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おや? シャルの様子が……



 地下を徹底的に飛び回っていよいよ探す場所も無くなった。

 南側はフローラさんが行ったようなので東と北と中央エリアを見て回ったわけだが、そこからわかるのは意外とオークが侵攻してきて日が浅そうと言う事だった。

 距離的にはかなり進んできているが、地脈の魔力を使っての穿孔魔法なら永続的に掘り続ける事が可能だ。

 オークと言うのは肉体的に非常に恵まれた種族らしく、その体力は魔王が発生していて補正が発生している上に、地脈の補助もあって無尽蔵と言ってもいいらしい。

 オークウィザードは一つの集団を四百として五人前後いた。

 南側から仮に一万のオークが進行してきたとして、二十五集団、百二十五体のオークウィザードが居たとして、それらが全員穿孔魔法で掘り進めたら、自分達のようにフライを使っていてもノンストップで進めるだけの掘削能力があるはずだ。

 掘って崩した土に関しては縦穴から出している分も有ったのだが、それにしては少ないので恐らくベスターのように転移門でまとめてポイしてるか、高性能の道具袋でも有ってオーク全員で中に詰めてるかだと思う。

 流石にフライで飛びながら掘削とか転移門で土を出すなんてのが出来る技量のあるウィザードは居ても極一部だろうけど、多めに見積もっても一週間は経っていないじゃないかと言うのがベスターの予想だった。

 結果的に自分達は六千程のオークを処理したのだが、もし今日模擬戦をしていなければ、そこにベスターやフローラさんがいなかったら、王国の町や村の殆どはオークに侵攻されて手も足も出なくなっただろう。

 そうなったら様々なモノ、町や村は勿論公爵領の街や王都にまで来た場合大量の家屋や人民すら纏めて、千絵の攻撃魔法で焼き払って貰う事になったかもしれない。

 一万ものオークが王都に雪崩れ込んできたら、纏めて消し飛ばす以外の方法は各個撃破しかないが、正直なところ各個撃破をするには千絵も楓子も火力がありすぎるのだ。

 それこそ消耗が少ないシエルの方が使い勝手がいいくらいに。

 どうせ街に一定以上の被害が出るのなら、避難命令を出して大きめの魔法を撃ちまくるか極大サンバーストで一気に片をつけてしまったほうが結果として人的被害は抑えられる可能性もある。

 それを指示したら、逃げ遅れた民衆を巻き込む可能性があっても千絵は色々葛藤を抱えつつ実行するだろう。

 千絵自身、そう言った損得勘定の頭の回転が早いので、戦いを長引かせるだけ被害が増えることも理解できてしまうのだ。

 そう言った最悪の事態になる前に手を打てたのは喜ばしい事だと本当に思う。


「あ、お帰り智也」


 探す場所も無いのに地下を飛び回っていてもしょうがないので、俺達は城に戻って来た。

 するとフローラさん達も既に帰っていて、これからお茶を入れて一休みする所だったらしい。

 さっきのテーブルの惨状は既に無く、被害者も居らず、加害者も居らず。


「そっちはどうだった?」

「南側は地脈が細い所が多くて陸路で襲撃してたみたい。フローラさんが各村回ってくれたから一通り終わったわよ」

「こっちも大体は片付いた。どこかに隠れてなければ一掃できたと思いたいけど」

「ちなみにだがフローラ、どの程度処理したのだ」

「合計で四千に届くかどうかと言う所でしょうか」

「そうか、こちらも六千程だから、私の予想通りならほぼ全て処理したと思っていいだろう。だが数日間は様子を見ないとわからんな。残党がいないとも限らん」


 そもそも一万と言うのはベスタ―の感覚に基づく予想なので何の当てにもならないのだが、王国を制圧するにあたって地脈を侵攻路とした場合、おそらく一万程度が限界値だと思う。

 それ以上だと洞窟状の閉鎖空間なので地上以上に部隊が伸びすぎるし、伸びると問題発生時の対応が遅れるし伝令に支障が出る。

 四百人で割って二十五組の部隊を作ったのか、元々オークの部隊が四百人規模なのかはわからないが、ベスタ―の見立てでは動きにまとまりがあって慣れを感じるようなので、おそらく元々四百人規模なのだろう。

 王国の町村は全部で二十。

 王都と四方の公爵領の街をプラスすると二十五。

 安易な考えだが、知能が高いと言われるオークなら最低一か所一部隊計算で、外堀を埋めて捕虜の監視に少数を割き、残りを公爵領の街に向かわせ、その次は王都。そう考えると何となく辻褄が合う気もするし合理的に動いているようにも思える。

 今回は襲撃をほぼ同時に行って、王都への伝令を飛ばされても次の町で足止めをする必要もあっただろう。


「一か所隠し通路があってトラ子が見つけてくれたんだけど、そう言う場所が他にあったかもしれない。後千や二千はいないとも限らないから、各地への伝令と特に南側の住人の避難を優先にしよう。追加で攻めてこないとも限らないし」

「それよ智也。南側の村の人達を回収したいんだけど、どうしよう」

「それに関してはシャルに頼らざるを得ないからなぁ」


 回数だけならフローラさんだが、位置の微調整と大勢を纏めて転移させる場合はシャルの方が優れている。

 転移時の空間の歪みのサイズは魔力量もそうだが、イメージ力が大事だと言う。

 シャルの場合、前世が殆ど外に出ない生活だったせいでイメージ力だけは人一倍発達してそうだ。


「そのシャルは?」

「私が最後に会った時は、あと少しで世界樹に飛べる魔力がって言ってたわよ」

「じゃあ今頃向こうで回復中か」


 世界樹へは距離が離れているので、本来莫大な魔力が必要になる。

 だが地脈とは元をただせば世界樹から来てるわけで、世界樹に向けて飛ぶ分には消費する魔力がそんな必要では無いらしい。

 正確には転移門で直接飛ぶわけでは無く、太い地脈を伝って連続的に飛ぶような形だとか何とか言っていたが、自分達が飛んだ時は一瞬だったので良くわからない。

 とりあえず飛べるだけの魔力が戻ったのなら、半日もあれば回復して帰ってくるだろう。

 今がまだ夕方に差し掛かった頃なので夜だろうか。

 それだと明日帰ってくる可能性もあるが――。

 まぁ夜遅くに人を回収して回るわけにも行かないし、時間的にも今日はこれ以上外で活動は出来ないだろう。


「それで南側の村の様子はどうだった?」

「綺麗に襲撃されてたから特に被害も無し。あの統率力は凄いわね」

「そう言えばチエさん、あの事はいいのですか?」

「あ、そうだ。あのね智也、それとベスターさん。リザードマンの集落があってそこもオークに襲われてて、とりあえず助けたんだけど……」

「リザードマン? うーん、すぐは無理だけど後日行こう。俺じゃ話通じないかもだからベスターも来てくれないかな」

「それはいいが、リザードマンか。奴らは海辺や湿地帯を好むのだが、どの辺りに集落があったのだ?」

「南東の小規模の森の中に集落がありました。そこに五十から六十程のリザードマンが生活しているようでした」

「ふむ、南東と言うと海には近いが確か海岸線は崖だったな。人から隠れ住むにはそこしか無かったと言う事であろう」

「だと思われます。彼等は戦闘能力は高いですが魔王が発生していない事もあり、オークに蹂躙されている個体もいました。会話さえ可能であれば人間側に引き込む事も可能かもしれません」

「そうでなくとも我等側に引き込む事はできよう。無碍に扱う事も有るまい。ではそのつもりで考えておくとしよう」


 何やらベスターとフローラさんで話が通じてしまったが、リザードマンを保護する気らしい。


「どんなだった?」

「うーん、トカゲ?」

「何となくどのタイプのリザードマンか予想付いた」


 二足歩行の人間サイズのトカゲだと思っておけば間違いは無いだろう。


「智也君もお茶飲むでしょ? ベスターさんは――フローラさんがやりますよね」

「いい機会ですのでフウコさんにお願いしましょう」


 二人で分かれてやる必要も無いと言う事だろう。

 だが、楓子はフローラさんに任された事がショックだったようで、恐れ戦きつつお茶を淹れに行った。

 他の面々だが、部屋の隅にあるソファーにはシエルがぶっ倒れていて、その上にトラ子がべたーっとのしかかっている。

 正直一番何もやっていないのは俺だと思うが、それでも半日飛び続けたのでかなり疲れている。

 他の人達は特性による補正があるとはいえ、その表情からは疲れが見て取れる。

 まぁベスターとフローラさんはいつも通り涼し気な顔なのだが。


「そうだ、アヤメさん達の待遇を何とかしなきゃいけないんだった。えーっと、王城内の部屋を勝手に使ったら流石に不味いよな……」


 あの町の人達に悪人はいないだろうが、それでもセキュリティーの問題がある。

 となると門前宿の空きを全て借り上げた方がいいか。


「とりあえずベスターとフローラさん、今日はありがとう。今日のお礼はまた今度」

「うむ。では我々は一旦帰るとしよう」

「あのー、お茶入りましたけど……」

「頂こう」


 熱いだろうに、ぐびぐび飲むとフローラさんの転移門で帰って行った。

 楓子が面食らって固まってしまっているが、俺も頂いているけど十分美味しいし大丈夫だろうに。


「千絵か楓子、どっちでもいいからちょっと西と東と南門の門前宿まで行きたいから付いて来てくれないかな」

「別にいいけど、どうするの?」

「空いてる部屋全部借り上げる。他にも安宿は沢山あるから紹介してもらわないと」

「あ、わかったアヤメさん達の寝床ね。それなら私が――」

「私殆ど何もしてないからやるよー」


 楓子が立候補しようとしてくれた所に、ソファーでトラ子に押しつぶされながらシエルが手を挙げる。

 それに対して千絵も手を挙げるのだ。


「三か所あるんだしみんなで手分けしましょうよ」


 それもそうだな。


「じゃあ、一人で行動してても大丈夫な千絵と楓子は西と東に。俺とシエルは南に行く」

「トラ子もー、いくー」


 そうは言うが眠いのかシエルの上でとろけていた。

 これは放っておけば寝るやつだな。


「んじゃ行こう。早く決めとかないとアヤメさんの寝るところが無くなる」

「アヤメさんだけなら私達の誰かが一緒に寝ればいいけど……」

「あの村人全部城内は無理だ」


 と言うか何かあった時に村の人たちのせいになるのが忍びない。

 と言うわけで、王都内は基本飛んじゃダメなので徒歩で向かう事になるのだが、トラ子が最後の力を振り絞って猫化して飛んできた。

 意地でも連れてけと言う事のようで、仕方なく肩にぶら下げる。

 これでバランス取って落ちないんだから不思議だ。

 エントランスホールはアヤメさん達村人で割とカオスの様相を呈しているが、既にシャルがシェリールとして公爵家並びに主だった伯爵家に報告と協力要請をしているようなので、さっきみたいに警備の人間に問い詰める貴族もいない。

 が、場所が場所なので寛ぐ事も出来ず。


「あ、アヤメさん。お待たせしていてすみません」

「お忙しいようね」

「ちなみになんですけど、村の人って何人くらいいますか?」

「五十三人だけど世帯数で言うと二十五よ」


 何を意図しての質問か察してくれたようだ。

 人数の割に世帯が少ないのは、老人の一人暮らしが多いからだ。

 にしても数を聞くと、あの日千絵と楓子が勇者だとお祭り騒ぎしてた時に居たのがほぼ全員だったのか。

 逆に南端の秘境扱いされてる村で五十三人も村人がいるのは多いと言っていいかもしれない。

 まぁ貴族も平民も無く、多少の貧富の差がある位で、ある程度不便であれど生きるのに支障が無いと言えば無いので、外の生活さえ知らなければそのまま死ぬまで暮らすのもいるだろう。


「じゃあとりあえず二十五部屋確保すればいいですね」

「一日二日ならここでも大丈夫よ」

「アヤメさんはそうかもしれないですけど」


 過酷な環境を物ともしない人だ。

 それに、あくまでここって城なわけで、色々な人が出入りするからエントランスに居座られても困るのだ。


「後は他にも避難してくる人がいるんで、二百室以上確保したいんですけどねぇ。果たしてあるんだか」

「まぁ頑張って」


 ほんと素っ気ない人だ。

 俺達はそのまま外に出て分散すると、可及的速やかに、つまるところ駆け足で南へ向かう。

 ここで問題が。

 シエルの身体能力が高すぎて同じペースで走れるわけも無く、少し先に行くと待つなんて事を繰り返す事になるのだ。

 そのせいで余計に目立つ。

 まだ一般市民にはオークの事を知られていないが、いずれ避難民が到着すれば話題になるだろう。

 場合によってはパニックになる可能性もあるから、ある程度の所で現状報告をしなければならないだろう。

 その為には王国内のオークを完全に排除出来た方がいいが、それも今はどうなるかわからない。


 やっとの事で南の門前宿に行くと、そう言えば入った事無いなと今更ながらに思って受付でどうしようか少し悩む。

 そのせいか従業員の俺達とそう年齢の変わらない若い男の人が困った顔で聞いてくるのだ。


「あの、トモヤ様、どのような御用でしょうか……?」

「ご主人はいらっしゃいますか? ちょっと内密でお願いがあるのですが」

「少々お待ちください」


 そう言うと受付から奥へ一旦下がった。

 そして六十近い割と肥え気味のおじさんが奥から出て来た。


「これはトモヤ様。何やらご内密のお話があるとの事ですので、是非中へどうぞ」

「すみません、失礼します」


 千絵と楓子にも内密で話を通せと言っておいたので大丈夫だとは思うが、楓子がそう言った交渉事を上手く出来るのか心配だ。

 いや女神様である以上、『女神フーコの言う事は絶対』くらいの勢いで通る気がしなくもないけど。

 受付の奥は事務所になっているようで、俺とシエルが通された所は奥にこじんまりとある応接用のスペースだ。


「それで、今日はどのようなご用件でしょう」


 事務所に居るのは俺達だけなので大丈夫だろう。


「実は本日昼、オークの襲撃を王国の広範囲で受けました。オークは南から侵攻してくるので、南側の住人を王都に避難させようと考えています。実際村一つ分を既に避難させてきたのですが、差し当ってその分の部屋を借りたいのです」

「ちょ、ちょっと待ってください」


 いきなり喋り過ぎたか。

 宿屋の主人は少し考える素振りをして俺の言葉を飲み込んだようで、すぐに仕事の顔に戻る。


「何部屋必要なのでしょうか」

「とりあえず二十五」

「今は夏前で収穫物も限られているので行商人も少ないのです。行けます二十五部屋」

「それ以上は?」

「可能ではありますが、この時期に満室となると行商人に怪しまれますよ?」

「近いうちに公表するつもりなので構わないです。他の宿屋にも出来れば話を通してもらいたいのですが」

「とは言ってもこの辺りの小さな宿屋を含めても、南門エリアで五十や六十が精いっぱいでしょう。西と東もあまり変わらないと思います。もし王国の南側の村の方々を避難させるとなった場合、それでは足らないと思うのですが」

「そうなんです。それでついでに知恵をお借り出来ないかなと」

「そうですね……。公表するのであれば、以前野戦病院にしたように冒険者育成学校の施設を簡易宿にする手があります。しかしこれにもキャパが限られているのと環境が良くありませんので、公爵領の宿を全て借り上げてはどうでしょう」

「あ」


 大きな街は王都だけじゃなかった。

 各公爵家が管轄する街ならば、更に部屋も借りられよう。


「相談料ということで料金に少し色を付けさせてもらいますね。それで今日これから泊まれますか?」

「お部屋の支度に三時間、それとお食事まではご用意できません」

「それは仕方ないんでこっちでやります」


 既におやっさんには炊き出しと言うか普通に人数分の食事を作るようにお願いしてある。

 今頃城の調理室はフル稼働だろう。


「ちなみにざっと計算していくらくらいですか?」

「えっと一晩で一部屋が銀貨一枚から五枚、これは部屋によって変わります。それが二十五ですので、一日銀貨七十枚弱ではないかと」

「とりあえず一週間分として金貨五枚で、また別途費用が発生したら支払います」


 道具袋の中から五枚掴んで取り出すと、流石に大きな宿をやってるだけあって驚いたり注視したりは無かった。


「ありがとうございます」

「基本的に一般の客と同じような扱いで構いません。どうせ噂は広がるので情報が漏れた所で何か罰則と言う事もありません」

「その、長期のご滞在になる可能性はあるのでしょうか。その場合仕入れを増やす必要がございますので」

「先ほど言ったようにとりあえず一週間で考えていますが、既にほぼ全てを倒しているので王国内の危機はとりあえず去っています。なので早まる可能性もありますが、早く切り上げた場合に返金を求める事も有りません」

「わかりました」

「ええっと、とりあえずそんな物かな。何か記入する必要がありますか?」

「では一週間の間、空いている部屋を借りると一筆書いて署名をして頂けますでしょうか」

「まだこっちの世界の文字に慣れていないので、下手なのはご容赦ください」

「そんな滅相もありません」


 勉強の成果である。

 その程度なら何とか書ける。

 一応契約書とか宣誓書とか、正式な書類はこの世界の言葉で書かなければならない決まりがあるのだ。


「うっわ、トモヤ字汚い」

「だから言っただろー。癖がありすぎるんだよー」


 なんかキリル文字とかグラゴル文字を更に崩して筆記体にしたようで、英語の筆記体すら必修から外れた時代の人間にとっては非常に難しいのだ。


「これで大丈夫ですかね」

「ええ、読めますので」


 汚くて本当に申し訳ない。

 シエルにお願いしてもよかったけど、シエルに書いてもらうのに俺の名前を使うのもおかしい。

 かと言ってシエルの名前でやるのも違うと思う。


「ではすみませんが、多分後で纏めて送り届けます。多少夜遅くになっても大丈夫ですか?」

「ええ、お待ちしております」


 よしアヤメさん達の分は片付いた。

 二人にはとりあえず部屋の確保だけをお願いしてあるので、俺みたいに急ぎで入れてくれと言う早急な話では無い。

 だからそれほど問題も無くまとまっていると思うのだ。


 こういう時に携帯電話か、フローラさんやサクラが使う伝言魔法みたいなのが欲しくなる。

 城に戻ってアヤメさんと村長のジニーさんに説明をしていると、千絵と楓子もほぼ同時に帰って来た。

 やはり同じような話になったようで、俺は伝令を使って公爵家に手紙を届けてもらう。

 流石にこれはシエルに書いて貰った。俺がやると時間が掛かる上に長文だと読めないくらい崩れそうだし。

 そんな事をやってる間にエントランスではビュッフェスタイルの夕食の支度が進み、いつの間にか侍女筆頭とか言う肩書が出来てトップに君臨してるコレットを先頭にマリーネや他の侍女達が料理を持ってきた。

 どうも侍女の中でも色々とあるらしく、マリーネはトラ子を抱っこしながらやる気に満ち満ちたコレットに白い眼を向けていた事がある。

 どうやら俺とシェリールが結婚した事で、次代の妃の傍付きとして自分が筆頭だと名乗りを上げたらしい。

 そう言った向上心が強いのが偶にいるらしいが、どこの家も親戚同士で権力争いや派閥争いと言った物とも今のところ無縁なのでコレットと争う気も無いらしく、そのまま自然に収まってしまった。

 と言うか、そこまでエルフ信仰が強いコレットに反対しても面倒だからと思われているらしい。

 その実、エルフ信仰云々よりも単純に可愛い物好きなだけな気がしないでも無く、それがわかってるマリーネは白い目で見ているようだ。

 つまり、シェリール、と言うかシャルロットは他の侍女に渡さないと公言しているのだ。

 変な争い事にならなければなんでもいいけど。


 食事も終わって落ち着いた頃、ようやくシャルが帰って来た。

 俺達もリビングで食事を終えて、さーそろそろ風呂に入っとくかなんて言ってた矢先に空間に歪みが現れたので驚いた。

 そこからぬっと出て来たシャルは、シャルでは無かった。


「……どなた?」

「怒る」


 そう言いながら脛を蹴らないで欲しい。

 だって待って欲しい。

 俺の知ってるシャルは俺の腰辺りまでしか背が無くて、ちょっとぷにっとしてる触り心地のいい幼女エルフだ。

 今俺の目の前に居るのは、中学生くらいの見た目の細身のエルフ少女である。

 流石の事にトラ子以外が周りに集まって来た。


「だから世界樹ゼリーを食べたくなかった。アレは幼児の成長を促す世界樹の魔力の塊」

「え、じゃあそれで成長したのか。と言うかシャルってあれ以上成長したくなかったのか」

「トモヤは幼女が好き」

「……えーっと、うんーと、とりあえず否定はしようと思うがその前にどうやって叱ろうか考える位には怒ってるぞ?」


 身長も女子としては普通の楓子より、頭一つ低い程度じゃないだろうか。

 だが遺伝はしなかったらしい、残念なことにぺったんのまんまだ。


「ちょっと大きくなった」


 俺が見てる事に気づいたらしく、むんっと胸を張ると確かに存在は視認できる。

 でもなぁ。


「むー、美幼女が美少女になった。文句ある?」

「いいえありません」


 でも逆に犯罪臭が増したんだよ。

 これまでは幼女の見た目だったからこそ、隣を歩く兄で保護者っぽい見た目で済んだんだ。

 あの幼女シャルから大人の一歩手前まで成長したせいで、これは行けてしまうかもと薄っすら頭に浮かんでしまったことが大問題だった。

 いいか智也よ、犯罪はいかん。犯罪はいかんのだ。

 幼女固有のぷにぷに感が消えてスラッとした少女になってしまったが、手を出したら犯罪だ犯罪だ犯罪だ。


「むー……さっき生理も来たから」

「いやほんとマジで勘弁してくれ……。って、つまりシャルに食わせる為にお義母さんは持って来ていたのか」

「そう」


 納得した。

 と同時に、あれだけ食べて見た目年齢五歳くらいしか歳を取らないのか。

 いや逆にあれだけ食べてこれなんだから、追加で食べさせれば見た目にも合法に。


「もう死んでも食べない」

「シャル、そう言わずに」

「見るだけで吐く」


 これはダメそうだ。

 とにかくシャルがいなかった間の話をしなければ。



テーレッテレー

シャルは幼女から少女に進化した

ポケモンも発売24年? だとかで時代を感じます

まあ赤をアホ程プレイした後は新作に手を出さずなんですが

シャル成長に関しては前から悩んでいた事で、成長する事によって何か変わるかどうかはわかりませんが、とりあえず今後の変化を考える楽しみもあるのでやってしまいました

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