャルに慣れてきたけど、結局中身は同じシャルだ。


「ねー、このフルーツ食べていいんでしょー?」

「あのねシエル……」


 シャルが頭を抱えていた。


「シエルならどんだけ食べても問題無いだろうけど、この後外で軽く食べる予定があって、尚且つ夕食もここで出るんだから」

「そうそう私ならだいじょーぶ」


 既にバナナっぽいのを口から生やして次は何にしようかなと物色していた。

 俺はバルコニーに居る楓子の所へ行き、外を見下ろしてみた。

 流石ここに宿を建てるだけあって、目の前には神殿がでかでかと見える。

 道行く人たちは殆どがジャポニー教徒の服装、つまり教会の職員やシスターが着てる服装だった。

 どうやらそう言った物を着てる人の殆どは神殿で働く教徒らしい。

 その殆どから漏れる人が巡礼者の一部で、私服でいる人も大抵が巡礼者だとか。

 つまり殆どが教会関係か敬虔な教徒。

 と言うよりも、この町の観光資源が神殿くらいしか無いだけの話なのだが、しかしこの辺りの国々の人間が全員教徒だと言うので、神殿さえあれば成り立つ町なのだ。

 その神殿がある事で、教徒が歩く町並みが非常にマッチして見えるのも当然の事だった。

 神殿はこの町の中心部にあるが、遥か昔に出来て状態維持の魔法が掛けられているせいか、神殿の周りだけ長年の風雨に侵食され十メートルくらい上がってしまっている。

 そのせいで余計神殿が特別に見えて来る。


「とりあえず一日くらい思いっきり寝たい」

「ここの所忙しかったもんね。私と寝るとぐっすりだよ?」


 なんて楓子さんが小悪魔な笑みを浮かべて言うので、やっべ落とされるかもとか軽く思ってしまう今日この頃。

 実際楓子のユニークスキルのせいで、一番安らかに眠れてしまうから否定も出来ないのだけど。


「ねー智也、とりあえず神殿行くんでしょ?」

「挨拶だけしておかないとな」


 教皇の話では、神殿は大司教が代表をやっているらしい。

 主に巡礼者の悩みを聞き神に伝えるのが仕事だなんて言っていたが、実際は殆ど事務作業だろう。


「楓子は気を付けろよ。ただでさえ教会が手ぐすね引いて待ってるんだから」

「やだなぁ。教会でちょっとした治療とかならいいけど幹部になっても何もできないよ」

「あんたは存在が女神だから、それでオッケーなのよ」

「ちーちゃん変わってよ」

「嫌よめんどくさい」


 おお神よ。

 お前を信じてないからこういう会話になるんだからな。


「でもさ、あのベルボーイって言っていいのか、鳴らせば来るって事はそこら辺に居るんだろ」


 そう言いながら探知を掛けると、この階と下の階の間に待機スペースがあるようで、そこで待機しているっぽい。

 ベル自体が恐らく魔道具だと思うので、会話を聞かれる心配は無いか。


「なんで?」

「いや会話が聞かれるようならシャルの気の休まる暇が無いと思って」

「それなら出てく」


 本気でやりかねん。


「じゃ、各自三十分休憩したら行く」


 むん、とシャルが気合を入れて言った。

 こいつ、もしかしてこの場で一番楽しみにしてたんじゃないのか?




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