了承を得て
一回王城に戻って会議の支度をしていると、ベスター達が戻って来た。
その魔力を感じてリビングに行くと、何とも呆れた顔でふんぞり返るベスターが。
「トモヤよ。ある程度は覚悟していたが、人間とは命よりも住処の方が大事なのだろうか」
「人間とはって一応ベスターも元人間だけどな……」
その口ぶりから避難命令は受け入れられなかったようだ。
「千絵、どうだった?」
俺が千絵に振った事で、『私の言う事は信じられんか』と少し不機嫌顔のベスターである。
「ベスターさんの言う通りよ。私達があっさり倒しちゃったから、実はそんな強くなくて次に来ても大丈夫って思ってる人が何割かいるみたい」
「あー、なるほど」
「そう思ってるのは若い人達ばかりだけどね。お年寄りは新しい場所に行くのが短期間だとしても嫌って感じ。後は数日間でも家を空けるのが心配だって。火事場泥棒みたいなのが出るかもしれないから」
「そう言う盗賊みたいなのって一応いない事になってるよな」
「一応ね。盗賊団みたいに組織だったのじゃなくて、生活の為に仕方なく行商人を襲うってタイプは偶にいるみたい」
そう言うのが話を聞きつけて空き巣に入る可能性を案じている。
と言う事は、そう言う事をする人たちに心当たりがあるのだろう。
南の方は地脈の関係で生活が苦しかったから、もしかしたら過去に一度はやった経験があるのかもしれない。
何にしても放っておけないわけで、強制的に拉致るか、金銭的に補助するか。
補助するにしても一人当たり銀貨何枚とかやってしまうと国庫への負担が半端ない。
それをシェーバー公爵家に負担しろと言ってもいいが、渋られるのは言う前からわかっている。
特にシェーバーの一族は土地の豊かさの関係で税収よりも家の事業で稼いでいる家なので、税を還付するつもりで補助金を出すと言うよりかは家の資産を切り崩して補助金を出す形になってしまう。
避難民の宿代も全家族分となると凄い事になるだろう。
アヤメさん達だけでも一週間で金貨五枚、あそこが最小規模の村だから、世帯数は把握してないが門前宿の料金で考えると全部で金貨三百枚を超えても不思議では無い。
頭の中には六千万円と言う数字が浮かぶ。
実際は安宿も多いからもっと安く済むとは思うが、それでも金貨百枚以上は確実にする。
アヤメさんのとこは自分達が世話になった事もあるのと、元々ベスターからの貰い物だから自腹を切ってもいいが、他も全て賄えるかと言うと自分の懐じゃ無理だし国庫的にも辛い。
なんせ公爵家の方がお金持ちなのだ。
王家の資産はほぼ無く、あるのは王都での税収や公爵家から多少入る税だけなので、支払い関係は基本的にシェーバー公爵家にやってもらわなければならない。
と言うわけで、出来る事なら納得して何事も無く移動してもらえるのが一番なのだ。
まぁ言ってしまえばオークを一瞬で滅ぼせれば一番いいんだけど、それが出来ないわけだし。
「王都から離れるとエルフ信仰も減るからシャルを連れてってシェリールとして命令しても駄目だろうし、もうこの際無理やり連れてくのが一番スマートな気がしてきたな」
「その後の反感は?」
「それな。次いで金出すから移ってくれ方法も色々問題が浮かぶから止めといた方がいいし、となると後は自己責任って事で残ってもらうしか」
「それで何かあったら結局批判されるのよねぇ」
「そう」
結局何かあれば誰が責任を取るのかと言う話になる。
特に今回は俺達が関わってるから、終いには『無理やりにでも連れて行けばよかった』と言われると思う。
かと言って無理やり連れて行ったら『誘拐に近い、横暴だ』と言われそう。
全く頭が痛い。
「私が全て被ってやってもいいが」
「そうもいかないだろ」
「いや、既に勧告はして来た。後は人を集めて魔力を込めた縄か何かで巻き取って転移門に引きずり込めばいい」
「なんで魔力を込めた縄なんか」
「普通の縄だと転移の瞬間に切れる恐れがあるからな。自分の魔力を込めておけば体と同一扱いされるはずだ。手を繋いでいれば一緒に連れて行けるのと同じ原理だと思われる」
「……うん、ベスターがやる分には、そう話をしておいたから連れて来ただけだと言えなくもない」
「その通り。何せ私は大魔王様だからな。何ならうちから何人かいかにも魔人っぽいのを連れてきて圧を掛けてもいい」
「それはそれで不味いんじゃ」
「結果として助ける事になるわけだから、ある意味イメージアップに繋がるだろう」
まぁ見た目完全に人間なベスターが強制連行するだけよりも、魔人が居た方が魔王っぽくて色々な効果はあるかもしれない。
大人しく言う事を聞かせることが出来るとか、魔人が助けてくれたと思わせる効果とか。
同時に、やっぱ魔人怖いって恐怖も植え付けるだろうが。
ただそれに関しては、怖いと言う印象を変える必要は必ずしも無いと思う。
実際人と違えば恐怖するのは当然だし、下手に近づけば怪我をする危険性は十分にある。
まだ今は少し遠めの付き合いで、次第に適切な距離にするのがいいだろう。
「じゃあそうしよう」
「それでトモヤの方はどうだった。どこかに行ってたようだが」
ベスターも俺を感知していたようだ。
「楓子が見える範囲なら転移門を使えるって言うから上空から見たんだけど、とりあえずオークはいなかった」
「ああ。……とりあえず?」
「ゴブリンっぽいのが居たんだ。コボルトよりも小さくて頭が尖ってて耳が尖って長くて、こん棒とナイフみたいな武器を持って『ゲゲッ』って鳴いてた」
「それはゴブリンだろうな。それも低級の奴だ」
「低級じゃないのがいるんだ?」
「コボルトもオークもそうだが魔物には同族でも差がある。それは適正別の差だったり、単純に能力的な差だったり。ゴブリンは世代交代が激しい種族故に、時たま突然変異的に上位種が産まれる事がある。ホブゴブリンと呼ばれるコボルトよりも大柄で凶悪な種だったり、ゴブリンロードと呼ばれる魔王一歩手前の力を持つ種も産まれる事があって、そう言った者共が集落を纏めている事が多い。まぁホブは百匹いれば一匹は産まれる程度で、能力的にも魔王で強化されたコボルトと変わらんが、ロードとなると残虐性を含めると理性的なコボルトの魔王より強いと言っていいだろうな」
「……すげー厄介じゃん」
「恐らくコボルトがあの集落に集中した事によるゴブリンの増殖が原因だろう。早めに叩いておかねば被害が出るな」
「既に村を襲撃に行く途中だったみたいだから、もしかしたらオークより先に対処しないと駄目かもしれない」
「実際文献によると、昔はゴブリンによって大陸の一部が支配されかけた事も有るらしいぞ。どうやら隣接するオーガとの戦争を始めた辺りで人間が漁夫の利を狙って何とかしたようだが、その時でも魔王は発生していなかったらしい」
「コボルトより質悪いんだなやっぱし」
「本来ならコボルトの方が強いのに、魔王で唯一人間が勝てると言われているのは、弱いはずのゴブリンが数の多さと残虐性もあって結果的にコボルトの上を行くからだろうな。それとコボルトの魔王が発生すると即座に侵攻が始まった事もあるか」
コボルトにもウィザードがいたりアーチャーがいたし、オークにもウィザードは確認されている。
それと同じようにコボルトにも特性的な差はあるのだろうが、それよりも増えやすいが故に突然変異が起こりやすいのか。
コボルトの魔王が発生からしばらくして着実に力を付けているのはベスターも当然ながら感じてるようで、どうやら俺と同じく時間が経ったコボルトなら勝てる見込みが無いと思っているようだ。
にしても、それで考えると魔王って普通の突然変異じゃなくて何か特別な要素があるのだろうか。
普通に考えたら増えやすいゴブリンの方がコボルトよりも魔王が発生していそうなのに。
「ゴブリンって魔王が発生した事無いのか?」
「文献上はあるが勇者に倒されている。が、そう言えば近年では聞かないな。フローラ、どうだ」
「はい。私が訪れた先でも噂にも聞いた事はございません」
「ふむ、モンスターとしては正直コボルトよりもゴブリンの方がポピュラーと言っていい程あちこちに居るのだが、それで魔王が出ないとなると魔王になれるだけの器が種族的に発生しないのかもしれぬ」
「器?」
「魔王たるもの、その身に一定以上の魔力が無ければならぬだろう。それが体を強化し多くの魔法を操る原動力なのだからな」
「ああ、なるほど。ゴブリンは種族的に能力が足らなくて魔王が発生しにくいと」
「だがロードなら器として十分可能性はあるはずだ。もしくはロードが限界点で文献にある魔王が偶々それを越しただけだったのかもしれないが」
「とにかくゴブリンの魔王自体は気にしなくて良さそうって事かな」
「ああ。アレに魔王なんか出ていたら、今頃王国中の女は攫われているだろうな」
最近その手の話が多くていい加減辟易しているのだが、むしろ今までが平和だったに過ぎないのだろう。
噂によると他の国はもっと魔物の被害が多いらしい。
「なんかオークだのゴブリンだの忙しいなぁ」
「それに関しては地脈のせいとしか言いようがないな」
「オークはわかるけどゴブリンも?」
「ある意味な。この王国は私の魔力で満ちた地脈が魔力を供給していただろう。アレで弱い魔物は恐れて近寄らなかったのだと思う。最近そう言った雑魚が国境で目撃されているようなのだ」
「納得は出来なくは無いけど、そんなもんかなぁ」
「扉一枚隔てた先に嫌いだったり苦手だと思う人間の声が聞こえれば、わざわざそこに近寄りはしないだろう」
口ぶりから、どうやら最近それに気付いたようだった。
言われてみれば確かにとは思うが、だとしたら今後警戒をしなければならない。
「とにかくゴブリンに関しては近日中、それこそ明日にでも集落を潰しに行くつもりで考えておいて欲しい」
「うむ」
「あ、ベスターはいいから」
「ぬ」
「だって何から何まで手伝って貰ってたら、流石に立場上問題がある」
「構わぬと言うのに」
「それが政治的立場ってもんだろ」
「トーモヤー、おなかすいたー」
シャルが疲れた顔をしてやって来た。
ある程度片付いたとはいえ一度は侵攻を受けて深くまで入り込まれ、まだ解決していないオークの存在を告げなければならないのだから言葉選びとか色々気を使って考えていたのだろう。
「ああシャル。ゴブリン湧いてたから明日にでも倒しに行く」
「あそ。……は?」
「お昼は簡単な物でいいやって言っちゃってあるんだけど、良かったかな」
「ちょっと待ってトモヤ」
「はい」
「ゴブリン?」
「そう、ゴブリン。数を増やして町に攻め込む所だったのを偶々見つけた」
「……はぁー……」
我らが王女様も心労でくたばりそうです。
昼食はサンドウィッチと一口で食べられるおかずばかりだった。
それこそ何かに詰めればピクニックにでも行けそうな内容で、何か作業しながらでも食べやすい形になっていた。
その見た目だけで多分おやっさんの意見が色濃く反映されているのだと思う。
ベスター達は再び南へ行き、既に告げた村や町に関しては強制執行してくるのだそうだ。
一応南側の出来事なので、シェーバー公爵家が管理する南の街の宿を優先的に使うようにしてくれと指示しておいた。
これで何か不満が湧いてもとりあえず向こうに文句が行くだろう。
「すみませんお待たせしました」
そして俺は会議である。
隣には楓子、そしてトラ子は猫姿で来たと思ったら巨大化して俺の隣で丸くなった。
どうやら一応俺を守る気でいてくれているらしい。
一通り原稿が纏まったのならシャルもと思ったのだが、実はまだあの体に馴染んでいないようで、疲れたから仮眠を取って来ると言って自分の部屋に引っ込んでしまった。
「トモヤよ、昨日は突然の事であったが、其方の迅速な働きに一同感謝している」
「それですが、実際の所ベスターとフローラさんがいなければ何も出来なかった事です。今も手伝ってくれていますので、礼に関してはそっちにお願いします」
ルーベルトの爺様が全員を代表して頭を下げて来たので、とりあえずやめてくれと言って収めた。
昨日のメンバーを集めて貰うように伝達しておいたのだが、公爵家は本家の当主以外にも分家の当主までいるし、伯爵家も十家くらいは来ているようで、元々少人数で使う会議室に立って参加する人が出る程だ。
楓子は座ってることになんか気まずくなったようで、椅子を立って伯爵家の人に譲るとトラ子のお腹の辺りにそっと座った。
そのトラ子ソファー俺も座りたい。
いや俺が座ったら遊び始めるだろうから意味を為さないだろうけど。
楓子の場合はトラ子は率先して絡む気が無いようなので、大人しく丸くなってるだけだ。
この差、まださっきのを引きずってるな。
本来こういった楓子の選択は間違いなのだろうけど、その光景が絵画のようで目を見張るものがあり、誰も何も文句を言えなかった。
そもそもお行儀が悪いって話なのだが、椅子を譲る事自体は楓子の好意と善意百パーだし。
「それでハイリッヒ卿」
「なにかな」
「新たな問題が発生しました」
「……聞こう」
「先ほどオーク探索に上空から魔力探知をしていたのですが、北の街道から外れた森の中にゴブリンの集落があるようでして、そこから百匹程南下してきて町を襲うとしていたのです」
「何だと」
「楓子に撃退してもらいましたが、これは早急に明日にでも対処する予定です。一応伝令を飛ばして警戒するように伝えておいてください」
「ん……、そうだな。済まない助かった」
「さて、それでは本題のオークについて、昨日の動きとこれからの事ですが――」
ルーベルトの爺様の苦虫を噛み潰したような顔は一瞬で、すぐに平静を装って対応してきた。
こう言うのを見ると年の功と言う奴かなと思ってしまう。
ゴブリンの集落自体は恐らく公爵家の私兵を使えば十分対処可能だと思うのだが、準備して出発してとなるとどうしても時間が掛かる。
恐らく今日を含め二日目の夜か三日目の昼に到着とかだろう。
それまで近隣の村や町が無事とは限らないので、こっちで対処すると聞いてホッとしたようだった。
オークについての話は昨日の行動をざっと報告しただけだが、結局の所この部屋に居る大人たちは、全員がいくつかの事を知りたがっていた。
王国にどれだけのオークが残留しているか。
オークの侵攻路はどうなっているのか。
避難民について。
主にこの三つと、後は細々と魔人の王への謝礼はどうするつもりかとかだ。
そう言う事を言いだすのは決まって魔人を嫌うか怖がってる人なので、こっちで対応すると言っておけば大人しくなってくれる。
「まずオークがどれだけ王国内に残っているのかですが、現状新しい発見は無いので居ない可能性の方が大きいと思われます。仮に居たとしても同族に合流するはずだと言うベスターからの意見があり、それが納得の行く物だったので恐らく問題は無いでしょう。これで三つも四つも部隊が残っていたら村や町が攻め込まれる危険性はありますが、そこまで残っているのなら見つかっているはずです」
あくまで仮定としての話が多かったが、一番の関心事であるはずなのに特に突っ込みが来なかった。
これでもしかして隠れていたら、とか言い出したらキリがなかったのだが、この非常時にそこまで揉める気は無いようだ。
「次に侵攻路についてですが、昨日が急ぎでの対処だった事、南に関しては途中から地上に出て直接村々を回っての排除だったので特定には至っていませんが、あれだけの部隊を送り込んできた後なので、即座に追加で来るとは思えません。塞ぐ等の話は結局穿孔魔法で掘られてしまうので無しでお願いします。その為の避難です」
これについても特に無かった。
「そして避難民ですが、先ほどベスターからの報告では渋る人が大勢いたようです。ですが自己責任と言って放置もできませんので、ベスターが自分が責められようと言って強制的に連れてきてくれる事になりました。避難先としてはとりあえず南の街を優先にし、次いで王都、後は三方に振ろうかと思っています」
「その場合の宿泊資金はどうするおつもりか」
ハイリッヒ家の分家の方が声を上げて来た。
自分を越しての発言かとルーベルトの爺様が睨むが、金関係はシビアなのでそれも仕方ないと睨むだけに留めている。
「皆さんご存知の通り、王家の資産は元より国庫がどれだけ侘びしい事か。ですので自分の領土の事ですのでシェーバー公爵家に一通り支払っていただきたいと考えております」
「だが、我が方もそこまでの負担がいきなり出来るはずがない」
「今現在足らない分は国庫から貸しますので後日返済を。金利等無しで構いません」
「しかし――」
「金額が金額なので渋りたい気持ちもわかりますが、近いうちに豊かな土地になるのはわかっている事です。ここでケチったと民衆に知られたら反感を持たれるだけですので、将来を見据えての判断をお願いします」
言いくるめるにはこれ以外に無いだろうなと用意していた言葉だったので、これでもかと言う程スラスラ出て来た。
「……仕方ありませんな。我が領土の事、承知しました」
当主のロメオが大人しく引いてくれたのは周りからの視線と言う圧もあっただろう。
結局の所ここに居る人間は全て親戚同士だ。
最終的に金が足らなければ他の公爵家が出す。
だがそれは同格の家相手に仮を作る事であり、格下に見られても仕方のない事だ。
つまりは家の面子の為には結局出さざるを得ないのである。
色々心配して考えてみたが最終的にそう言う事になるはずで、それでも国庫からの補助を期待するだろう事も想定内なので、自分の所が今後利益上がるのわかってるんだから何とかしろと言って見せたのだ。
自分の中ではこの話が一番の山場だってので、無事納得してもらえてホッとして気が抜けた。
「で、トモヤよ」
抜けた気が緊張で一気に戻った。
ルーベルトの爺様が難しい顔をしている。
「サウスルタンに関してはどうなのだ」
「こっちの問題が片付いたら調べてきます。王国に一万も放って来るようなので恐らく落とされてると思うのですが」
「であろうな。あそこは地形の関係で陸続きであっても殆ど行商人の行き来が無い国だ。よって国が無くなった所で王国に大きな問題は無いが、オークが支配しているのは困る」
高い山脈のせいでそれを超えての移動は現実的では無く、東側の海岸線を使って迂回しないと行けない国なので行商人の行き来も殆ど無い国だ。
むしろ来る行商人はスパイ活動がメインだと言われる程だ。
「オークに関しては国の枠を取っ払っての問題だとベスターも言っておりまして、調査が済み次第何とかするつもりですが、正直現時点ではどうなるかわかりません。少なくとも人間が生き残っているならば人道的に助けなければなりませんし、それによって難易度が跳ね上がる事が想定されます。しかし、近衛兵を始めとした王国兵達でどの程度太刀打ちできるのかと言えば、死なないようにするのが精一杯だと思うのです。救出の為の人手が欲しいですがオークを倒せる人材がいないので、妻たちやベスターやフローラさんと言った力ある人達に頼り切る形になってしまいます」
「それは仕方ない、と言うと不満もあるだろうが事実しようが無い問題だろう」
だが兵力にアテが無いわけでは無いのだ。
さっきベスターが魔人を何人か連れてきてと言った時に閃いた。
だがそれは、時期尚早だとも思うのだ。
一国を救うのに、王国の人間よりもベスターやフローラさん、そして魔人を投入してオークの掃討に当たろうなどと言うのは。
ベスターやフローラさんだけでもいい顔をしない人は居るのに、普通に魔人を使うとなったら今後交流が加速する事を恐れて反対する人は出て来るはずだ。
それを考え付いたのは、ひとえに今回の件は女性陣を極力関わらせたくないなと言う単なるエゴだ。
支配されてた場合、人は家畜として扱われている。
その光景がいい物のわけが無い。
やるとしても、サウスルタンの北側の山脈麓にでもオークをおびき出せるだけおびき出して叩いてもらう事くらいだ。
救出作戦関係には直接当たらせられない。
「なので臨機応変に何とかしようとは思いますが、どういう形を取ったとしても許して欲しいのです。勿論兵士を連れ出しておいて捨て石に使ったりする気はありませんが、場合によっては敵地に置き去りになる者が出る可能性も有りますし」
そう言って辺りを見回すと、自分の事では無くとも家族の事になる可能性はあるので神妙な顔をしていた。
「それが魔物との戦い、戦争と言う物だろう。私はこの数ヶ月でトモヤの事をそれなりに高く評価しているつもりだし、効率的且つ人道的な判断をする人間だと思っている。よってその提案を呑もう。他の者はどうだ」
ルーベルトの爺様に言われると否定できない人の方が多いので、どうやら話は通るようだった。
だがルーベルトの爺様には申し訳なく思う。
たまたまこれまでが人道的に済んでいただけで、場合によっては切り捨てる方法も頭にはあるのだ。
そして、状況如何ではそれを実行する気もある。
俺が絶対に無いと言い切れるのは、自分の身内を死地に追いやる事と切り捨てる事だ。
勿論人だけじゃなく、何なら魔人や魔物ですら無駄に死んでほしくは無い。
だがしかし、自分の身内だけは何よりも優先して守りたいと思うのが当然だし、周りを切り捨ててでもやってやる。
俺自身特に何か中身がしっかりある人間では無いけど、守りたい物を守りたいと思う気持ちだけはあるのだ。
あともう一つルーベルトの爺様を始めこの場の全員に謝らなければいけない事がある。
今の許しを得た事で、『いやー兵力が足らなくて仕方なく』と言ってベスターに魔人の兵を借りてもオッケーと言う事になったのだ。
わざと途中で話を逸らしておきながら、実際話の肝は助っ人に魔人を使えたらと言う一点である。
どうせならドワーフのロイヤルガードも借りたいくらいだが、個々人の能力が高いロイヤルガードでもオークの集団を相手にするのは骨だろうし、救援要請は出すつもりは無い。
それこそ救出のみなら、例えば魔人一人にうちの兵を二十人くらい付けておけばいいだろう。
ドワーフ王国での戦いを見る限り、魔人一人でオーク十体くらいなら何とかなりそうだ。
なので今のところ考えているのは、出来る限りオークをサウスルタンの中心部から引き離して千絵と楓子とシエルに倒してもらい、その間に救出部隊に下調べして捕虜がいそうな場所に行って貰って開放し、ベスターとフローラさんに転移門で運んでもらう方法だ。
救出さえ済んでしまえば、後は更地になってもいいからまとめて吹っ飛ばしてもいい。
あくまで極論だけど。
全く関係無いんですが、寝る前に何となくホットケーキ食いたいなと思ったんです。
夜中に起きて近所のセブンまで行って一通り買って作りました。
勿論全部一人で完食。
これだから腹に肉が付くんじゃー。




