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戦後処理 その2



 夜、王国に帰って来るとルーベルトの爺様に会いに行った。

 王国内も今回の件で大騒ぎ、と言うわけでも無い。

 主に学校と教会付近は大騒ぎだが、基本的に王都の人達はいつもと変わらぬ生活だ。

 サウスルタンがオークによって制圧された事も発表していないから知らないだろう。

 知った所で、あの国とは高い山脈で阻まれているので対岸の火事程も気にしていないだろう。

 その証拠に、オークが侵攻してきたと発表しても、聞こえてくるのは自国の話ばかりだ。

 まぁそれも仕方あるまい。

 外の事まで気にしてる人間の方が少ないし、何なら貴族ですら気にしてる人間はほとんどいないだろう。

 その点、しっかり考えているのがルーベルトの爺様だ。


「夜分遅くに申し訳ありません」

「いや、いい」


 昼頃来た時も、まさか俺が徒歩で尋ねて来るとはと言う執事の対応だったが、それも二回目になると驚きも減るらしい。

 普通にルーベルトの爺様に繋いでもらえたし、ルーベルトの爺様も予想はしていなかったろうが俺が来ても驚かず応接室に通してくれた。

 そこで俺はやたら高そうなソファーに腰かけ、ルーベルトの爺様はブランデーっぽいのをグラスに注いで口を付ける。


「それで、向こうの様子はどうだったのだ」

「首脳陣は軒並み。代わりになりそうな貴族も大体が食われるか渓谷から捨てられるかしたようです」

「では話し合いにならぬではないか」


 結局その部分が一番重要なのだ。

 向こうが全滅ならどうにでも出来るからいいのだが、それなりの国民と貴族が残っている。


「ただ、ベスターが最初に保護した三人の一人に、共和国代表の娘がいるんです」

「ほう」


 それは何よりとルーベルトの爺様が歳の割に皺の無い眉間に皺を寄せた。

 使い物にならんと思っているのだろう。


「それで、そちらはどうなりましたか?」

「私とロメオは彼の国を吸収してしまおうと言ったが、他の二人は亜人の生息域に接するから放置してしまえとの事だ」

「おー……。そこまで亜人を嫌ってる物なんですね」

「嫌わぬ理由は無い。が、あの国は豊かだから見過ごせん」


 って事はルーベルトの爺様と、恐らくシェーバーのロメオも亜人を好んでは居ないな。と言うか多分嫌ってるな。

 そこに突っ込んだところでどうしようもないので、ここは触れないでおこう。

 多分シェーバー家が吸収に賛成なのは、あの地を南側だからと自分の領地に取り込むつもりだろう。


「そう言うトモヤはどう考えておるのだ」

「サウスルタンが独立して復興出来るんであれば、その支援はしようと思います」

「どう考えても出来ないと思うのだが」


 ですよねー。

 でもしてくれなきゃ困るんだ。


「出来ない場合は、数年間うちに編入させて復興させて戻そうかと」

「王国に得が無いではないか」

「得と言うのなら流通の為に山脈にトンネルを作る必要がありますし、入り込んだ亜人をどうにかする必要があります」

「そこを相談したいのだ」

「いきなり折衷案を出していいですか?」

「……待て、トモヤ。この流れは何となくわかるぞ。博愛主義も行き過ぎたら支持は得られんぞ」

「まぁまぁ、南の地で生活できるだけの肉体の強さを持った亜人も使い方次第です」

「だが奴等も人を憎んでおる」

「それに関してはこっちで話付けますんで。それに渓谷の南までを亜人の住処として住み分けるつもりです」

「サウスルタンの領土を狭めるのか? それは不満しか生まれんぞ」


 それに関しては不満を持つ人間が狭められた。


「渓谷から南は全滅です」

「それでも領土である以上、サウスルタンの貴族共がこぞって所有権を主張するだろう」

「貴族は子供以外男はほぼやられました」

「……我々に都合のいい形で転がり込みすぎではないか?」

「オークが無駄に頭の回る種だったせいです。あいつら国の機能をマヒさせて、万が一にも反乱させないようにしたようです。元々オークは王国に移って来る予定で、サウスルタンは亜人に明け渡すつもりだったみたいなので」

「残りの民衆は全て食料だったか」

「ベスターの話だと、人を家畜として育てて輸出しないかって話しもあったらしいです。恐らく亜人にサウスルタンの人達を繁殖させて、オークが支配した王国に出荷させるつもりだったんではないかと」

「んーむ……。こっちの好きなように出来る状態ではあるが、それなら亜人を受け入れろと言う事で間違いは無いか?」


 勝手にいいように解釈されてしまった。


「いえ、亜人に関しては反発が大きいので渓谷から先に隔離と言う事で放っておきましょうってだけです。とりあえず今のところは」

「その反発も出ないから問題は無いと」

「出なくは無いでしょうが、十分対応しきれる範囲です」

「そこまで亜人を優遇する理由を聞いていいか?」

「逆です。迫害する理由が無いから妥当な範囲で話を収めたいんです。これから良き隣人となる可能性もありますので」

「……魔人といい亜人といい、通常人間は忌避する存在だ。トモヤにはそう言うこの世界の常識が無いからだろうが、魔人はベスター殿がいたから良かったが、亜人はそうもいくまい」

「ですので今回に関しては渓谷で分けてしまって、今後どうしようか考えようと思います。そうですね、例えば暑い土地でしか採れない果実等も有りますし、そう言った物を育てて貰うとか」

「それが王国の為になるのか?」

「この王国は、仮にシェーバー領の地脈が成長して魔力が潤沢になったとしても、他の国に比べればそこまで豊かではありません」

「それに関してはエルフの治世が大きな要因だったわけだが」


 そう、賭けに負けたからと言う理由で先代もお義父さんも王位に就いているだけで、特に仕事なんてする気は無い。

 その証拠に千五百年前と今とで町や村の数は増えずに減っているくらいだ。

 つまり王国の民が減っている、国力が落ちているわけである。

 辺りには平原や森や小高い山がいくつもあるが、特に開発されるわけも無くそこに有るだけだ。

 本当ならもっと町や村を作って土地を耕して王国を豊かにしなければならないのだ。


「その辺りに関しては一応考えてないわけでも無いんです。ただ、現状すぐに人口が増えるわけでもありませんし、増やすためには数百年を掛けなければなりません。となれば外からの労働力に頼る他なくなります」

「亜人を王国に入れる事だけは認められん。いや、百歩譲ってトモヤが責任を持つと言うのであれば私は認めてもいい。だがこの国の民、僻地の村々の住民まで亜人を受け入れようとする人間はおらんぞ」

「別に受け入れなくていいと思います。仕方ありませんし。ただ、行商人は商売になるとわかれば嫌でも亜人と交流を持ちますし、商品は王国に入ってきます。それに需要があれば」

「……うむ」

「それによって亜人にも色々な商品が行き渡る事にはなるでしょうが、それは渓谷の先の話です。対岸が何となく見える程度の。王国製のものを使ってる等の過剰反応さえ無ければ問題ないかと」

「……王国に入れる気は無い、と言うのは本当だな?」

「将来的には考えてますよ? ですがそれはある程度支持を得られてからです」

「……仕方あるまい。最低ラインさえ守ってくれるのであれば、トモヤのやる事に賛同するとしよう」

「ありがとうございます」

「だが、サウスルタンは吸収する方向で行こうと思う」

「構いませんが、その場合、あちらの代表を選出して侯爵位とあちらの領土を与えるつもりです」

「ちょっと待て」


 すんなり行かないのが困る。


「それでは吸収した意味が無いではないか」

「このままいくと暫定でシェーバー家が統治する事になるでしょう?」

「ん……まぁそうなるだろうな。ロメオもそのつもりで考えているだろう」

「でも山脈の向こうですし、誰か代理に統治させると思います」

「まぁ可能性は高いな」

「妥当なのは?」

「……シュバインシュタイガー家か。確かにあの家はキナ臭いが、かと言って王国の仲間であろう。ジークフリートは無表情なせいで怖がられやすいが、あれで実直な男だぞ?」

「オフレコでお願いしますけど、結婚前ですがシエルと二人でいる時にあの家の手先に襲われたことがあります。それをベスターの娘が追いかけて突き止め、今後そう言う事が無いように脅しを掛けてくれたことがあるんです」

「それは本当か」

「脅しをかけた時にバレると不味い書類を大量に処分したらしいのですが、それはフローラさんの手に渡って復元済みです」

「……何をやらかしていた?」

「正直な所拍子抜けでした。ちょっとした裏取引ばかりです。が、フローラさんの話ですと何か『匂う』との事なので、しばらく泳がせている所です」

「つまり、その証拠では家を取り潰せない程度だと言う事だな」

「ええ、まぁ」


 主にシェーバー家の分家や親戚筋の会社との怪しい取引や裏工作の証拠で、それほど大きな問題になりそうな物が無かったので告発を断念した物だ。

 大体が娘の為に便宜を図っているとか希少品を手に入れる為とかで、王国や王家に何かしようとした証拠にはなりえない。

 だが、その程度ならわざわざ証拠隠滅する必要も無く、経理上のミスだとかで誤魔化せる範囲だと思うのだ。

 それを隠そうとしたのだから、何かしら裏があるのではと言うのがフローラさんの考えである。


「トモヤがあの家を警戒しているのはわかった。だがしかし、領地を与えると言うのはだな」

「領土です。まだ一応サウスルタンと言う国ですから今は」

「まぁいい、しかしやり過ぎではないか」

「それくらいしておけばサウスルタンの国民からの反発も無いでしょう。復興のために一度王国に吸収し、王国の援助を受けて復興したら独立に向けて動けばいい。そう言う事にしておけば」

「……トモヤよ、私はお前の考えが偶にだが何となくわかるようになってきたぞ。お前は本当に返すつもりだな」

「気のせいです」

「……まぁいい、どうせ私は後二十年も生きないであろう。将来の事は若い者に託すとしようではないか」

「そんなあっさり引いていいんですか?」

「エルフの治世も終わろうとしているのだ。大きな変化がこれからいくつもある事だろう。それ全てに反発していたら身が持たん」


 ルーベルトの爺様は、そう言ってため息をついて脱力した。


「だが、そうなると今日の会議は殆ど無駄だったな」

「申し訳ないです」

「他に何か先に言っておいた方がいい事とか無いのか? 後になって驚くのは嫌なのだが」

「えーっと、うーん、あ」

「あ?」


 怖いよ爺様。


「リザードマンの集落があったので、今度行って話しできるか確認してきます。話が通じるならその場で何とかしますし、通じないならベスターが請け負うっぽいです」

「……この王国は既に大魔王が居なければ立ち行かない状況にあるのだな……。オークの魔王の件といい。ちなみにその件は一応耳には入っているぞ」

「オークの魔王に関しては、千絵や楓子で十分勝てる相手でした。戦い方が悪かっただけで」

「仲がいいのは悪い事では無いが、今後国の代表となるのであれば、魔人の王と一定の距離を取るべきだ。さもないと魔人の国と同列に見られる事なるぞ」

「気を付けます」


 別にそれでもいいと思うけどな。

 人だろうが魔人だろうが亜人だろうが、お互いを尊重して暮らせるのであれば。


「こんな所でしょうか」

「何がこんな所だ。多すぎて眩暈がするわ」

「いつもいつもありがとうございます」

「今度何かしてもらうからな。覚悟しておいてもらおう」

「一応ですが、発注したダマスカスの装飾剣は世界樹の根元に落ちていた枝を使って鍛えて貰っているので、多分気に行って貰えると思います」

「……爺を転がして楽しいか? ん?」

「普通の装飾剣がよろしければ発注し直しますが」

「わかった。手を打とう。だが先ほども言ったが最低ラインだけは守ってもらうからな」

「わかっています」


 俺は立ち上がり、一礼をした。


「お前は何でそこまで頑張るんだ」

「成り行きです。そうする事で、千絵や楓子、シェリールやシエルが住みやすい世の中になるのが一番で、結果として嫁達が安心して生活できる国にするのが今の目標です」

「それなら尚更内側に敵は作らないようにな」

「最近は賄賂と言う手段を覚えましたので」

「む、腹が痛くなってきたな」


 勿論そんな物に頼らないで友好を育みたいとは思う。

 だが、貴族には結局金品が一番好まれるのだから仕方ない。





 王城に戻ると、あの三人は手持無沙汰にリビングにいた。

 元々知り合いのようだが、立場上の差みたいなものを感じさせない程度には交流があった間柄っぽい。

 今日は昼前に一回帰って来て、その時には三人とも勿論起きていたのだが俺達がいない事でどうしていいものかとなり、マリーネに相談したら『とりあえず朝食を』と勧められ、それが終わってぼーっとしてたら俺達が帰って来たようだ。

 そこでトラ子は三人を心配してか城に残り、俺はオークの魔王が倒れた事をざっと話して他所へ行ってしまった。

 彼女たちはそこから情報がほぼ途絶えていて、結局猫モードのトラ子と遊んで過ごしていたらしい。


「と言う事で、一応サウスルタンを開放する事には成功した。えーっと、自己紹介やり直しとく?」


 と言うのも、彼女たちの名前を聞いていなかったからだ。


「俺はトモヤ。一応この王国の次期国王って事になってる。と言うのも王女を嫁に貰ったからだ。こっちが王女のシェリール、ドワーフ王国の王女で嫁のシエル、勇者でアークウィザードの千絵、勇者でアークプリーストで王国では女神って呼ばれてる楓子だ」

「私はリリアナ・ピカッソです。ピカッソ家は今は共和国代表を努めています」


 三人とも少女の見た目なので年齢も微妙に自分達より下だと思うのだが、貴族なだけあってしっかりしている。

 このリリアナは肩にかかるくらいの髪を今は紐で一本に縛っていて、意思の強そうな目でこちらを見て来る。

 背は楓子より少し低いくらいだったと思うが、それ以外の成長は千絵より少し劣る程度だろうか。まぁ主に胸の話だけど。


「私はフェリシア・ウリアスです。ウリアス家は公爵家で、主に財務を担当する家です」


 フェリシアは三人の中では一番幼く見えるが、それでもシャルより大分お姉さんに見える位しっかりしている。

 背もリリアナより少し低いし細見で華奢だが、やはり意思の強さを感じる視線を向けて来る。

 全員黒髪なのだが、このフェリシアはやや赤毛っぽいボブカットだった。


「私はパトリシア・バレンティンです。バレンティンは侯爵家で、主に南方の統治と亜人に対応するために軍部に強い発言権を持つ家です」


 とは言うが渓谷の先に住んでいたわけでは無いらしい。

 パトリシアはラテン系の血が濃いと言えばいいのか、特に目鼻立ちがはっきりした少女だった。

 この中では一番年上に見えるが、それでもほわほわしてるせいで少し幼く見える楓子よりも下に見える。


「うん、では単刀直入に言うと、どうやら主だった家の当主や男子は子供を除いてやられてしまったらしい。そこは多分理解してるよね?」

「はい」


 そう答えたのはリリアナで、どうやらこの様子だとオークの凶行を目撃しているのかもしれない。


「と言う事はつまりリリアナ、君がサウスルタンでどういう人間になるかもわかっているかな」

「お父様の跡を継ぐべきだと言うのでしょうか」

「と言うか王国としては、サウスルタンの誰と話をすればいいのかわからなくて困っている。だから矢面に立って欲しい」

「トモヤ様はサウスルタンをどのようにするおつもりですか?」


 様付けに突っ込もうかと思ったけど、一々面倒なのでスルーする事にした。


「今のサウスルタンは昼間言ったように亜人が入り込んでいる」


 そう言った瞬間、聞いていたはずなのに三人とも心底嫌そうな顔をした。


「とりあえずそれを渓谷の南にやって、そこに境界線を引き直そうと思っている」

「何故ですか。そこはまだサウスルタンの領土です」

「何故か、それは亜人も南の暑さにやられて逃げてきたからだ。そして俺達は異世界人で、亜人も魔人も差別する気が無いからだ」


 そう言うと、俺を敵視するような目になってしまった。


「元々南は全滅で困る人もいない。その辺りを考えての判断なんだ。そこさえ目を瞑ってもらえたら、サウスルタンが独自に復興を目指すなら支援は惜しまない」

「……独自に復興出来るとお思いですか?」

「申し訳ないけど思わない」

「――私が嫁げばいいのですか?」


 その言葉に我が嫁達から一斉に視線を感じて目を背けた。


「嫁は間に合ってる。いやちょっと意地悪な言い方をした。サウスルタンを王国に一時編入させて、復興して指導者が育ったら独立する。それが俺の考えている形だ」

「そんな都合のいい事を信じるとでも?」

「亜人に対して優しくする俺がサウスルタンの復興に尽力しないとでも?」

「……」

「その代わりに亜人が渓谷の先にいても目を瞑れって事だ」

「……指導者はどうするのですか?」

「とりあえず共和国として成り立たないだろう。主だった人間が死んでしまったのだから」

「はい」

「だから、君を女王として据えようと思う」

「私でなくとも相応しい家があるでしょう。どこかに男の子がいるでしょうし」

「復興に当たっては当代の縁者の方が国民の支持を集めやすい。君の家に侯爵位を与えてサウスルタンの地を与えるから、そこで国の運営とかの勉強をしてほしい」

「何故王国で全て奪ってしまわないのですか?」

「面倒だから。サウスルタンを吸収合併するとなると他の国から色々文句を言われるらしいし」

「話し合いの末の合併で無いのだから当然です」

「で、これらの話が実はまだ未確定で、一応根回しはしてあるけどどこまで通るかわからない」


 ぽかんとされました。


「まぁ悪いようにはしないから」

「……私達は、これからどうすればいいのでしょうか。国へはいつ帰れるのでしょうか」

「まだ足を潰された人たちの回復が済んでないんだ。それが終わったとしても、いつ帰れるかは今のところわからないんだけど」

「そうですか……」


 未確定の事だったせいで失望されたっぽいんだが。


「とりあえずそう言う形で動くって事を知っておいて欲しかったんだ。それと、ここにいる間に何かやりたい事とかあったら言って欲しい。出来る限り叶えるから」

「では、王国の貴族の方々とお会いしてみたいです」

「……地盤固め?」

「そう思っていただければ」


 思った以上にしっかりしてると言うかタフな子だ。


「わかった。ちなみにフェリシアやパトリシアも協力してくれるなら相応の待遇を用意しようと思う。そこまで自立して動けそうに無いって言うならリリアナの手伝いをしてくれればいいし、勿論リリアナと同じように何か要望があれば言って貰えれば出来る限りの事はするよ」

「あの、でしたら私も……。怪我をされた方々の世話位でしたら出来ると思いますので」

「それでしたら私も」


 フェリシアの提案にパトリシアが乗って来た。

 実際の所、魔法で回復させたら終わりなので特にやる事は無いと思うのだが、二人ともどうやら有名な貴族の娘らしいし、その顔を見せれば安心なり元気づけになるかもしれない。


「じゃあそれで。衣類に関してはうちので合いそうなのが無いから、明日にでも用意――自分で選びたいか、うちの誰かに連れて行って貰おう」

「じゃあ私が連れて行くわよ」

「んじゃ千絵に任せた」

「それと、その……」


 フェリシアが申し訳なさそうに小さく手を上げる。


「あの子、構っていいですか?」


 そう言って小さく上げた手の人差し指を部屋の隅に向ける。

 トラ子が猫モードで水を飲んでいた。


「普段から暇してるから好きなだけどうぞ」

「やった」

「私もー!」


 むしろ後追いのパトリシアの方が望んでたくらいの勢いだが、それを見てうずうずしてるリリアナもいる。


「トラ子、この三人の面倒を任せる」

「にゃー?」


 おいでおいでと手招きするとトコトコとやって来て、シュルっと人型に変わる。

 変わるなら最初に言っておいてくれないと服がだな。

 慌てて道具袋からトラ子のワンピースを出して上から被せると、三人の方を向かせた。


「お前はこの三人より強いだろ?」

「うんー」

「この三人は今日からパパ達の仲間だから、守ってやってくれ」

「してるよ?」

「もっと。一緒に遊んでくれるらしいから」

「わかったー」


 よしよしと頭を撫でる。

 これで彼女達があちこち動き回って、なんかしらに利益を見出して狙おうとするのがいても大丈夫だろう。

 少なくとも俺が考えている通りに事が進めば、リリアナは女王になるのだ。

 そして恐らくフェリシアとパトリシアは側近だろう。

 少なくともそう育てるように仕向けるつもりなので、彼女たちはサウスルタンと言う地の利権その物と言ってもいい。

 護衛をどうしようか悩んでいたがこれで解決だ。


「で、智也君、一通り終わったら私達に時間作ってくれるんだよね?」

「あ、はい……」


 前にチラッと聖地巡礼の話をしていたので、この場に居る嫁ーずはそっちの方が本題らしい。

 いや勿論考えているけど、その前にサウスルタンの件ってどれくらいで片付く目途が付く事やら。

 少なくとも公爵家の当主達や主だった伯爵家の当主辺りには納得してもらわなければならない事が多い。

 ルーベルトの爺様を味方に引き込んでいるとは言え、亜人関係が絡むと分が悪いと言ってもいいだろう。

 


まだもうちょっとオーク編引っ張りそうです。


それと体調不良で数日止まるかも

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