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コボルトとゴブリン



 会議が終わって次はシャルの演説だが、そっちを見てる余裕も無く休憩に戻って来たベスターに頼んでコボルトの集落に飛んできた。

 護衛は引き続き楓子とトラ子である。


「これはこれは、お忙しい中どうなさいましたか」

「昨日は中途半端な状態ですみませんでした。特に変わりはありませんでしたか?」

「ええ、一応見張りを置いていますが、あれから地脈の穴からオークが出て来ることはありませんね」


 まぁそれはそうだと思っていた。

 これで出てきていたら、まだまだ潜んでる可能性が跳ね上がってしまう。


「昨日の模擬戦の結果が微妙でしたけど、コボルトの方々の反応はどうでしたか?」

「悪くは無いですよ。限定的な条件での戦いでしたが、隠さず言えば恨みのある人間相手にあれだけ真っ向から戦えたわけですから。頭のいい者などは、最初の激突の時点で仮に人間側がフレイムバースト等の強力な魔法を乱射していた場合、こちらの被害が甚大で勝ち目が無かっただろうと予想していました。そう言う者が出る位には意義のあった戦いだったと思います」


 闇雲に人間殺すな状態からは変わったと言う事だろうか。

 補助魔法に関しては人間側の方が得意分野らしく、シールドの強度は圧倒的に魔法師団の方が上だった。

 だから魔法の打ち合いになった場合、タワーシールドで身を守る近衛兵団を崩しきれなかったと見ているのだろう。


「そちらの武器がまともな物だったらこっち側がやられていた可能性もあるわけですし、お互いさまと言うか引き分けと言う結果で良かったと言うか」

「しかし不完全燃焼の者も多く、また今度企画してもらえたらなと思っています。もしくはドワーフの彼女との戦いでもいいのですが」

「それなら時間が出来次第可能ですけど」


 流石に二か月連続模擬戦とかは王国の状況とか資金的な問題で無理だ。

 次があるとしても来年だろう。


「で、今日はその話とは別に聞きたいことがあって来たんです」

「聞きたい事ですか。知識量ではそちらのベスター殿の方が豊富だと思うのですが」

「元々知っていると言う知識ある魔王である貴方の意見も聞きたいんです」


 コボルトの魔王はどう言うわけか元々色々な知識を知っている。

 それによって仲間や装備を強化し、通常の魔王の魔力での同族強化も含め二段階パワーアップさせているのだ。

 その知識がどこから来たのか知らないが、本で得た知識のベスターとはまた違った知識なので聞いておいて損は無い。


「実は王国の北の方でゴブリンが増えてるみたいで」

「あー……なるほど」


 ゴブリンと聞いて顔が引き締まったように見えた。

 元々表情筋があるのかわからない犬面のコボルトではあるが。


「それは我々のせいですね。皆がここに集まってしまったが故に」

「そう言うのはいいんです。元々コボルトがいない地だったかもしれないですし」

「いえ、魔物の好む環境と言うのはある程度決まっていまして、コボルトとゴブリンは同一なのです。そこが深い森で地脈に近ければ、必ず近い場所に集落を作って争いに発展します」


 確かに太い地脈に近い所ではある。


「その顔を見るにそうだったのでしょうね」

「とりあえず置いといて、ゴブリンって結局どんな魔物なんですか?」

「小鬼とも呼ばれる小さい魔物ですね。人間の子供ほどのサイズで一ヶ月に一回複数の子供を産むとされていて、とにかく増えるのが早いのが特徴です。オークと同じく亜人系や人間との交配が可能で必ずゴブリンとして産まれてきますが、特に人間との交配の場合ホブやロードと言った上位種になる可能性が上がるようです。これは魔力量の関係なのでしょう」


 あの子供サイズの小鬼が女性を襲うのを想像すると虫唾が走る。

 と言うか単純に嫌悪感で死にそうだ。


「だからこそ、一定数を超えて戦力の確保が出来るとゴブリンは村々を襲い人間の女性を攫います。ですがゴブリンの出産ペースに体が付いていけず、すぐに女性は衰弱して死んでしまうそうです。遥か昔にゴブリンが大陸を制圧しかけた事があるようですが、それも結局は増えるペースが落ちて周囲の魔物や反攻に出た人間によって狩りつくされたようです」


 となるとやはり個々は強くないからだろう。

 ベスターがオーク侵攻の時に『数の暴力と言う物は時に状況をひっくり返す』なんて言っていたが、オークよりもゴブリンにこそふさわしい言葉だ。


「魔王が殆ど出ないみたいですけど」

「過去数度成長した事があるようですが、ゴブリンは同種でも出る杭は打つ実力社会です。仮に魔王が産まれた場合、その時の群れのリーダーが立場を追われるのを恐れて殺してしまうでしょう」

「んな……」


 魔王の魔力によって群れ全体が強化されると言われているのに。

 では制圧しかけた時も、実は産まれていたのかもしれない。

 もしそれが生きていたとしたら歴史は変わっていただろう。


「奴らは愚かです。ですが、集団とその愚かさは合わさるととんでもない事になります。我々コボルトは縄張り争いだけではなく、単純にゴブリンを嫌っているのです。あれと同じ魔物と区別されるだけでも耐えがたいと思う程に」


 馬が合わないとかではなく犬猿の仲か。


「よろしければそのゴブリン討伐、私達にやらせてもらえないでしょうか」

「……むしろいいんですか?」


 そんな話になると思っていなかったから、こっちも何て答えていいか迷ってしまった。


「ええ、不完全燃焼なのが大勢いますから、丁度いい発散になるでしょう。今の私の力ならロードが発生していたとしても何とかなりますし、他の者達もホブが居た所で問題無いと思います」

「まぁやりたいと言うのならお任せしますけど……。ベスター、後で送れる?」

「一度フローラに近くの町まで飛んでもらう必要があるな。その後でゴブリンの集落のある森まで行き、そこを私が覚えれば可能だ」

「じゃあそれで」

「うむ。人手が足らない今、丁度いい提案だったな」

「では私は皆を集めて説明して来ます。すみませんがこれで失礼します」

「うむ、では明日の午前中にでも迎えに来よう。こちらも慌ただしくしているので時間が読めないが、早い内に来るつもりだからそのつもりでいて欲しい」

「わかりました」


 そう言ってコボルトの魔王がログハウスを出て行く。

 会話がわからない楓子とトラ子はポカンとしているが、話が終わったらしいとわかるとトラ子は人の膝に無理やり乗って来てゴロゴロ喉を鳴らし始めた。

 いやほんと猫ってフリーダムな。まぁ話してる最中に来ないだけマシか。


「では帰ろう」

「ごめん、休憩するはずだったのに」

「いや有意義だった。私の知識以上にアレは知っているとは思っていたが、なるほどそう言う事かと納得した」


 いやほんと、あの時コボルトの魔王を問答無用に倒さず友好路線で行っておいて良かったと思うよ。


 戻ってくるとシャルの演説は終わったようで、リビングでぐてーとテーブルに突っ伏してるシャルがいた。


「お疲れ、どうだった?」

「多少の混乱はあったけど理解は得られたと思う。勇者二人がいる強味」


 どうやら千絵と楓子を引き合いに出して問題無いとでも言ったようだ。

 一応宿屋では情報が洩れても構わないとは言っていたが、変に情報が伝わるとパニックになる恐れがある。

 どうせ蓋をしても匂うのだから早々に中身を知らせて安心させた方がいいわけだが、逆に噂を知らなかった人が驚いてパニックになる可能性もあるわけで。

 その辺りはシャルの匙加減で何とかしてもらうしか無いから、俺が出来るのは変に情報が伝わるのを避ける事と、その前に情報を纏めて告知出来るようにする事だ。

 わざわざアヤメさん達を転移門の魔法を使って送り届けたのも、ぞろぞろと外を歩いていたら目立つからだし。

 既に避難民が居ると知られれば事の重大さに慌てる人が出て来るだろう。

 しかし噂は絶対伝わる物だから、こうして翌日に告知出来たのは大成功だと思っている。


「そっちは?」

「一通り話が済んで根回しも終わった。後ゴブリンはコボルトが倒すって」

「……は?」

「種族的にコボルトってゴブリンの事が心底嫌いらしい」

「意味わからない」

「俺もそんな話になってなんて答えればいいのか迷った。でも向こうがやるって言うなら任せた方が今後の為になるかなと思って」

「今後って?」

「コボルトの市民権獲得」


 勿論王国民として扱うわけにはいかないだろうが、『コボルトの協力によってゴブリンを撃退した』となれば人間に友好的な種族だと思ってくれる人も出て来ると思うのだ。

 そうすれば今後計画しているコボルトの産業についても上手く行く可能性が上がる。


「最近、トモヤの頭の中を開けて見たくなることがある。私の理解を超えた事を考えてる事が多い」

「俺だって突飛な事だと思うけどさ、生きてる以上、共存を望む以上仲良くしとくべきだし」

「その理想論を実現できる人が普通はいない」


 『普通はいない』と言う言い方である以上、俺を認めているのだろう。


「お茶淹れたよー、トラ子はミルクねー」


 楓子が配膳用のカートを押してきた。

 今は千絵もシエルも休憩で戻ってきているが自室でひっくり返ってるし、ベスターもフローラさんに北の町へ連れて行って貰っている所だ。

 やはり説得には相当骨が折れたようで、結局多くの人を強制的に拉致ったらしい。

 ベスターもフローラさんもケロッとしてたけど、千絵とシエルはそれなりの罵声を浴びせられたりもして精神的に疲れたみたいだ。


「なんか今日は私が一番楽しちゃってるね」


 そう言ってほんわかと笑みを浮かべる楓子さんマジ癒し。

 存在が癒しってだけで働いてるしオッケー。


「でも楓子のおかげで確定的では無いにしろ、王国内のオークは恐らくいないってわかったわけだし、ゴブリン排除も出来たわけだし」

「それくらいだよ?」

「それで救われた命と助かった女性が山ほどいる」

「助かった女性?」


 さっきの話を楓子は聞き取れていないし、基本的に俺とベスターの会話は難しくて長ったらしい事になるので、女性陣はあんまりちゃんと聞いてない事が多い。

 シャルとシエルは政治関係に足を突っ込んでいるのでちゃんと聞いてる事もあるけど。

 わざわざ説明しようか少し悩んで、本人達への警鐘も兼ねて伝える事にした。


「ゴブリンってオークと同じく、人間の女性を攫って孕ますんだと。ゴブリンの場合はその方が上位種が生まれる可能性が高いから、一定数を超えると盛んに村を襲って攫うんだと」

「――――」


 こう言う話が駄目だろうなと思ったけど、楓子の目が死んでいた。


「亜人に近い魔物のそう言うところが嫌」

「シャルは割と平気そうだな」

「この世界で生まれているから少しは」

「でも亜人に近いって言うけど、魔物ってそもそも何が元なんだ?」

「魔獣の突然変異とか魔人の突然変異なんて言う人もいる。でも誰も知らないしわからない。人と同じ二足歩行で顔の造形が近いモノを亜人に近い魔物と呼ぶ事が多くて、その場合コボルトは除外される」


 そりゃ犬面だしな。


「コボルトもオークもゴブリンも、どういう進化でああなったのか見当もつかないんだよなぁ」

「中には異世界から連れてこられたなんて人もいる」

「……むしろそれが一番有りそうで怖いな」


 動物だって連れてこられた説を俺は考えている。

 魔物だって連れてこられた可能性はあるのだ。

 だって豚の魔物なんて言われるオークだけど鼻と耳が潰れてるだけで普通にマッチョな人型で、これの元になりそうな生物に俺は心当たりが全く無い。

 コボルトだって犬面ではあるけど普通に二足歩行しているが、犬と人間を科学的に交配させたとしてもああなるだろうか。

 ゴブリンに至っては大人でも子供サイズなのだ。

 そんなの、どっか別の世界で独自に進化した何かだと言われた方が信じられる。

 何なら地球と環境の違う別の惑星の生物だと言われた方がしっくりくるな。


「最低」


 ようやく復活した楓子から出た一言である。


「焼き尽くして良かった」


 そして暗黒面に堕ちそうである。


「トモヤはこれからどうするの?」

「と言われても、俺自身何か出来るわけじゃない。日が落ちるまでは避難の方をやってもらいたいから付いて行ってもいいけど、俺が居た所で意味無いしな」

「なら私を癒す事」

「ここに楓子を置いておきますね」

「……癒されるけど違う」

「じゃあトラ子な」

「にゃ?」


 コップに入った牛っぽい何かのミルクを飲むトラ子だが、魔獣化兼魔王化した事で猫が駄目そうな物でも問題無く摂取する事が可能になっていた。

 牛乳も乳糖が分解できないとかで腹を壊すなんて聞くけど、少なくとも今のところは何の問題も無い。

 勿論この世界の牛乳の成分が似たり寄ったりだとか、この世界の猫の弱点が同じとは限らないけど。


「うー……癒しではある」

「よし決定」

「とーもーやー、私も癒してー」


 どこから聞いてたんだか知らないが千絵が来た。


「わーたーしーもー」


 そしてシエルも。

 一応我が家全員集合になったが、その半数が疲れた顔である。


「夕食は少しいい物にしてもらおうか」

「トモヤ分が欲しいのー」


 そう言ってシエルが後ろから抱き着いてくる。

 よっぽど避難誘導がしんどかったと見える。


「もう今晩は私とシエルで智也を両サイドからこう」

「あー、たまにはいいねー」

「良くない。昨日トラ子に邪魔された。今日も私」

「あのー、三人とも、今日は私の番なんだけど……?」

「楓子は今日一日中智也を独占だったじゃない」

「そーだそーだー」

「シャルはトラ子がいても退かすでしょ」

「そーだそーだー」


 モテる男はつらい。

 物理的にも精神的にも。

 俺が口を出したら贔屓と言われるし、出さないと本来の順番である楓子が拗ねた顔を向けて来るし。


「何やら忙しい所に帰って来てしまったが、お邪魔だったかな」

「むしろナイスタイミングだ」


 ベスターの帰還である。

 フローラさんが俺達の構図を見て何となく察したらしく、うっすらとしたいつもの笑みを少し深めて面白そうにしていた。

 いや面白く無いんだけど。


「ゴブリンの集落をそれとなく観察してきたが、あれはゴブリンの集落にしては大きすぎるな」

「そんな規模だった?」

「ああ、本来は百も居たら分かれるものだ。それがざっと五百は超えていた。大きめの魔力もあったから最低でもホブは発生してるな。トモヤが百くらい倒したと言っていたから残りは大したことないと思っていたのだがな」

「なんでそんな大きな集落になったんだろう」

「恐らく土地がいいのだ。広大な森と付近に大きな地脈がある事で魔力が潤沢である事。食料だけなら森で十分賄えるから人間に駆除される個体もいなかったのだろうな」

「大丈夫かな、コボルト達」

「一応送りついでに様子は見ておく」

「うん、お願いするよ」


 さて、とベスターは千絵とシエルを見る。


「続きと行こうか」

「ふーこー、バトンタッチ」

「シャールー、交代」


 千絵とシエルが限界らしい。

 楓子とシャルは顔を見合わせ、仕方ないなと言う顔で立ち上がった。


「その代わり今晩は変わらないよ?」

「む、それは私のセリフ」

「えー」

「けちー」

「よし、後三つで終わりだ。行くぞ」


 そう言ってフローラさんがベスターとシャルと楓子連れて転移門を開いて消えて行った。

 ……後三つ?


「そんな進んでたのか」

「ベスターさん力業なのよ。『話があるから女子供も全員集まれ、さもなければわかってるな』って町長を脅して、そこから三十分もすれば何事かと集まって来るでしょ? したら袋からすっごい長いロープ出して全員をひとまとめにして縛って、縛り上げた人じゃなくて転移門の魔法を動かして飲み込んでいくの。あんな使い方出来ると思わなかった」

「……規格外ここに極まれりだなぁ」


 本来座標を固定して使うはずの転移門だが、ベスターの手に掛かればそうでも無いらしい。

 でも考えようによっては、転移門のサイズは魔力とイメージ力に左右されるが自由自在なのだ。

 縦方向に動かすか横方向に動かすかの違いで不可能ではない気もする。


「その間、恐怖で騒ぐ人ばっかり。私を見て鬼だの悪魔だの言う人もいたし」

「私なんて『このクソドワーフが呪い殺してやる』って言われたよ?」

「一応避難命令を出した後なんだよな?」

「うん、午前中に全部回って、最低限必要な物と着替えを持っておく事、って」


 多分持ってない人も大勢いるんだろうなぁ。

 シェーバーの当主、ロメオさんに後で滅茶苦茶怒られそうだ。

 まぁでもオーク侵攻の最前線である南を実際に守るのは俺達なわけだし、多少は協力してもらわなければ。


「オークが来た経路も調べないとだからなぁ」

「もう南の国境付近の空洞を押しつぶしちゃえば?」


 千絵が物騒な事を言いだした。

 とは言えそれも手である。

 どうせ枯れてる地脈だし。

 だが、今回のがただの先発隊で次が控えてたりしたら厄介なのだ。

 俺達が徹底的に対策をしたとして、オークがそれを見て更に戦力を増強しないとも限らない。

 なんせ元々人間よりも強いオークが魔王によって強化されているっていうのに、一万を撃退したと教えてやってるような物だからだ。

 それなら手付かずの方が油断を誘えるはずだ。

 仮に気付かれ、外堀から埋められないなら王都に直接なんて夜間に一万以上の規模でやられた場合、進行速度から考えて気付いた時には王都が大火に包まれている可能性もある。

 ベスターは最長で一週間なんて予想していたが、こちらに気づかれた前提で動くのであればペースアップ出来る可能性もあるので、二日や三日で攻め込まれる事は十分にあり得るのだ。

 そう、むしろオークが外堀を埋めようとしてくれた事が救いだったのだ。

 あんなん一万もいっぺんに来たら、こっちは王都の半分を消し飛ばすつもりで攻撃しないと対応しきれない。

 なんせこっちでオークとまともに戦える人材なんて、千絵と楓子とシエル、後はトラ子も入れれば三人と一匹だ。

 そこにベスターとフローラさんが助けに来てくれれば五人と一匹だが、なんせシエル以外の火力があり過ぎて各個撃破に向かなすぎる。

 ベスターやフローラさんが真っ当に戦ってる光景を見てないからわからないけど、昨日みたいに全部凍らせてくれればいいがそうも行かないだろう。

 早い内に気づければ、掘って来た地脈に降りて地脈を痛めるのを覚悟で魔法をぶっ放せば何とかなりそうだけど、知能が高いとされているオークが何も考えないで来るとも思えないのだ。

 それらを考えると、恐らくまだサウスルタンに居るであろうオークに一掃されてる事を知られるのは不味いし、即座に対応して見せるのも不味い。

 可能性があるとすれば、既に死んでる地脈なので魔力供給が無い分、そのエリアでのみ侵攻が遅い事だ。

 太い地脈に到達するまでのルートを全て潰せば多少の時間稼ぎが出来るが、それも向こうの兵力次第なので何とも言えない。

 ただ、こっちが攻めに転じた時は潰しておいた方がいいのだ。

 戦力がサウスルタンに向いてる今がチャンスと北上されたら厄介だからだ。

 一度滅ぼされた国がすぐに立ち直れるわけが無いし、一回サウスルタンを捨てて王国を制圧してしまえば盛り返す事は可能だ。


「うーん」


 難しい。

 一日二日でサウスルタンの状況を調べられれば地脈なんてとりあえず放っておいてもいい。

 それが長引くようなら死んでる地脈の部分を全て埋めてしまった方が時間は稼げるかもしれないが、向こうの兵力が想像を絶した場合は警戒されて一気に落とされる可能性がある。

 こう、何とかならない物か。

 そう考えている時に、ベスターの魔力のせいで弱い魔物が近づいて来なかったと言う話を思い出した。

 オークだってベスターよりは当然ながら弱い。


「ちょっとベスターが帰ってきたら相談だな」

「なにが?」

「ある種のギャンブル」


 そう、ベスターが魔人の王だと告げたら恐慌して殴りかかって来たと言っていた。

 逆にベスターの魔力のせいで侵攻を早めるかもしれない。

 いやまぁ普通に考えて近寄らないとは思うんだけど。


 で、南側の全員を拉致って来たベスターに相談したら、『むしろ有りだ』と言われてしまった。

 なんてこった。



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